植物由来原料を利用した安全で高性能な医用品・化粧品材料の開発
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
北海道大学大学院工学研究科
グルコースやセルロースなどの植物由来原料から
無水糖(注1)およびハイパーブランチ糖鎖(注2)を製造する技術を開発。
工業規模での製造プロセスへの適用可能性も確認し、
これまで廃棄されていた糖資源を基に安全な糖鎖材料を提供する技術として注目が集まる。
北海道大学大学院工学研究科
グルコースやセルロースなどの植物由来原料から
無水糖(注1)およびハイパーブランチ糖鎖(注2)を製造する技術を開発。
工業規模での製造プロセスへの適用可能性も確認し、
これまで廃棄されていた糖資源を基に安全な糖鎖材料を提供する技術として注目が集まる。
亜臨界水や過熱水蒸気を利用した無水糖の高効率生産システム、ならびに無水糖を原料とするハイパーブランチ糖鎖の製造技術を確立した。ハイパーブランチ糖鎖の優れた性質を利用して、高機能な医用品や化粧品材料の生産が可能になった。
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、北海道大学大学院工学研究科の准教授、佐藤敏文氏は、植物由来原料を利用した新しい医用品・化粧品材料を開発しました。
本研究は亜臨界水(注4)および過熱水蒸気を利用した製造技術を適用することにより、人工生体材料として用いられ高付加価値を有する無水糖を効率的かつ低コストに生産できるシステムであり、無水糖を原料とするハイパーブランチ糖鎖の製造技術も確立し、ハイパーブランチ糖鎖が有する低粘性、高溶解性、低毒性、保水性等の優れた性質を利用して、高機能な糖鎖材料の生産を可能にする技術です。
また、本技術によってグルコースやセルロース (注5)など廃糖質(注6)の高度利用が可能となるため、ごみ処理問題を軽減するとともに、生産される高付加価値物は関連産業の振興と発展に貢献し、ハイパーブランチ糖鎖からは、未知感染症の危険がある人のための汎用医用品材料や、動物由来材料の代替となる化粧品材料も製造可能です。
(注1)抗ガン剤、抗エイズウイルス、人工生体材料、キラルな分子の分離剤などの原料として用いられており、産業価値がある。単糖から脱水反応により水分子(H2O)が1個抜けたもの。無水糖の一種としては抗がん剤の原料となるボグルコサン等がある。
(注2):無水糖(C6H10O5)を出発物質とし、重合反応(注3)によって合成される。医用品や化粧品材料等として利用されている。
(注3)重合体(ポリマー)を合成することを目的にした一群の化学反応を重合反応と呼ぶ。
(注4)水は22.1MPa(メガパスカル)の圧力をかけると374℃ (647K) まで水蒸気(気体)にならず液体の状態を保つ。これを亜臨界水という。
(注5)グルコースは代表的な単糖で、ブドウ糖とも呼ばれる。分子式はC6H12O6。セルロースは植物細胞の細胞壁・植物繊維の主成分をなす多糖類のこと。
(注6)使用価値が無く廃棄物として廃棄処分されている糖質資源。
1.研究成果概要
牛海綿状脳症(BSE)などに関連して動物由来材料の使用が問題視されるようになり、新たに植物由来材料を基盤とした高機能性材料の開発が急務とされています。こうした強い社会的ニーズを背景に取り組んだ本研究の内容と成果は、以下の2つです。
1)グルコース等の単糖類を脱水反応させ、1,6-無水糖を連続生産できる2種の流通型亜臨界装置(高圧用および低圧用)と流通型過熱水蒸気装置の開発のための研究に取り組んだ。これによりグルコースなどの糖水溶液を亜臨界水中あるいは過熱水蒸気中で150〜400℃で数秒間反応させることによって、無水糖が効率よく生成できる製造技術を開発できました。
2)無水糖類の重合反応によってハイパーブランチ糖鎖を効率よく調製し、医用品や化粧品用の基盤材料としての機能性を評価した。またハイパーブランチ糖鎖の化学修飾による単分子ナノカプセル等の機能性工業材料の開発研究を行った。研究の結果、無水糖類の一段階重合反応でハイパーブランチ糖鎖を調製する製造方法を開発し、工業規模でも利用できる目途をつけました。ハイパーブランチ糖鎖に特有な構造を生かした単分子ナノカプセルを開発することによって、新たなドラッグデリバリーシステム用媒体としての利用が可能となりました。
2.競合技術への強み
1)安全性:使用が問題視されている動物由来材料(ゼラチン、コラーゲン、ケラチンなど)とは異なる、植物由来材料を基盤材料とした新規性の高い技術で、安全性に優れています。
2)低コスト:亜臨界水あるいは過熱水蒸気を利用する技術であるため煩雑な装置は不要で、製造コストが抑えられます。
3)高い製造効率:グルコース、セルロースなどの糖類を原料に、流通系亜臨界装置および過熱水蒸気装置で短時間かつ容易に無水糖が製造できます。また、無水糖から分岐度、置換度などの物性が明確なハイパーブランチ糖鎖が高効率に製造できます。
3.今後の展望
過熱水蒸気による無水糖の生産法は簡便で収率が高く、工業規模での無水糖生産に有効です。糖類以外の無水物化にも応用が可能であり、新たな工業的利用の拡大が期待できますが、実現のためにはより高効率な無水糖反応装置と精製装置の開発が必要となります。
