ヨシを原材料とした新規高性能重金属吸着剤を開発~ヨシの循環利用による湿地生態系の保全を目指して~【産技助成Vol.47】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
東北大学大学院工学研究科
多様な重金属への優れた吸着処理能力を持つヨシで新規の吸着剤を開発
さらに、優れた重金属吸着能力を有する新たな植物バイオマスの
スクリーニング手法も開発しました
東北大学大学院工学研究科
多様な重金属への優れた吸着処理能力を持つヨシで新規の吸着剤を開発
さらに、優れた重金属吸着能力を有する新たな植物バイオマスの
スクリーニング手法も開発しました
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、東北大学大学院工学研究科の准教授、中野和典氏は、ヨシを原材料とした高性能重金属吸着剤の開発をしました。
この技術は湖沼や河岸等の水辺の水質浄化機能を担うヨシをはじめ、色々な植物バイオマスを原料として高性能な重金属除去・回収性能を有する吸着剤を製造するもので、従来、一般的に用いられている活性炭等のように植物バイオマス由来の原料を炭化させるプロセスを経ることなく、簡易な化学処理により植物バイオマスそのものの優れた重金属吸着性能を引き出すことで、安価で高性能、省エネルギーな吸着剤製造方法を確立しました。
また、重金属吸着性能を決める酸素含有官能基量は酸化処理によって強化可能であり、ヨシの最大吸着量(Qm)を24%増加させることに成功しました。
1.研究成果概要
ヨシ製吸着剤は、吸着した重金属の脱着と吸着性能の再生が容易であり、耐久性にも優れているため、繰り返し使用することが可能です。安価で高性能なヨシ製重金属吸着剤の生産を可能にすることは、重金属の除去処理に有用な吸着剤に新しくこれまで使われてこなかったヨシを利用するという道を拓くことになります。これにより吸着剤原料としてのヨシの利用の拡大、刈り取ったヨシの循環利用手法の確立により湿地生態系の保全に寄与します。具体的には、ヨシの産業的な有効利用方法の確立によりこの優れたヨシ原が持つ水質浄化機能を持続的に活用していくためにも定期的なヨシの刈り取りが必要となり、結果的に湿地生態系の保全をサポートすることができます。
さらに開発した重金属吸着剤用の植物バイオマスの評価手法が、化学修飾処理の有無に関わらず有効であったことから、これを利用した簡易スクリーニングによりさらに新たな有用植物バイオマスが見出されてくることが期待できます。このスクリーニング手法により既にワカメ、杉チップ、モミ殻等の候補を本研究開発で新たに見出しました。
2.競合技術への強み
ヨシ製吸着剤は、さまざまな重金属(亜鉛、鉛、カドミウム等)の吸着処理に利用でき、特に低濃度の平衡条件下で優れた性能を発揮します。また、その能力は活性炭を上回ることが確認されています。この重金属吸着性能に最も大きく影響している要因は酸素含有官能基量であることを解明し、これを強化するために有効な化学修飾法を見出すことに成功しました。これにより世界最高レベルの重金属親和性を有するヨシ製吸着剤の製造技術の開発に成功しました。
3.今後の展望
連携企業との共同研究による技術の実用化だけでなく、「ヨシの循環利用」の必要性に理解がある企業やヨシの刈り取りを支援している地方自治体等との連携を図り、多用な生物の生息地や水質浄化の場としてのヨシ原の機能を持続的に活用するためのヨシの刈り取り活用をバックアップするヨシの循環利用システムの構築に貢献していきたいと考えます。
また本技術は鉱山等に由来する重金属汚染問題を抱えている発展途上国でも運用可能であり、国際的技術移転についても試みたいと考えています。
4.参考
成果プレスダイジェスト:東北大学准教授 中野 和典氏
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、東北大学大学院工学研究科の准教授、中野和典氏は、ヨシを原材料とした高性能重金属吸着剤の開発をしました。
この技術は湖沼や河岸等の水辺の水質浄化機能を担うヨシをはじめ、色々な植物バイオマスを原料として高性能な重金属除去・回収性能を有する吸着剤を製造するもので、従来、一般的に用いられている活性炭等のように植物バイオマス由来の原料を炭化させるプロセスを経ることなく、簡易な化学処理により植物バイオマスそのものの優れた重金属吸着性能を引き出すことで、安価で高性能、省エネルギーな吸着剤製造方法を確立しました。
また、重金属吸着性能を決める酸素含有官能基量は酸化処理によって強化可能であり、ヨシの最大吸着量(Qm)を24%増加させることに成功しました。
1.研究成果概要
ヨシ製吸着剤は、吸着した重金属の脱着と吸着性能の再生が容易であり、耐久性にも優れているため、繰り返し使用することが可能です。安価で高性能なヨシ製重金属吸着剤の生産を可能にすることは、重金属の除去処理に有用な吸着剤に新しくこれまで使われてこなかったヨシを利用するという道を拓くことになります。これにより吸着剤原料としてのヨシの利用の拡大、刈り取ったヨシの循環利用手法の確立により湿地生態系の保全に寄与します。具体的には、ヨシの産業的な有効利用方法の確立によりこの優れたヨシ原が持つ水質浄化機能を持続的に活用していくためにも定期的なヨシの刈り取りが必要となり、結果的に湿地生態系の保全をサポートすることができます。
さらに開発した重金属吸着剤用の植物バイオマスの評価手法が、化学修飾処理の有無に関わらず有効であったことから、これを利用した簡易スクリーニングによりさらに新たな有用植物バイオマスが見出されてくることが期待できます。このスクリーニング手法により既にワカメ、杉チップ、モミ殻等の候補を本研究開発で新たに見出しました。
2.競合技術への強み
ヨシ製吸着剤は、さまざまな重金属(亜鉛、鉛、カドミウム等)の吸着処理に利用でき、特に低濃度の平衡条件下で優れた性能を発揮します。また、その能力は活性炭を上回ることが確認されています。この重金属吸着性能に最も大きく影響している要因は酸素含有官能基量であることを解明し、これを強化するために有効な化学修飾法を見出すことに成功しました。これにより世界最高レベルの重金属親和性を有するヨシ製吸着剤の製造技術の開発に成功しました。
3.今後の展望
連携企業との共同研究による技術の実用化だけでなく、「ヨシの循環利用」の必要性に理解がある企業やヨシの刈り取りを支援している地方自治体等との連携を図り、多用な生物の生息地や水質浄化の場としてのヨシ原の機能を持続的に活用するためのヨシの刈り取り活用をバックアップするヨシの循環利用システムの構築に貢献していきたいと考えます。
また本技術は鉱山等に由来する重金属汚染問題を抱えている発展途上国でも運用可能であり、国際的技術移転についても試みたいと考えています。
4.参考
成果プレスダイジェスト:東北大学准教授 中野 和典氏
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