スマートフォンなどで動画を撮影するだけで歩行動作を詳細に解析できる技術を開発
幼児の歩行動作解析へ応用、今後は高齢者の歩行支援なども視野に
花王株式会社(社長・長谷部佳宏)パーソナルヘルスケア研究所とサニタリー研究所は、最新の機械学習技術を用いることで、2次元の動画を撮影するだけで3次元の歩行動作として詳細に解析できる「mGCC(mobile Gait Change Capture、エムジック)技術」を開発しました。本技術を、まずは幼児の発育発達研究の分野へと応用し、今後は高齢者の歩行支援などにも応用範囲を広げ、人々の生活の質(QOL)の向上や健康増進に貢献してまいります。
今回の研究成果は、日本赤ちゃん学会第21回学術集会(2021年6月11~13日・オンライン開催)にて発表しました。
今回の研究成果は、日本赤ちゃん学会第21回学術集会(2021年6月11~13日・オンライン開催)にて発表しました。
■2次元の動画を撮影するだけで3次元の歩行動作として詳細に解析できる「mGCC技術」
花王は、これまで、ベビー用紙おむつの開発の一環として、幼児の歩行動作を解析する数多くの研究を行なってきました。さらに、その歩行動作解析のノウハウを高齢者の歩行支援にも応用したいと考え、成人の歩行動作を解析するシステムを開発し、幼児から高齢者まで3万人以上の歩行データをもとに研究を進めています。近年では、シート式圧力センサーを用いた足圧総合評価システム※1やモーションキャプチャ技術を用いた歩行計測※2など、歩行動作をさらに詳細に解析できる技術の開発に取り組んでいます。
動作解析研究でよく用いられるモーションキャプチャ技術は、3次元の歩行動作を正確に解析できるというメリットがあります。しかし一方で、複数の赤外線カメラをあらかじめ設置する必要があるなど、場所や時間に制約があり、また、複数の計測用反射マーカーを体に貼りつける必要もあるため、計測には特別な技能や時間を要します。
そこで、いつでもどこでも簡単に歩行動作を解析できる手法の開発に着手し、今回、スマートフォンなどで2次元の動画を撮影するだけで3次元の歩行動作として詳細に解析できる「mGCC技術」を開発しました。この技術は、一般的なデジタルカメラ(RGBカメラ※3)で撮影した2次元の動画について機械学習を行ない、人体の骨格点の動きを3次元のデータとして算出し解析できるようにしたものです。
※1 2019年6月26日ニュースリリース:シート式圧力センサーを活用して、歩行時の足圧データ解析により足圧総合評価システムを開発
https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2019/20190626-001/
※2 2020年10月9日ニュースリリース:モーションキャプチャ技術で幼児の歩行発達メカニズムを解明
https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2020/20201009-001/
※3 撮像素子を用いて可視光域の赤、緑、青の光を電気信号に変換し、3波長のデータとして取得して画像とするカメラ
モーションキャプチャ技術から得られた推定日齢は、実日齢と高い相関関係がありました(図2)。さらに、mGCC技術から得られた推定日齢は、測定精度の高いモーションキャプチャ技術から得られた推定日齢と高い相関関係が認められました(図3)。このことから、mGCC技術はモーションキャプチャ技術とほぼ同等の精度で日齢を推定できることがわかりました。
■まとめと今後
今回開発したmGCC技術を用いることで、わざわざ計測装置を設置することなく、スマートフォンなどで日常的に幼児の歩行の様子を撮影するだけで、歩行動作の発達を知ることが可能となります。今後、幼児だけにとどまらず、成人や高齢者の歩行動作の解析にも本技術の応用範囲を広げ、一生涯を通した「歩く」という視点からのQOLの向上や健康増進などを支援する研究および技術開発を進めてまいります。