ハイパーブランチ糖鎖の生産技術をテルペン類(注8)あるいは石油由来合成品などの化合物に拡大することで、工業的利用の拡大も見込まれます。さらに、ハイパーブランチ糖鎖の利用拡大とともに、単分子ナノカプセルをナノリアクターやナノ触媒などに応用することも可能となります。
(注8)植物や昆虫、菌類などによってつくり出される生体物質。化合物中の炭素数が10個の炭化水素分子のこと。
4.参考
成果プレスダイジェスト:北海道大准教授 佐藤 敏文氏
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、北海道大学大学院工学研究科の准教授、佐藤敏文氏は、植物由来原料を利用した新しい医用品・化粧品材料を開発しました。
本研究は亜臨界水(注4)および過熱水蒸気を利用した製造技術を適用することにより、人工生体材料として用いられ高付加価値を有する無水糖を効率的かつ低コストに生産できるシステムであり、無水糖を原料とするハイパーブランチ糖鎖の製造技術も確立し、ハイパーブランチ糖鎖が有する低粘性、高溶解性、低毒性、保水性等の優れた性質を利用して、高機能な糖鎖材料の生産を可能にする技術です。
また、本技術によってグルコースやセルロース (注5)など廃糖質(注6)の高度利用が可能となるため、ごみ処理問題を軽減するとともに、生産される高付加価値物は関連産業の振興と発展に貢献し、ハイパーブランチ糖鎖からは、未知感染症の危険がある人のための汎用医用品材料や、動物由来材料の代替となる化粧品材料も製造可能です。
(注1)抗ガン剤、抗エイズウイルス、人工生体材料、キラルな分子の分離剤などの原料として用いられており、産業価値がある。単糖から脱水反応により水分子(H2O)が1個抜けたもの。無水糖の一種としては抗がん剤の原料となるボグルコサン等がある。
(注2):無水糖(C6H10O5)を出発物質とし、重合反応(注3)によって合成される。医用品や化粧品材料等として利用されている。
(注3)重合体(ポリマー)を合成することを目的にした一群の化学反応を重合反応と呼ぶ。
(注4)水は22.1MPa(メガパスカル)の圧力をかけると374℃ (647K) まで水蒸気(気体)にならず液体の状態を保つ。これを亜臨界水という。
(注5)グルコースは代表的な単糖で、ブドウ糖とも呼ばれる。分子式はC6H12O6。セルロースは植物細胞の細胞壁・植物繊維の主成分をなす多糖類のこと。
(注6)使用価値が無く廃棄物として廃棄処分されている糖質資源。
1.研究成果概要
牛海綿状脳症(BSE)などに関連して動物由来材料の使用が問題視されるようになり、新たに植物由来材料を基盤とした高機能性材料の開発が急務とされています。こうした強い社会的ニーズを背景に取り組んだ本研究の内容と成果は、以下の2つです。
1)グルコース等の単糖類を脱水反応させ、1,6-無水糖を連続生産できる2種の流通型亜臨界装置(高圧用および低圧用)と流通型過熱水蒸気装置の開発のための研究に取り組んだ。これによりグルコースなどの糖水溶液を亜臨界水中あるいは過熱水蒸気中で150〜400℃で数秒間反応させることによって、無水糖が効率よく生成できる製造技術を開発できました。
2)無水糖類の重合反応によってハイパーブランチ糖鎖を効率よく調製し、医用品や化粧品用の基盤材料としての機能性を評価した。またハイパーブランチ糖鎖の化学修飾による単分子ナノカプセル等の機能性工業材料の開発研究を行った。研究の結果、無水糖類の一段階重合反応でハイパーブランチ糖鎖を調製する製造方法を開発し、工業規模でも利用できる目途をつけました。ハイパーブランチ糖鎖に特有な構造を生かした単分子ナノカプセルを開発することによって、新たなドラッグデリバリーシステム用媒体としての利用が可能となりました。
2.競合技術への強み
1)安全性:使用が問題視されている動物由来材料(ゼラチン、コラーゲン、ケラチンなど)とは異なる、植物由来材料を基盤材料とした新規性の高い技術で、安全性に優れています。
2)低コスト:亜臨界水あるいは過熱水蒸気を利用する技術であるため煩雑な装置は不要で、製造コストが抑えられます。
3)高い製造効率:グルコース、セルロースなどの糖類を原料に、流通系亜臨界装置および過熱水蒸気装置で短時間かつ容易に無水糖が製造できます。また、無水糖から分岐度、置換度などの物性が明確なハイパーブランチ糖鎖が高効率に製造できます。
3.今後の展望
過熱水蒸気による無水糖の生産法は簡便で収率が高く、工業規模での無水糖生産に有効です。糖類以外の無水物化にも応用が可能であり、新たな工業的利用の拡大が期待できますが、実現のためにはより高効率な無水糖反応装置と精製装置の開発が必要となります。
ハイパーブランチ糖鎖の生産技術をテルペン類(注8)あるいは石油由来合成品などの化合物に拡大することで、工業的利用の拡大も見込まれます。さらに、ハイパーブランチ糖鎖の利用拡大とともに、単分子ナノカプセルをナノリアクターやナノ触媒などに応用することも可能となります。
(注8)植物や昆虫、菌類などによってつくり出される生体物質。化合物中の炭素数が10個の炭化水素分子のこと。
4.参考
成果プレスダイジェスト:北海道大准教授 佐藤 敏文氏
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