NPO法人クリーンオーシャンアンサンブル、調査チームを発足しコラム第1弾を公開~プラスチックペレットの問題と規制の課題~
海洋ごみ問題の解決に取り組むNPO法人クリーンオーシャンアンサンブル(香川県小豆郡小豆島町、代表理事:江川裕基)はこの度、現場で収集した海洋ごみデータを科学的に整理・分析し、
コラムや論文として発信する調査チームを新たに発足しました。

第一弾の成果として、調査チームによるコラム「プラスチックペレットの問題と規制案」を公開し、
マイクロプラスチックの一種であるプラスチックペレット汚染の現状と規制の課題について提言します。
※コラムページリンク:cleanoceanensemble.com
本調査チームは、大手化学メーカーの研究員、石山翔午(いしやましょうご)氏がリーダーを務め、
香川大学・中國正寿(なかくにまさとし)特命助教(瀬戸内圏研究センター)を監修者に迎えています。
2025年度中には学術論文1報および海洋ごみ問題に関するコラム3報(日本語・英語)の発表を予定しています。
背景(課題)
近年、海洋に流出したマイクロプラスチックが生態系や社会に深刻な問題となっています。
その中でも、製造段階から存在する一次マイクロプラスチックの一種であるプラスチックペレット
(レジンペレット)は、プラスチック製品の原料となる直径数ミリメートル程度の粒状樹脂です。
工場や輸送過程での流出事故により大量のペレットが環境中に漏出し、海岸や海洋に蓄積されて生態系への悪影響が懸念されています。

しかし現在、このペレット流出に特化した国際的な規制は存在せず、各国や地域での対策も十分とは言えません。
その結果、ペレット汚染は世界規模で拡大し、日本周辺の海岸でも砂浜に紛れたペレットが確認されるなど、目に見えにくい形で環境負荷を高めています。
調査チーム発足の目的
弊団体ではこれまで、ビーチクリーン活動や海洋ごみ回収装置の開発を通じて海洋からのプラスチックごみの回収に努めてきました。
自然環境に一度流出した海洋プラスチックごみは、分解に非常に長い時間がかかるため、
効果的な回収手法の確立が不可欠です。
今回発足した調査チームの目的は、現場で収集した海洋ごみ回収のデータを科学的に分析し、
海洋ごみ回収の知見を深めることにあります。

具体的には、データ分析や文献調査を通じて得られた知見をコラムや論文の形で発表し、
クリーンオーシャンアンサンブル独自の回収手法や得られたデータを広く共有・活用することで、
海洋ごみ問題解決に向けた議論や政策立案に貢献することを目指します。
また、調査チームの活動を通じて他の研究機関や企業とのデータ連携を促進し、
社会全体で海洋ごみ問題に取り組むための基盤作りにも寄与していきます。
公開コラム「プラスチックペレットの問題と規制案」の概要
調査チームが第一弾として公開したコラム「プラスチックペレットの問題と規制案」では、
プラスチックペレットによる海洋汚染の実態と各国における規制動向を解説しています。
コラムによれば、欧州連合(EU)では年間約5700万トンのプラスチックペレットが製造され、
そのうち最大18.4万トンが環境中に流出していると推計されています。

主な流出源は工場からの漏出や輸送時の事故であり、実際に「年間300万~3,600万個のペレットが
単一の工場から周辺環境へ流出している」という報告も紹介しています。
こうした課題に対し、EUでは2023年10月にプラスチックペレット汚染削減に向けた包括的な規則案が提示され、事業者による「①流出防止(予防)、②封じ込め、③流出後の回収」の徹底が求められています。
この規則案が実施されれば、ペレット流出を最大74%削減できる可能性があり、
環境や生物へのリスク低減が期待されています。
コラムでは最後に、クリーンオーシャンアンサンブルが重点を置く「回収(③)」の取組みを紹介し、流出してしまったペレットを回収する技術開発や活動の重要性を訴えています。