花王は、これまで、ベビー用紙おむつの開発の一環として、幼児の歩行動作を解析する数多くの研究を行なってきました。さらに、その歩行動作解析のノウハウを高齢者の歩行支援にも応用したいと考え、成人の歩行動作を解析するシステムを開発し、幼児から高齢者まで3万人以上の歩行データをもとに研究を進めています。近年では、シート式圧力センサーを用いた足圧総合評価システム※1やモーションキャプチャ技術を用いた歩行計測※2など、歩行動作をさらに詳細に解析できる技術の開発に取り組んでいます。
動作解析研究でよく用いられるモーションキャプチャ技術は、3次元の歩行動作を正確に解析できるというメリットがあります。しかし一方で、複数の赤外線カメラをあらかじめ設置する必要があるなど、場所や時間に制約があり、また、複数の計測用反射マーカーを体に貼りつける必要もあるため、計測には特別な技能や時間を要します。
そこで、いつでもどこでも簡単に歩行動作を解析できる手法の開発に着手し、今回、スマートフォンなどで2次元の動画を撮影するだけで3次元の歩行動作として詳細に解析できる「mGCC技術」を開発しました。この技術は、一般的なデジタルカメラ(RGBカメラ※3)で撮影した2次元の動画について機械学習を行ない、人体の骨格点の動きを3次元のデータとして算出し解析できるようにしたものです。
※1 2019年6月26日ニュースリリース:シート式圧力センサーを活用して、歩行時の足圧データ解析により足圧総合評価システムを開発
https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2019/20190626-001/
※2 2020年10月9日ニュースリリース:モーションキャプチャ技術で幼児の歩行発達メカニズムを解明
https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2020/20201009-001/
※3 撮像素子を用いて可視光域の赤、緑、青の光を電気信号に変換し、3波長のデータとして取得して画像とするカメラ
スマートフォンなどで撮影した2次元の歩行動画を3次元の歩行動作情報に変換
■幼児の歩行動作解析へ応用、簡便に歩行の発達を知ることが可能に
子どもの個性に合わせた支援や情報提供に役立てるという観点で、今回、保護者がスマートフォンなどで撮影するだけという簡単な方法で、歩行の発達を確認できる手法の開発に取り組みました。
なお、本開発は、十条こどもクリニック 岩崎博之医師、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 内藤久士教授、上海体育学院 陸大江教授のご指導、ご協力のもと行ないました。
月齢13~37カ月(日齢400~1,100日)の幼児99名について、歩行の様子を従来のモーションキャプチャ技術により計測し、同時に一般的なデジタルカメラによる動画撮影を行ないました。次に、モーションキャプチャ技術で得られた3次元のデータから、日齢と相関が高い歩行パラメータを複数抽出(図1)して重回帰分析し、幼児の日齢を推定しました。一方、デジタルカメラで撮影した2次元の動画はmGCC技術で解析して3次元のデータとし、上記と同じ歩行パラメータを用いて日齢を推定しました。これら2つの推定日齢を比較することで、2次元の歩行動画を撮影するだけで、定量的にその発達を推定できるかどうかを評価しました。
モーションキャプチャ技術から得られた推定日齢は、実日齢と高い相関関係がありました(図2)。さらに、mGCC技術から得られた推定日齢は、測定精度の高いモーションキャプチャ技術から得られた推定日齢と高い相関関係が認められました(図3)。このことから、mGCC技術はモーションキャプチャ技術とほぼ同等の精度で日齢を推定できることがわかりました。
■まとめと今後
今回開発したmGCC技術を用いることで、わざわざ計測装置を設置することなく、スマートフォンなどで日常的に幼児の歩行の様子を撮影するだけで、歩行動作の発達を知ることが可能となります。今後、幼児だけにとどまらず、成人や高齢者の歩行動作の解析にも本技術の応用範囲を広げ、一生涯を通した「歩く」という視点からのQOLの向上や健康増進などを支援する研究および技術開発を進めてまいります。
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