【42 Tokyo】「自動運転ミニカーバトル」キックオフイベント開催レポート
トヨタ自動車、マツダ、スマートHDによるパネルディスカッションを実施 自動車業界のソフトウェアエンジニアに求められるスキルについて議論

一般社団法人42 Tokyo(本社:東京都港区、代表理事:坂之上洋子、以下「42 Tokyo」)は、2025年11月29日(土)に第二回「自動運転ミニカーバトル」キックオフイベントを開催いたしました。本イベントは、自動運転技術を実践形式で学ぶ開発コンテストで、自動車業界でソフトウェアエンジニアとして活躍する未来を想像できるような機会提供と人材育成を目的としています。
イベントの中ではトヨタ自動車株式会社、マツダ株式会社、スマートホールディングス 4th.ai代表 スマートインプリメント株式会社が登壇し、これからの自動車業界のソフトウェアエンジニアに求められるスキルなどについてパネルディスカッションを行いました。
イベント概要と開催背景
「自動運転ミニカーバトル」は、電子制御可能なミニカーにカメラや超音波センサーを搭載し、参加者が自らプログラミングした自動運転アルゴリズムでコース周回の最速タイムを競う、約3ヶ月間のハッカソン型コンテストです。
第2回となる今回は、50チーム計178名が参加し、2026年2月8日(日)に開催される予選レースおよび、2月15日(日)の決勝レースに向けて開発を開始いたしました。
かつてハードウェア中心だった自動車産業は今、「CASE*」と呼ばれる技術革新が進んでおり、ソフトウェアエンジニアの需要が急増しています。しかし、自動車業界でどのようにソフトウェアのスキルを活用できるかの理解はあまり進んでいないのが現状です。この課題を受け、42 Tokyoはソフトウェアエンジニアが「ものづくり×ソフトウェア開発」を実際に体験する場として本イベントを開催いたしました。
イベントのパートナー企業として、トヨタ自動車株式会社をはじめ、マツダ株式会社、株式会社SUBARUなどが参画し、企業の垣根を超えて業界全体でソフトウェアエンジニアを育成することを目指しています。
※CASEとは、自動車業界における「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリング・サービス)」「Electric(電動化)」の4つの領域のこと。
「自動運転ミニカーバトル」HP:https://42tokyo.jp/landing/autonomous-minicar-battle/
パネルディスカッションレポート
イベント後半では、トヨタ自動車、マツダ、スマートホールディングス(スマートインプリメント)の3社から、自動車業界の最前線で活躍する方々が登壇し、パネルディスカッションが行われました。自動車業界のエンジニアが直面している変化と、未来の技術者に求められる資質について、現場のリアルが語られました。
<登壇者>
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千々岩 真志 氏(トヨタ自動車株式会社 人材開発部 組織開発・育成室 主任)
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後藤 誠二 氏(マツダ株式会社 統合制御システム開発本部 副本部長)
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鈴木 基之 氏(スマートホールディングス / 4th.ai 代表 / スマートインプリメント株式会社 COO)
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モデレーター:坂之上 洋子(42 Tokyo 理事長)
◯テーマ1: 激変する開発現場「スーツからパーカーへ」文化変容
まず、「CASEが急速に進む自動車業界において、感じる最大の変化とは?」というテーマについて聞きました。
マツダの後藤氏は「車載ソフトウェアの市場規模はこの10年で約3倍、1兆円規模に膨れ上がった」といいます。UnityやGoogleといったIT大手との協業が日常化したことで、開発現場のカルチャーも激変していると語りました。「以前はスーツが当たり前だったが、今はシリコンバレー流のパーカー姿で仕事をするのが日常になった。それくらい、我々が付き合う相手も、求められるスピード感も変わっている」と話しました。
一方、スマートホールディングスの鈴木氏は、技術的な最大の転換点として「OTA(Over The Air:無線によるソフトウェア更新)」を挙げました。「スマホのように、車が販売後も進化し続けることが前提となった今、最もクリティカルな課題は『セキュリティ』だ。外部とつながることは、ハッキングのリスクと隣り合わせであることを意味する」と、利便性の裏にある緊迫した開発事情を明かしました。

◯テーマ2:技術トレンド「生成AI時代だからこそ、”原理原則”が重要」
続いてのテーマは、「各社の現場で今、最も需要が高まっている技術スタック」。登壇者全員が口を揃えたのは、特定のプログラミング言語ではなく「技術の本質の理解」でした。
マツダ・後藤氏は「Geminiのような生成AIの進化により、コードを書くこと自体のハードルは下がった。だからこそ、『なぜそのシステムが動くのか』という原理や、クラウドとエッジの設計思想を理解しているエンジニアが強い」と指摘。「アプリケーションの上澄みだけでなく、泥臭い下回りの仕組みを知ることで、初めてAIを使いこなせる」と強調しました。
トヨタ自動車の千々岩氏も人事の立場から現場を見ていて、「技術の移り変わりは激しい。だからこそ、あれもこれもと手を出すのではなく、『これなら誰にも負けない』というコアな専門性を一つ持つこと。一つの山を登りきった経験があれば、他の技術への応用はいくらでも効く」と、参加者にエールを送りました。