今回のコラム発信により、見落とされがちなプラスチックペレット問題への関心喚起と、今後の規制強化に向けた議論の一助となることを狙います。
調査チームの体制
今回発足した調査チームは、多様な専門分野の知見を結集して構成されています。
リーダーを務める石山 翔午氏は、大手化学メーカーで研究員として勤務する科学者であり、
マテリアル分野の専門知識と企業での研究経験を活かしてチームを牽引します。
また、調査チームは香川大学の中國 正寿特命助教がアドバイザー兼監修者として参画し、学術的な視点から助言と指導を行います。石山氏を中心に、Clean Ocean Ensemble内部の若手メンバーや有志の専門家がチームに加わり、データ分析から執筆までを協力して進めています。今後は必要に応じて外部の研究者とも連携し、より高度な分析や論考を深めていく計画です。
期待される成果
調査チームの発足により、クリーンオーシャンアンサンブルの現場活動で得られる知見を体系化し、海洋ごみ回収に関する調査の標準(デファクトスタンダード)を築いていくことが期待されます。
具体的には、同団体が開発・実践している低コスト海洋ごみ回収手法やデータ管理の手法が学術的に裏付けられることで、他のビーチクリーン団体や海洋ごみ回収団体にも広く採用され、団体間の連携が進むことが期待されます。
また、発信するコラムや論文が専門家や行政の関心を集めることで、海洋ごみ対策の政策立案や企業のCSR活動においてクリーンオーシャンアンサンブルの取り組みが参照モデルとなる可能性があります。
調査チームの情報発信力強化により、社会全体での海洋プラスチック問題解決に貢献できる基盤作りが加速すると期待されています。
関係者コメント

調査チームリーダー 石山翔午氏のコメント
クリーンオーシャンアンサンブルが実践する海洋ごみ回収の方法を科学的根拠に基づいたデファクトスタンダードとして確立していきたいと考えています。
そのために、ビーチクリーンや海上・河川ごみの回収活動などに取り組む他団体の皆さんと“仲間としてつながり、共に海洋ごみの科学を深めながら、回収活動から得られるデータや知見の価値を学術的に高めることを目指します。

香川大学 瀬戸内圏研究センター 中國正寿 特命助教のコメント
研究機関と市民団体の連携は、海洋環境問題の解決において極めて重要です。
今回の調査チームによる知見が、学術的価値を持つデータとして蓄積されるとともに、社会実装へと発展することで、瀬戸内海の環境保全に貢献できることを願っています。
今後の展望
調査チームでは、2025年度中に学術論文1報の発表と、海洋ごみ問題に関するコラム計3報(日本語・英語)の公開を計画しています。
論文については現在、クリーンオーシャンアンサンブルが独自に収集している海洋ごみデータを分析した内容を学会誌へ投稿すべく準備中です。

また、今後公開予定のコラムでは、国内外の海洋ごみ問題に関する最新トピックや
クリーンオーシャンアンサンブルの現場での発見をテーマに取り上げる予定です。
発信した内容は同団体のウェブサイトおよび英語版サイトで公開するほか、
学会や環境関連のニュースメディアでの情報提供も視野に入れ、より多くのステークホルダーに届けることを目指します。
調査チームは今後も継続的にデータ収集・研究を行い、得られた成果を社会に発信していくことで、
海洋ごみ問題の解決に向けた議論をリードしていきます。
団体概要
団体名: 特定非営利活動法人クリーンオーシャンアンサンブル(NGO Clean Ocean Ensemble)
所在地: 〒761-4425 香川県小豆郡小豆島町坂手甲985番地
設立: 2020年12月10日
代表理事: 江川 裕基
活動内容: 海洋ごみ回収装置の開発・運用、海洋ごみデータの記録・可視化、環境教育事業 ほか
URL: https://cleanoceanensemble.com
お問い合わせ先
NPO法人クリーンオーシャンアンサンブル(広報担当: 北川、江川)
TEL: 070-8360-9815 E-mail: info@cleanoceanensemble.com

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