【福井県池田町】民俗芸能と人間国宝の舞が700人の観客を魅了 「能楽の郷 池田 葉月薪能(はづきたきぎのう)」を開催しました
令和6年8月11日(日・祝)、福井県池田町にて「能楽の郷 池田 葉月薪能」を開催、地域に根差す民俗芸能と人間国宝による能・狂言が約700人の観客を魅了しました。
池田町および池田町教育委員会は、令和6年8月11日(日・祝)、須波阿湏疑(すわあづき)神社境内にて、「能楽の郷 池田 葉月薪能」を開催しました。池田町の「葉月薪能」は、一昨年に四半世紀ぶりに復活してから今年で3回目。リピーターや県外からの観客も徐々に増え、池田の夏の風物詩として定着しつつあります。
第一部の民俗芸能交流会では、福井県池田町で約800年間受け継がれてきた「水海の田楽・能舞(国指定重要無形民俗文化財)」と、島根県西部に根付く「石見神楽(いわみかぐら/日本遺産)」からの演目を上演。若き伝統文化の担い手たちが、会場の熱気に包まれながら、優雅で躍動感あふれる舞を披露してくれました。
第二部の能・狂言には、かつての越前の猿楽ともゆかりのある地・京都から、共に人間国宝に認定された「金剛流 二十六世宗家 金剛永謹師」と「大蔵流 茂山七五三師」をお招きしました。かがり火が灯された幽玄な舞台で、名手たちによる卓越した芸が披露され、会場には大きな拍手が沸き起こりました。
能・狂言の演目には池田町で開催された「全国能面公募展」の優秀作品3面が使用され、能面作家にとっても感動の舞台となりました。
薪能当日は「変身・能役者体験」「創作能面展」「池田の古面パネル展」など関連イベントも開催。また、会場には池田の食や木の魅力を楽しめる物販店のほか、茶道の野点席も設けられ、開場前から大いに賑わいました。上演後は、町民が廃油から作った約1000個のエコキャンドルが参道を照らし、幻想的で厳かな雰囲気を演出し、葉月薪能を締めくくりました。
これからも、「あたりまえをたやさないまち」池田町は約800年の伝統を受け継ぐ「能楽の郷」として、日本の文化を大切に継承していきます。
<葉月薪能:参考資料>
薪能は、鎌倉時代に奈良の興福寺で始まったとされており、能舞台の周囲にかがり火を焚いて演じる能楽です。池田町では令和4年に23年ぶりに薪能を復活し、それから3年連続で8月に開催しております。
今年も池田の総社である須波阿湏疑(すわあづき)神社の境内に設けられた舞台の前でかがり火を焚き、その中で演じられる能・狂言は、幻想的で荘厳な雰囲気に包まれました。
能・狂言では昨年に引き続き、人間国宝に認定されている大蔵流の茂山七五三(しげやましめ)さんと、金剛流 二十六世宗家金剛永謹(こんごうひさのり)さんにお越しいただき、至高の芸を披露いただきました。人口2200人の小さな町で、2人の人間国宝の舞の鑑賞が叶った貴重な機会となりました。
能・狂言で使用する面は、池田町が平成9年度から開催している「全国能面公募展」に出品された作品から選ばれたものです。池田町の能面公募展の優秀作品は、自分の制作した能面が主要流派の舞台で使用されることから、現代の面打ち師にとっての登竜門になっています。
【第一部「民俗芸能交流会」】
水海の田楽・能舞より 田楽「烏とび(からすとび)」、能舞「呉服(くれは)」
池田町で約800年、絶えることなく受け継がれている「水海の田楽・能舞」は、1つの祭礼において田楽と能舞の両方を奉納する珍しい芸能で、国の重要無形民俗文化財に指定されています。
毎年2月15日に池田町水海の鵜甘(うかん)神社で、田楽四番(烏とび・祝詞・あまじゃんごこ・阿満)・能舞五番(式三番・高砂・田村・呉服・羅生門)が奉納され、五穀豊穣、息災延命、天下泰平、国土安穏を祈願します。
今回はその中から、日本の国造りを示し舞台の区画を定める田楽「烏とび」と、織女が機(はた)を織って帝に献上し祝い寿ぐ能舞「呉服(くれは)」を上演。本来の神事とは真逆の季節、演者たちは暑さをものともせず、池田町が誇る伝統の舞を大観衆の前で披露しました。
石見神楽 嘉戸神楽社中(いわみかぐら かどかぐらしゃちゅう)より 「塵輪(じんりん)」、「恵比須(えびす)」、「大蛇(おろち)」
島根県西部(石見地方)に古くから伝わる伝統芸能で、文化庁が定める日本遺産にも登録されています。今回お越しいただいた「嘉戸神楽社中」は、地元・嘉戸八幡宮の例祭奉納を中心に、各地神社の例大祭にも積極的に参加して、石見神楽の魅力を広く伝えています。葉月薪能では、神と鬼が対決する「塵輪」と、恵比須様の鯛釣りの様子を描いた「恵比須」、日本神話でも有名な“八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治”を題材にした「大蛇」を披露して頂きました。舞台を大きく動き回るダイナミックな舞踊が会場を沸かせました。
