京都フュージョニアリング、発電技術の実証を目指す統合試験プラント「UNITY-1」の進捗を公開
- 液体金属を用いた発電技術や、水素同位体分離技術を映像で紹介 -
フュージョンエネルギープラントのエンジニアリングを手掛ける京都フュージョニアリング株式会社は、フュージョンエネルギープラントの模擬環境下での発電技術の実証を目指して開発を進めている統合試験プラント「UNITY-1」の現在の進捗状況を紹介する動画を公開しました。
UNITY-1では、4テスラ(T)に達する強磁場や1,000度を超える温度帯等の模擬環境下で、核融合反応を起こすことなく、核融合炉から得られる熱を電力に変換するプロセスを実証します。本動画では、UNITY-1で実証する液体金属を用いた熱交換・発電技術の実証や、液体金属から水素同位体であるトリチウムを回収する「VST(Vacuum Sieve Tray)」と呼ばれる技術について、今後の予定とともに紹介しています。
動画URL: https://youtu.be/P48MBm66NCE

■UNITY-1について
当社は、フュージョンエネルギープラントの重要な技術となる、炉心部分からエネルギーを取り出して発電までつなげる「フュージョンブランケット・熱サイクルシステム(fusion blanket and thermal cycle system)」の開発を進めています。フュージョンブランケット・熱サイクルシステムでは、核融合反応によって発生する中性子の高エネルギーをブランケットと呼ばれる壁構造で受け止め、最大1,000℃の熱を取り出します。その高熱を熱媒体である液体金属によって輸送し、発電や水素製造などに利活用していきます。
フュージョンブランケット・熱サイクルシステムは、フュージョンエネルギープラントの実現に不可欠な技術であり、当社は世界に先駆けてその確立に取り組んでいます。この技術の実証を目的として、2024年より京都にて統合試験プラント「UNITY-1」の建設を開始しました。UNITY-1では核融合反応を起こさず、模擬環境下で高熱を再現し、発電技術を一気通貫で実証することを目指しています。
核融合反応により発生するエネルギーを可能な限り高温のまま効率的に活用するため、UNITY-1ではリチウム鉛(LiPb)を液体金属冷却材として採用しています。リチウム鉛は、高い熱伝導性と化学的安定性を備えるだけでなく、燃料となるトリチウムの増殖機能を有しており、フュージョンブランケット・熱サイクルの実現に欠かせない要素を兼ね備えています。ほかにも溶融塩(FLiBe)や純粋なリチウム(Li)での研究も進めていますが、UNITY-1では、リチウム鉛と高温に耐えられる構造材料で1000℃の熱回収が可能なシステムを構築しています。
またUNITY-1は、リチウム鉛が配管内で滞留しないよう、流動性や大きな温度差による熱応力を考慮した配管レイアウトを設計するとともに、高温が外部に漏れないよう特別な断熱構造を採用するなど、フュージョンプラント特有の環境に対応した設計が施されています。実際の製造には、高度な技術力を持つ日本のものづくり企業の協力を得ており、現時点で熱交換器および発電用タービンを除く大規模設備の組み上げが完了しています。
液体金属による熱回収は高速炉などで実用化事例があるものの、世界的に開発が求められている技術であり、更にフュージョンエネルギープラント向けの条件を含めた実証は、設計面・構造特性・製造面など多岐にわたる課題解決が求められます。特に磁場環境での液体金属の挙動は重要な研究課題であり、当社は世界に先駆けて超電導磁石を用いた4テスラ(T)までの強磁場での流動試験も行います。
現在のUNITY-1は、液体金属を用いた発電技術の実証に向けて、試験と建設を並行して進めている状況です。

■UNITY-1で行う実証試験について
これまでに、液体金属を500℃まで加熱して熱輸送をする試験の実施や、核融合炉の環境を模した超電導マグネットによる磁場環境下で、液体金属が目標通りに流動するかを確認する試験の準備を行い、いずれも設計通りに進捗しています。
今後、液体金属が輸送する500℃の熱を空気に変換する「熱交換器」と、加熱した空気で駆動し発電する「発電用タービン」を据え付け、最終的に液体金属を用いた発電技術の実証に取り組みます。また、ブランケットを介した熱の取り出しや、実際に核融合反応から得られるエネルギーから変換する温度帯として、最大1000℃の熱の輸送を将来的に実証することを目指します。
加えてUNITY-1では、ブランケットの重要な機能であるトリチウムの増殖後に、トリチウムを取り出す水素同位体分離技術「VST (Vacuum Sieve Tray)」の技術検証も実施しています。実験ではトリチウムは用いず、重水素を含む液体金属をVSTに通して液滴の状態にし、水素同位体(軽水素・重水素の混合ガス)を液体金属から回収する技術を検証しており、今後液体金属から水素を回収する性能の評価試験を実施する計画です。
■プラント技術の統合試験について
フュージョンエネルギープラントの実現には、核融合反応によって発生するエネルギーを、ブランケットを介して取り出し利活用する「フュージョンブランケット・熱サイクルシステム」と、継続的に核融合反応を維持するために燃料の回収・分離・循環を行う「フュージョン燃料サイクルシステム(Fusion Fuel Cycle System)」の両技術が不可欠です。これらの技術は、トカマク型、ステラレータ型、レーザー型など、プラズマの閉じ込め方式にかかわらず、フュージョンエネルギーの社会実装において共通して必要とされる基盤技術です。たとえ核融合反応の発生に成功し、膨大なエネルギーを得られたとしても、そのエネルギーを有効に利活用する技術が確立されていなければ、実用化にはなお時間を要することになります。当社はフュージョンエネルギーの早期実現を目指し、これらの基盤技術の確立に向けて、世界に先駆けた技術開発に取り組んでいます。
この取り組みの一環として、装置やシステムを統合した設備での試験を行うため、当社は2022年に「UNITY」プロジェクトを発表しました。その後、各技術の特性に応じた最適な環境で迅速な実証を進めるべく、現在は「UNITY-1」と「UNITY-2」の2つのプロジェクトに分けて開発を進めています。「UNITY-1」では、フュージョンブランケット・熱サイクルシステムの実証を行い、一方の「UNITY-2」では、燃料を炉心へ継続して供給するフュージョン燃料サイクルシステムの実証を目指しています。「UNITY-2」では、実際の燃料である重水素とトリチウムを用いた実証を行うため、世界有数の原子力技術研究機関であるカナダ原子力研究所(CNL)と共同でジョイントベンチャー「Fusion Fuel Cycles Inc.」を設立し、カナダ・オンタリオ州にて建設を進めています。
当社は引き続き、フュージョンエネルギープラントに欠かせない重要技術の開発を加速させ、UNIYT-1、UNITY-2による統合試験およびその実証を通じて技術的課題をクリアし、フュージョンエネルギーの早期実現に貢献してまいります。
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