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公益財団法人日本野鳥の会
会社概要

勇払原野の安平川(あびらがわ)下流域に整備予定 河道内(かどうない)調整地(遊水地)で、今年も7種の希少鳥類を確認

日本野鳥の会

 公益財団法人日本野鳥の会は、今年の繁殖期(4~8月)にウトナイ湖サンクチュアリ(北海道苫小牧市)が新しい手法も取り入れながら実施した勇払(ゆうふつ)原野での鳥類調査で、国内レッドリストに挙げられた絶滅危惧ⅠB類を3種、同Ⅱ類を2種、準絶滅危惧を2種、計7種の絶滅のおそれのある鳥類の生息を確認しました(別紙詳細資料1)。なかでも準絶滅危惧のマキノセンニュウは、安平川(あびらがわ)(下流部右岸)湿原では、出現回数が最も多くなり、ウトナイ湖と比較しても確認頻度(※1)が高いことが分かりました。
 現在、当会は勇払原野の苫小牧東部開発地域に整備される河道内(かどうない)調整地(遊水地)のラムサール条約湿地登録をめざして保全活動を行なっており、その一環として、希少鳥類の調査を毎年実施し、結果の一部を公表しています(別紙詳細資料2)。
 なお、調査結果の公表によって希少鳥類の繁殖に悪影響が及ばないように、繁殖を終えたこの時期の発表といたしました。また、希少鳥類の生息撹乱を防ぐために、詳しい確認位置等の公表は控えさせていただきますのでご了承ください。

※1 その鳥を観察した回数を、調査回数で割って求めた頻度

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■今年の新たな調査手法について

●タンチョウ ドローンで採食地を特定

タンチョウ 写真/日本野鳥の会タンチョウ 写真/日本野鳥の会


 これまでは目視により、約1Km先にいる個体の行動を確認していましたが、タンチョウは、人が容易に近づくことのできないヨシ原で繁殖するため、巣自体の確認は困難でした。そこで今年は新たな手法として、ドローンを用いて営巣地を特定する調査を実施したところ、昨シーズンに続き、1つがいが断続的に採食場として利用していることを確認しました。今回は営巣の確認には至りませんでしたが、今後もさまざまな調査手法を検討することで生息状況を把握し、生息環境の保全に努めていきます。

●シマクイナ 音声調査により生息を確認

シマクイナ 写真/宮 彰男シマクイナ 写真/宮 彰男

 

  絶滅危惧IB類のシマクイナの調査は、これまでウトナイ湖サンクチュアリのボランティアの協力を得ながら毎年2回、夜間に実施していました。今年は、より効果的な音声マイクおよびマイクロフォンアレイ(後述)を用いた方法で、計25日間の調査を行ないました。調査の結果1羽の声を確認し、また、6月上旬にはすでに勇払原野に渡来していることがわかりました。なお、当会は繁殖期における生息を2012年以降毎年確認していますが、勇払原野と青森県仏沼では2018年に国内で初めて繁殖が確認され、さらに勇払原野では幼鳥6羽が目視確認されました(Senzaki et al. 2021)。

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1.音声マイク調査 5月下旬~6月上旬実施
 シマクイナは湿性草原で繁殖する夜行性の小型のクイナで、目視による確認が非常に難しい種です。そのため夜間に本種のさえずりをスピーカーで流し、その音源への反応回数や推定位置を記録する「プレイバック調査」を、毎回実施しています。シマクイナの反応を直接現地で聞き取る調査人員確保の困難さから、例年は7月下旬から8月上旬の最もさえずりがさかんな時期に、2日間、1回2時間の調査が限界でした。今回は音声マイクを用いることで5月下旬から6月上旬にかけて例年の11倍にあたる22日間実施し、6月9日にシマクイナの鳴き声を記録しました。今回の調査で初めて、6月上旬にはすでに勇払原野に渡ってきていることが明らかになりました。今後は、この手法を用いてシマクイナの生息状況についてさらに明らかにしていきたいと考えています。

2.マイクロフォンアレイとロボット聴覚を用いた音声調査 8月中旬実施

勇払原野にてマイクロフォンアレイを設置勇払原野にてマイクロフォンアレイを設置


 当会は、大阪大学大学院基礎工学研究科の松林志保特任准教授(常勤)が、勇払原野において実施したマイクロフォンアレイ(録音装置)を用いた調査に同行、協力しました。上述の音声マイク調査と同様に、「プレイバック調査」を実施し、シマクイナの反応をマイクロフォンアレイ3台で観測することを試みました。今回の調査は、2日間と限られた日数で実施したためシマクイナの鳴き声は確認できませんでしたが、本観測手法を用いることによって、シマクイナが広大な湿地をどのように利用しているかの解明など、生息地の管理や保全に役立つ生態情報の収集を期待しています。

