ジャパネットたかた創業者 髙田明氏 特別講演「~夢持ち続け日々精進~」
ミッション・パッション・アクションを持って今を一生懸命に生きる
2025年11月1日(土)、本学同窓会・大樟会の90周年記念総会に、本学卒業生で株式会社ジャパネットたかた創業者である髙田明氏を迎え、特別講演が行われました。
満場の拍手に迎えられて登壇した髙田氏は、大樟会90周年にお祝いの言葉を述べ、「もうすぐ77歳になりますが、若いときにはわからなかった生き方や考え方について、経験を踏まえながらお話したい」と講演を始めました。

失敗とは一生懸命やらなかったことだ
髙田氏は講演のタイトル「夢持ち続け日々精進」について解説。「過去10年にわたり500回以上講演してきましたが、僕の講演タイトルはいつも同じです。夢というと、多くの人は若いときに持つものだと思っていますが、それは違うんですね。夢は若いときだけに持つものではなくて、老後には老後の夢がある。夢を持ち続けることが、人生の一番大事な部分だと僕は思っているんです。
そして、その夢を達成するためにはやはり努力が必要で、それが“日々精進”です。何歳になっても夢を持ち続け死ぬまで精進していく、そんな人生を一緒に送りませんか」と呼びかけました。
そのうえで、髙田氏は不確実な時代における生き方について言及。日々迷い、悩みながら生きる人が多い中、髙田氏自身は社長時代も含めて、悩んで寝られなかったということは一度もないといいます。「それはなぜかというと、僕は人生の中で失敗したことがないからなんですね。失敗とは、一生懸命やらなかったことだというのが僕の持論です。もちろん企業経営などでうまくいかなかったことは山ほどありますが、それは失敗ではない。一生懸命やった結果うまくいかなかったのは失敗ではなく、試練なんです」
試練を積み重ねるごとに人間は強くなれると髙田氏。さらに、人が悩むのは未来のことがほとんどだと続けます。「未来のうちの8割は、自分の力ではどうしようもできないことです。そこに悩むのではなく、自分が頑張れば変えていける2割に徹底して取り組む。僕は、人生とはボトルネックを探し続ける旅だと思っています。1つの課題を解決すると、また次の課題が現れる。でもそこで折れてしまってはだめ。できない理由を挙げるのではなく、その状態の中でチャレンジしていくのが人生なんです。今の自分を変えていくものは、過去でも未来でもなく、今を一生懸命生きることです」
そして、AIの時代の目まぐるしい変化に対応し、200年、300年と続く大阪経済大学、大樟会を作っていってほしいと訴えました。
多様な経験に基づく発想力
大阪経済大学在学中は、E.S.Sで英語を学んだという髙田氏。卒業後入社した阪村機械製作所では、その英語力を買われて23歳のときにドイツのデュッセルドルフへ行くことになり、広くヨーロッパを見て回りました。それが自分の体験として生きているといいます。「イギリスで食べたステーキがまるでゴムぞうりみたいだったんですよ。長崎和牛とは比べものになりません。テレビショッピングで和牛を食べて『美味しい』とコメントするときの表情や声は、こうした経験に裏打ちされています」
髙田氏は今までにないアイデアで新しい市場を開拓し、さまざまな商品の売り上げを伸ばしていきます。たとえば、電子辞書を買うのは学生やビジネスマンがほとんどでしたが、「孫を国際人に」というキーワードでシニア世代の売り上げを拡大し、少子高齢化に対応。また、誰もが会議の録音に使うものと考えていたボイスレコーダーは、共働き家庭のお母さんが学校から帰ってきた子どものために書き置きする手紙の代わりや、シニアのメモ代わりといった新しい使い方を提案し、働くお母さんやシニアへの売り上げを大きく伸ばしました。
「これまでは、買い手の属性を売り手が決めてしまっていました。そこを変えていかなければならないんですね。この会場の皆さんに『ジャパネットで買い物をしたことがある人は挙手してください』と尋ねたとして、手を挙げたのがたった二人だけだったとしましょう。そのとき僕が思うのは、まだまだ市場は山ほどある、ということです。また、もし全員が手を挙げたとしたら、そのときは世界に打って出ようと考えます。こういう発想を持って、今という瞬間にストイックに取り組んでいけば、誰でも夢は達成できると思っています」