◯テーマ3:求められる人物像「3万点の部品をつなぐのは”人柄”」
次は「巨大なシステムを動かすために不可欠な、モビリティエンジニアに求められるソフトスキル」についてお話しいただきました。
トヨタ自動車・千々岩氏は「自動車は約3万点の部品からなり、業界全体で550万人が関わる日本の基幹産業。前後工程を含めてたくさんのステークホルダーとかかわるため、コミュニケーション能力が不可欠。また、新たな技術など、未知への探求心も必要になる。自分のコードが、誰かの仕事、あるいはお客様に影響を与えている。」と語りました。
これを受け、スマートホールディングス・鈴木氏は「自分の担当領域だけを見ていては務まらない。自分の仕事がシステム全体の中でどう機能し、どこに波及するのかを想像する力が重要」と説きました。
マツダ・後藤氏は「最後は『人柄』だ」と強調。「Googleのようなテック企業でも、採用の決め手は『この人と一緒に働きたいか』だと聞く。技術力は前提だが、異なる背景を持つ人々と協調し、困難を乗り越えられる人間性が、これからのエンジニアには求められる」と締めくくりました。

◯テーマ4:成長につながった経験「『泥臭さ』から逃げない」
セッションの最後には、登壇者が自身の若手時代を振り返り、参加者へアドバイスを送りました。
トヨタ自動車・千々岩氏 「私は文系出身だが、『やったことがないから』で機会を逃すのが一番もったいないと思い、エンジニアの道に飛び込んだ。ミニカーバトルに参加し、勇気を持って一歩踏み出したことに自信を持ってほしい。ものづくりとソフトウェア、両方の楽しさを感じていただければ」
マツダ・後藤氏「1年に1つ何か決めて自分の専門外の技術を学ぶようにしていたことはやってよかった。また、研究開発で終わらせず、実際に製品として世に出し、お客様の手に渡るまでの『泥臭いプロセス』を最後までやり切る経験をしてほしい」
スマートホールディングス・鈴木氏「新人の頃、性能の低いマイコン(H8)で、メモリも機能も制限された中でコードを書いた。その際にマイコンの原理原則を学んだことで、上位のシステムの検討からコーディングまで、間違いない設計開発をしてこれたと思う」

トヨタ自動車 千々岩氏、スマートインプリメント 鈴木氏、スマートホールディングス 石井氏
「自動運転ミニカーバトル」開催概要と今後の予定
本イベントには、高校生から社会人まで年代も幅広く、自動車メーカーやIT企業のエンジニア、ロボコン全国大会経験者や国際AIコンテスト受賞者など、多様なバックグラウンドの方が参加しています。
また、エントリーした246名のうち、約60%はPython未経験者、13名はプログラミング未経験者でした。一方、約15%は3年以上Pythonでの開発経験があり、知識や経験の有無にかかわらず熱意の高い方が参加しています。
参加者は今後、2月の予選レース・決勝レースに向けて、「Tokyo Innovation Base」に設置されたテストコースや、DMM.make TOKYOが運営する「TIB FAB」の3Dプリンター・工作機械などを活用し、約3ヶ月間かけてマシンとシステムの開発を行います。
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開発・試走期間: 2025年11月29日(土)~ 2026年2月7日(土)
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予選レース: 2026年2月8日(日)
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決勝レース: 2026年2月15日(日)
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会場: Tokyo Innovation Base(東京都千代田区)
<イベントに関するお問い合わせ>
「自動運転ミニカーバトル」お問い合わせフォーム
https://forms.gle/sT2Ldmbp6bjwYszJ9
42 Tokyo 概要
フランスの実業家が2013年に設立した「42」は、学費無料のソフトウェアエンジニア養成機関です。2020年6月に日本初のキャンパス「42 Tokyo」が開校し、現在世界31か国57キャンパス(2025年10月時点)で展開されています。また、世界の大学ランキングである「World's Universities with Real Impact (WURI) 」の「Global Top 400 Innovative Universities」で3位を獲得しています(2025年)。
「42 Tokyo」は経歴不問・学費無料・24時間オープンのキャンパスで、誰もがプログラミング学習に挑戦できる環境を提供しています。授業料が無料であること、最新のカリキュラムで学べること、またどんなバックグランドであっても挑戦できるという点で注目を集めています。運営は多数の企業の支援で成り立っています。
・本校住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿2丁目11−2
・公式サイト:https://42tokyo.jp
・42 Tokyo公式Xアカウント:https://x.com/42_tokyo
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