<マイクロフォンアレイとロボット聴覚について>
 マイクロフォンアレイとは複数のマイクロフォンで構成される録音機材であり、それぞれのマイクロフォンで観測される音の違い(時間差、位相差)を処理・解析することで、音の到来方向を推定する機能を持ちます。軍事技術から資源探査まで幅広い分野で応用されていますが、身近なところでは、スマートスピーカーやWeb会議用のマイク等にも同種の技術が使われています。今回使用したマイクロフォンアレイ「TAMAGO」(㈱システムインフロンティア社製)は、機材の円周上に8個のマイクを配置しています。

 松林特任准教授が所属する研究グループでは、マイクロフォンアレイで収音した音声データをロボット聴覚オープンソースソフトウエアHARK(Honda Research Institute Japan Audition for Robots with Kyoto University) を用いることで音源定位(音の到来方向を推定)・音源分離(音声を抽出)を行うHARKBirdという録音分析、解析システムを開発し、夜行性鳥類を含めさまざまな鳥類の位置情報付き鳴き声観測に取り組んでいます(松林他2018,  Matsubayashi et al 2021)。

<引用文献>
松林志保, 斎藤史之, 林晃一郎, 鈴木麗璽, 有田隆也, 中臺一博, 奥乃博,
(2018) ロボットが聴く夜の鳥, -人工知能学会資-52(4) pp.15-20.
MATSUBAYASHI S, SAITO F, Suzuki R, NAKADAI K, OKUNO H.G, (2021) Observing Nocturnal Birds Using Localization Techniques, 2021 IEEE/SICE International Symposium on System Integration, pp. 1-6, (DOI: https://doi.org/10.1109/IEEECONF49454.2021.9382665)

 

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●河道内遊水地の重要性 ラムサール条約湿地登録をめざして

 今回の調査で確認された7種は、ほとんどが湿原や草原に生息し、また、全国でも限られた地域にしか生息しない鳥類です。全国的にみても希少な鳥類が生息する湿原や草原といった自然環境が、苫小牧市内に残されていることが、あらためて明らかになりました。また、今回新たに導入した手法を用いれば、希少鳥類の生息状況をより正確に把握することができ、生息地である勇払原野の重要性を評価できる可能性があることもわかりました。
 当会は、これらの湿原性鳥類にとって重要な生息地である河道内調整地(遊水地。安平川下流部に整備予定)のラムサール条約湿地登録を、2016年から提案しています。また、河道内調整地に造成される周囲堤の工事は、約10年間の計画で行なわれ、今後本格化します。工事期間中は希少鳥類の生息地に影響が及ぶことなく、河道内調整地の目的である自然環境の保全と治水がともに達成されるよう、当会は今後も関係機関と連携し、保全活動を進めてまいります。

●11月3日(水・祝)にオンラインにてシンポジウム開催

 当会がウトナイ湖サンクチュアリを開設してから今年で40周年、ウトナイ湖のラムサール条約湿地登録から30周年を迎えました。これを記念し、これまでの調査を含む保全活動やワイズユースの実例を広く伝え、今後の勇払原野(河道内調整地)のラムサール条約湿地登録に向けた活動について、多くの方々に理解を深めてもらうため、下記の要領にてオンラインでシンポジウムを開催します。
*11月3日(水・祝)13:30-16:30(予定) 要事前申込み
*くわしくは、「広報とまこまい」10月号またはウトナイ湖サンクチュアリのホームページをご覧ください。

 
<引用文献>
KITAZAWA M, SENZAKI M, MATSUMIYA H,  HARA S, MIZUMURA H (2020) Drastic decline in the endemic brown shrike subspecies Lanius cristatus superciliosus in Japan. Bird Conservation International, First View , pp. 1 - 9 (DOI: https://doi.org/10.1017/S0959270920000556)
SENZAKI M, KITAZAWA M,SADAKUNI T, TAKAHASHI M (2021) Breeding evidence of the vulnerable Swinhoe's Rail in Japan. The Wilson Journal of Ornithology 132(3), 711-717,(DOI: https://doi.org/10.1676/19-45

 

■「日本野鳥の会」について
「野鳥も人も地球のなかま」を合言葉に、野鳥や自然の素晴らしさを伝えながら、自然と人間とが共存する豊かな社会の実現をめざして活動を続けている自然保護団体です。
 独自の野鳥保護区を設置し、シマフクロウやタンチョウなどの絶滅危惧種の保護活動を行なうほか、野鳥や自然の楽しみ方や知識を普及するため、イベントの企画や出版物の発行などを行なっています。会員・サポーター数は約5万人。野鳥や自然を大切に思う方ならどなたでも会員になれます。

<組織概要>
組織名 :公益財団法人 日本野鳥の会
代表者 :理事長 遠藤孝一
所在地 :〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
創立  : 1934(昭和9)年3月11日 *創立87年の日本最古にして最大の自然保護団体
URL   : https://www.wbsj.org/

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業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル3階
電話番号
03-5436-2630
代表者名
遠藤孝一
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
1934年03月
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