7割の企業が賃上げを予定する一方、過半数は「防衛的な賃上げ」ー名古屋商工会議所調査
持続的な賃上げに向け、コスト上昇分を適切に反映できる環境整備が課題

調査の目的・レポートのねらい
中小・小規模事業者は、物価上昇分の価格転嫁ができない企業が多く、賃上げの支払原資の確保に影響が出ています。そのなか、2026年春闘では高水準の賃上げ要求が昨年に引き続き提出されました。
そこで、2026年度の賃上げ実施見込みの把握のため調査を実施しました。本レポートが、地域企業の現状理解を深めるとともに、今後の政策検討や支援施策の一助となることを期待しています。
なお、本レポートは「第56回定期景況調査」のうち、賃上げに関する設問を中心に抜粋・整理したものとなります。
サマリー

第56回定期景況調査(2026年1~3月期) 概要
調査期間:2月9日(月)~27日(金)
調査方法:インターネット調査
回答企業:1,273社
(本記事では、給与を支払う対象となる従業員を雇用していると回答した1,143社の回答を分析)

主な調査結果
(1)賃上げの現状
「賃上げを実施する予定がある」または「実施する方向だが具体的内容は未定」と回答した企業は全体の71.0%となり、約7割の企業が賃上げを行う方針であることが分かりました。一方で、約2割の企業は現時点で判断を保留しています。
企業規模別にみると、小規模事業者においても中小企業や大企業と大きく変わらない水準での賃上げを見込んでおり、賃上げの動きは企業規模を問わず広がっていることが分かります。

一方、主な取引先が一般消費者である企業では賃上げの実施見込みが54.3%とやや低く、
コスト上昇分を十分に価格へ反映できていないことが賃上げ判断に影響している可能性があります。

また、賃上げを実施しない理由としては、「原資に余裕がない」「業績の見通しに不安がある」といった回答が多く、企業の経営環境の厳しさもうかがえる結果となりました。

(2)持続性への課題
賃上げの動きが広がる一方で、その多くは原資に制約がある中で実施する「防衛的な賃上げ」であることが明らかとなりました。
賃上げを予定している企業のうち、56.7%が「原資に制約がある中で賃上げを実施する」と回答しており、企業規模を問わず過半数を占めています。

また、こうした企業では、人材定着や採用強化を目的として、経営余力が十分でない中でも賃上げを行うケースが多い状況です。

こうした状況を脱却するために重要なのは価格転嫁の進展です。
調査結果からは、コスト上昇分を十分に価格へ反映できている企業ほど、原資に余裕を持った状態で賃上げを実施できている傾向がみられました。反対に、コスト上昇分の反映が進まない企業では「防衛的な賃上げ」の割合が高くなっています。

(3)考察
値上げへの理解が進まなければ持続的な賃上げは難しく、将来的な事業継続にも影響を及ぼす
本調査では、約7割の企業が賃上げを実施する見込みであり、賃上げの機運は継続していることが分かりました。
一方で、過半数の企業が原資に制約がある中で賃上げを行う、いわゆる「防衛的な賃上げ」であり、十分な価格転嫁が進まないなか、人材定着や採用強化を目的とした「苦しい賃上げ」をする実態があります。
また、主な取引先が一般消費者である企業では、価格転嫁率とともに賃上げの実施見込みも低い傾向がみられました。
以上から「防衛的な賃上げ」から脱却し、持続的な賃上げを実現するには、企業がコスト上昇分を適切に価格へ反映できることが重要であるといえます。
✅『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』を理解し、行動に移すことが重要
・労務費は他のコストより転嫁が進みにくく、進まない最大の要因は「受注減少への恐れ」である
・多くの企業は「交渉の場がない」「労務費上昇分を把握できていない」など、交渉の前段階でつまずいている
・公正取引委員会・内閣官房が公表した『労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針』ではこれらの問題を解消すべく行動を示しているが、中小・小規模事業者の商慣習への浸透はまだ途上である
・一方、労務費を他のコストと切り分け根拠を示せている企業ほど転嫁が進んでいることから、各種の公表資料(春闘、最低賃金改定など)を活用して根拠を示すことで、交渉が前進する可能性が高い
(第55回定期景況調査(2025年12月10日発表)より抜粋)
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