ビジネスはお客様を幸せにするためのミッション
25歳のときに平戸で父が営むカメラ店「カメラのたかた」に入社した髙田氏は、30歳で佐世保の営業所所長となり、37歳で独立します。平戸時代からの16年間、カメラの販売と並行して取り組んでいたのが、観光写真の撮影販売。そこで人生一番の収穫ともいえる大きな学びを得たといいます。「温泉の宴会場で撮った写真を現像し、次の日の朝に1枚500円で販売するのですが、ただ撮っただけでは買ってもらえないんですね。何度も声をかけて、最高の笑顔、最高の表情を撮ってあげる。僕は写真撮影を通じて、ビジネスとはお客様を幸せにするためのミッションなんだということを学びました」
ビジネスには、その商品を通してどれだけ人を幸せにできるかという理念が必要であると髙田氏。ジャパネットたかたの商品が実際に購買者の人生を変えた例を二つ紹介します。
「一つはカラオケです。あるお嬢さんが東北へ嫁いでいきましたが、ご主人は仕事で留守にしがち。東北に知り合いは誰もいないし、お義母さんは寡黙な人で会話もなく、私の人生はどうなるんだろうと思った矢先、2万9800円のカラオケが役に立つんですね。実はお義母さんはカラオケが大好きで、毎晩近所の人が集まってカラオケをして楽しい新婚生活になった。人生が180度変わったんです。これが物を買っていただく喜びなんです。
もう一つは鹿児島からもらった手紙を紹介します。小児がんの子どもさんに、病気と闘う力になってほしいとニコンの一眼レフカメラを買ってあげたところ、写真を撮り始めて、それが鹿児島の新聞に取り上げられたと、ご両親が新聞を送ってくれました。僕がニコンの社長さんにこれを伝えたら、彼は涙をぼろぼろ流して、そのお子さんにカメラのバッグを送ったそうです。ニコンがこの家族の人生を変えたんです。ニコンの先にある幸せを、僕たちは伝えていかなければなりません」
伝えることの大切さは大樟会にも通じると髙田氏。もうすぐ100周年を迎えようとしている大阪経済大学および同窓会の素晴らしさをもっと伝えていくべきだと話します。「学園祭に訪れるとみんなが声をかけてくれる。そんな素晴らしい人たちの集まりが大阪経済大学だということをもっと伝えていきたい。ただ伝えるだけでなくパッションを持って伝えたときに、人とのコミュニケーション力は高まると思っています。誰かを幸せにしようというミッションと伝えるパッション、そして実際の変化を起こすためのアクション。この3つを持って今を一生懸命生きていけば、必ず人生の中に喜びを見つけることができるのではないでしょうか」
ユーモアを交えながら熱く語りかける髙田氏に、会場からは何度も笑いと大きな拍手が沸き起こりました。
オール大経大で世界を変える
講演後の質疑応答 には、大樟会会長の角脇忠行氏と3名の学生が参加。人間科学部3年生の安部愛珠さんは伝えることの大切さについて、「インターネットやAIが日々進化する中、人が直接伝えていく価値はどのように変化するのでしょうか」と尋ねます。髙田氏は、「僕もChatGPTを使いますが、AIには強いところと弱いところがあり、自分でうまくコントロールしていくのが課題だと思っています。ラジオやテレビ、紙などそれぞれの媒体にはそれぞれの強みがあって、ジャパネットではその強いところを前面に打ち出す方法をとってきました。それらを踏まえて人間には人間の伝え方を勉強していくべきだと考えています」と回答。
人間科学部3年生の日野来美さんは、髙田氏が代表取締役社長を務めたV・ファーレン長崎について、ファンや地域の方の心をつかむためにどのようなマーケティングを展開したのかを質問。これに対して髙田氏は、もちろん選手や監督も頑張っているが、V・ファーレン長崎の一番の力は、やはりスタジアムに来てくれる2万人のファンやサポーターの笑顔や涙だと応じます。「ホームもアウェイも試合には全部行って、相手チームのファンやサポーターとも交流しました。これがよかったと思います。そしてホテルも作ったので、今までは日帰りで観戦に来ていたファンが宿泊して、次の日には長崎を観光してくれるようになりました。若者が流出して人口が減り元気がなくなっていた長崎をスポーツで変えることができれば、日本のほかの地域やアジアにもそれが連鎖して世界を変えることができる、そういう思いで頑張りました」とV・ファーレン長崎での取り組みを振り返りました。
前の年にゼミ合宿で長崎スタジアムを訪問し、その魅力に感銘を受けたという人間科学部4年生の池田凌さんは、長崎スタジアムの見どころを尋ねました。髙田氏は、「スタジアムによっては、自チームと相手チームを公平に扱わないところもありますが、長崎スタジアムでは、自分たちのチームも相手チームもまったく同じ最高級の選手控室を用意していますので、じっくり見ていただきたいですね。ぜひ長崎へ来てください。オール長崎、オール大経大で一緒に盛り上げていきましょう」
角脇会長の「夢を持ち続け、自分の人生に果敢に挑戦することの大切さを再認識できました」という言葉に、髙田氏は笑顔で「長生きしましょう!」と会場の同窓生に呼びかけ、満場の拍手に包まれて会は終了しました。

大阪経済大学
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