【第二部「葉月薪能」】
<火入れ式>
日没が近づいた第二部のはじめに「火入れ式」が執り行われました。地元の中学生・南田唯月さん(2年生)が巫女を担い、国の重要文化財に指定されている須波阿湏疑神社本殿から種火を受け取り、舞台前に届けました。
届けられた種火は水海の田楽能舞保存会・飯田拓見会長をはじめ関係者により、厳かな雰囲気の中で火入れされました。
大蔵流狂言「神鳴(かみなり)」 出演:茂山七五三(しげやましめ) 茂山宗彦(しげやまもとひこ)他
都で流行らぬヤブ医者が東国へ下ろうとするその途中、突然雷鳴が響き渡り、目の前にかみなり様が落ちてきます。腰を強く打ったかみなり様は、この医者に針治療をしてもらい、再び雷鳴を響かせながら、天に帰っていくのでした。人間国宝・茂山七五三さんがヤブ医者を、その長男・茂山宗彦さんがかみなり様を演じ、ふたりの息ぴったりのコミカルな掛け合いに会場は温かな笑いに包まれました。
今回の舞台では、第21回全国能面公募展・写し面の部で審査員特別賞に選ばれた狂言面「鬼」(貝保雅昭さん作)が使用されました。
金剛流能「田村 長床几(ながしょうぎ)」 出演:金剛永謹(こんごうひさのり) 金剛龍謹(こんごうたつのり)他
東国から来た僧が清水寺に参詣したときのこと。満開の桜の下、童子から、坂上田村麻呂が清水寺を創建した由縁を教えてもらいます。その夜、僧が読誦していると、田村麻呂の霊が現れて、一代の戦記を語ります。人間国宝・金剛永謹さんが田村麻呂の霊を、その長男・金剛龍謹さんが童子を演じました。太鼓や笛の音に合わせて勇壮な舞が繰り広げられ、最後は大きな拍手に包まれました。
今回の舞台では、第21回全国能面公募展・写し面の部で最優秀賞に選ばれた能面「天神」(杉浦忠治さん作)と、第18回全国能面公募展・写し面の部で審査員特別賞に選ばれた能面「童子」(日名恵次さん作)が使用されました。
【関連催事・他】
<変身・能役者体験> 場所:池田町能面美術館
池田町の「水海の田楽・能舞」で使われていた能装束と能面を着装して、保存会の方々に所作を指導いただく体験会を行いました。参加者からは「能面をつけた時の視野の狭さにびっくり」「衣装だけでなく実際の舞台で舞うこともできてよかった」「歴史を感じる貴重な体験。友人にも勧めたい」などの感想が聞かれました。
池田町では今後も、能面・装束の着装、所作など、伝統文化に触れる機会創出に取り組んでまいります。
<創作能面展> 場所:池田町能面美術館
古面を写す(複製する)ことが常道とされる面打ちの世界で「創作能面」の分野を切り開いてきた池田町在住の面打ち師、桑田能忍・能守親子。両氏の代表作を含む約100点の能面を展示しています。
・令和6年8月31日(土)まで開催中(火曜定休)
・入場料1人300円
<池田の古面パネル展> 場所:須波阿湏疑神社
先人と地域を敬う象徴として大切に保管され、普段は一般公開していない室町期からの貴重な古面41点を、須波阿湏疑神社拝殿前にて、パネルにて展示しました。来場者は池田町に伝わる貴重な古面の写真を熱心に観覧していました。
<エコキャンドル>
池田町の青年団をはじめ、中学生から年配者まで、町民みんなで協力して作成した約1000個のエコキャンドルが、夜の神社参道を照らしました。エコキャンドル作りには池田町で集められた廃油が使用されており、2005年から環境活動の一つとして実施しています。
<飲食・物品販売>
会場の一角には池田町ならではの出店が立ち並び、手作りの赤飯やます寿司、米粉のお菓子など、来場者を食と笑顔でおもてなししました。また、Tシャツなどの記念グッズや、池田町の木工体験施設「ウッドラボいけだ」の職人たちが葉月薪能を記念して制作したお土産品も販売されました。特設された野点エリアでは池田抹茶教室の方々がお抹茶を提供し、薪能とあわせて日本文化を感じる夏のひとときとなりました。
■「あたりまえをたやさないまち」池田町
福井県池田町は人口約2200人、森に囲まれた小さな町です。
心をいやす日本の原風景、作物をいつくしむ感謝の気持ち、人と人が思いやり、支えあって暮らす「あたりまえをたやさないまち」を目指しています。
池田町町長・杉本博文
「人々が共同して暮らす小さな社会だからこそ、 人々が関わりあえる、相互扶助が生きるまちでありたいと願っています」
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