日本アセアンセンターがASEAN地域におけるグローバル・バリュー・チェーンの現況および持続可能な開発に向けた活用について政策提案を含む研究成果を発表

▼ASEANにおけるグローバル・バリュー・チェーンに関する論文
http://www.asean.or.jp/ja/centrewide/

論文「Global Value Chains in ASEAN: A Regional Perspective」論文「Global Value Chains in ASEAN: A Regional Perspective」

国際機関日本アセアンセンター(東京都港区新橋6-17-19 新御成門ビル1階 事務総長:藤田正孝)は、9月1日、ASEAN[注1]地域におけるグローバル・バリュー・チェーン(GVC)に係る研究成果を発表しました(論文は英語のみ。URL:http://www.asean.or.jp/ja/centrewide/)。本研究はASEAN地域におけるGVCについての分析に加え、更なる持続可能な開発という観点から、GVCによる利益を最大化しリスクを最小限に留めるためのASEAN諸国の政策決定者に対する実践的な提言も含むものです。

今回発表した「Global Value Chains in ASEAN: A Regional Perspective(ASEANにけるグローバル・バリュー・チェーン:地域的視点)」と題する論文は、センターが今後発表することを予定しているGVCについての16本の論文のうちの一つです。既にセンターは2017年7月に、フィリピンを採り上げた論文を発表しており、残りの14本の論文についても順次発表していきます。[注2]  これらの論文はセンターがEora[注3]と国連貿易開発会議(UNCTAD)の協力を得て構築した付加価値貿易に関するデータに基づいています。 

本論文の要旨は、次の通りです。

● ASEAN地域におけるGVCは地域の経済成長に大きく寄与し得る。ASEAN各国の輸出に占める付加価値(国内で付与された付加価値:DVA)は、2013年には平均して各国GDPの約35%を占める【図表1】。DVAはGDPに貢献する輸出の一部である。

● ASEAN地域のGVC参加率は、EUに次ぎ、世界で2番目に高い。2013年のASEAN地域からの付加価値輸出は総額1兆4,180億米ドルに上り、内5,320億米ドル(38%)は、外国から輸入された付加価値、8,860億米ドル(62%)は国内で付与された付加価値である【図表2】。一国の輸出に含まれる外国で付与された付加価値は、外国付加価値(FVA)と称し、バリュー・チェーンの上流部分に相当する。ASEAN地域からの輸出における外国から付与において2000年代の初めまで、長期にわたり最も多かった国は日本であり、次いで米国であった【図表3】。しかしながら、2000年代半ばより、両国からの付与の割合は減少している。他方、ASEAN域内及び中国からの付与の割合が高まっている。

● ASEAN諸国からの輸出品もまた、他国の輸出品の中間生産物として使用され得る。このバリュー・チェーンの下流部分もまた、GVCの重要な指標である。上流部分(FVA)と下流部分の組み合わせ(他国の輸出に統合される国内で付与された付加価値:DVX)は、GVCへの全体的の参加を表す。ASEAN地域の65%という参加率は、世界の地域グループの中でも2番目に高い【図表4】。ASEAN地域からの輸出の3分の2は、GVCと関連がある。

● GVCへの参加はコストを伴う。持続可能な開発へのGVCの貢献は、FVAの割合が大きくGDPへの貢献が少ない場合、また、国が低い付加価値生産活動にはまってしまった場合には、限定的となる可能性がある。

● センターによる研究は、ASEAN地域のGVCに必要な一般的な政策枠組みを提案する。同枠組みは、GVCへの更なるアクセス、GVCへの参加から恩恵を得ること、また、GVCをグレードアップする機会の実現を目指している。さらに、枠組みは、次の要素から成る。
  •  GVCを開発戦略全体及び産業開発政策に組み込む。
  • 促進的な貿易・投資環境を維持し、基礎構造条件を整備することにより、GVCの成長を可能にする。
  •  現地企業の生産力を拡張する。
  •  GVCへの参加に伴うリスクを軽減する。これは、環境上、社会上、またガバナンスの観点からの強固な枠組みを必要とする。
  • 貿易と投資の二つの政策分野及び関係機関における相乗効果を特定し、同二分野についての政策を調整する。
 
[注1] ASEAN (東南アジア諸国連合)は、1967年に結成された地域協力機構。 加盟10カ国(ブルネイ・ダルサラーム、カンボジア、 インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)総人口は6億3千万人を超える。

[注2] 本件は、ASEAN各国のバリュー・チェーンに関するデータを構築・更新し、同データに基き分析論文を作成する、複数年に亘る研究活動の第一段階。本事業では、計16本の証拠に基く、政策志向の論文を作成する。この度発表したASEAN地域全体に関する論文(Paper 1)に加え、ASEAN各国を対象にした論文が各1本(Paper 2~11)、また、電気機器、自動車、衣服及び繊維製品、アグリビジネスと観光の5つの産業分野に焦点を当てた論文が各1本(Paper 12~16)発表される予定。

[注3] Eoraはシドニー大学に本拠地を置く、国際色豊かな研究プロジェクト・チームであり、「多地域インプット・アウトプット データベース」(www.worldmrio.com)を開発した。同データベースは、付加価値貿易の推定値の基になっており、センターによるGVCに関しての研究事業において使用されている。
 

図表1図表1

図表2図表2

図表3図表3

図表4図表4

 


<<国際機関日本アセアンセンター>>
正式名称:東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター
ASEAN10カ国政府と日本政府により1981年に設立。
貿易・投資・観光・人物交流の4分野を中心に、ASEAN商品の輸出促進、日系企業の進出支援、人材育成、日ASEAN間の観光促進等を通して、日本とASEAN諸国との関係促進に貢献する国際機関です。
URL:http://www.asean.or.jp/ja/

<<本リリースについてのお問合せ先>>
国際機関日本アセアンセンター 企画調整官室
東京都港区新橋6-17-19 新御成門ビル1F
Tel:03-5402-8118
Fax:03-5402-8003
E-mail: ajc-pr@asean.or.jp

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


会社概要

URL
http://www.asean.or.jp/ja/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区新橋6-17-19 新御成門ビル1F
電話番号
03-5402-8001
代表者名
藤田正孝
上場
-
資本金
-
設立
-