自己回復性を有する新しい原理に基づくマイクロヒューズを開発【産技助成Vol.51】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
九州工業大学大学院工学研究院
新しい動作原理にもとづいた過電流保護素子によって、繰り返し使用できる
自己回復性マイクロヒューズ(SRF)(注1)を開発。
機械的衝撃に対して動作する機能を生かして防災衝撃用保護素子へも応用可能。
九州工業大学大学院工学研究院
新しい動作原理にもとづいた過電流保護素子によって、繰り返し使用できる
自己回復性マイクロヒューズ(SRF)(注1)を開発。
機械的衝撃に対して動作する機能を生かして防災衝撃用保護素子へも応用可能。
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、九州工業大学大学院工学研究院の准教授、大塚信也氏は、新しい動作原理にもとづいた過電流保護素子によって、繰り返し使用できる自己回復性マイクロヒューズ(SRF)を開発しました。
本SRF素子は、新しい原理に基づきオフ状態からオン状態への自動で回復する機能を有し、繰り返し使える過電流保護素子、あるいは電流遮断スイッチとして利用できます。また、機械的衝撃力や振動力を感知した場合にも動作するため、自動車の衝突時や大地震の際に電流供給を停止できるメカニカルヒューズ(防災衝撃用保護素子)としても活用可能な技術です。
電力ヒューズ、メカニカルヒューズの他、加速度・衝撃センサ、MEMS(注2)等の保護素子としての応用等、用途も多彩であり、絶縁液体として極低温用の冷媒を使用すれば、極低温環境下での過電流保護素子として利用できます。既に液体窒素(沸点-196℃)中での自己復帰機能も確認できており、水素社会や超伝導分野での応用も期待されます。
(注1)SRFはSelf-Recovering micro Fuseの略。SRF素子は、電極とその電極を短絡、開放する導電性粒子、およびその周囲を電気的に絶縁する液体絶縁マトリックスで構成される。導電性粒子は、通常のヒューズエレメントのようにワイヤであってもいいし、最初から粒子形状であってもよい。通常は、電極間を短絡している導電性パスによりオン状態として電流を流している。ここに過電流が流れると、導電性パスの分断・開放によりヒューズの機能をし、過電流が遮断される。この散開した導電性パスの一部あるいは導電性粒子は、電極間の開放電圧により生じる不平等電界により作用する誘電泳動力で電極間に収集され、導電性パスが再構築される。これにより、SRF素子は再びオン状態へ自動的に復帰する。即ち、自己回復性を有する素子として機能する。
(注2)(メムス、Micro Electro Mechanical Systems) は、機械要素部品、センサー、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したデバイス。
1.研究成果概要
本研究では、従来のヒューズやPTC素子に代わり、自己回復性を持ち、繰り返し使用できる保護素子の開発を目的としました。SRF素子は、電極間に散開している導電性粒子に作用する誘電泳動力を自己回復性発現の動作原理としています。構造や材料を種々変えた素子の電気的基礎特性を調べることで、自己回復性の原理を検証するとともに、SRF素子の実用化に向けた本格的検討も実施しました。
メカニカルヒューズとしての動作についても実験的に確認し、機械的な衝撃により電流遮断動作を行える保護素子や衝撃力を評価できる衝撃センサに適用できる可能性も示す等、SRF素子の他の用途展開可能性への提案も行いました。さらに、液体窒素中にSRF素子を浸漬して極低温環境下での基礎特性を確認する実験でも、自己復帰機能を確認しています。
2.競合技術への強み
1)自己回復性:繰り返し使用が可能なだけでなく、宇宙や深海といった人間がアクセスできない場所で、いったんオフ状態となったヒューズをオン状態に自己回復することができます。
2)高い抵抗特性:電極基板や使用粒子の材料と形状、液体絶縁マトリックスを適宜選定することで、μΩオーダ―のオン抵抗と1MΩ以上のオフ抵抗を達成しました。
3)動作条件が任意:液体絶縁マトリックスの材料の物性(特に誘電率や動粘性係数)を適宜選定することで、動作条件を任意に設定できますので、高い汎用性があります。
3.今後の展望
基礎的な検討はほぼ完了しているので、製品化・商品化を指向した実用化研究へステップアップしていきたいと考えています。そのためには、SRF素子のパッケージング化および機械的衝撃が加えられた際、電流供給停止を行うことで大地震や車の衝突等の際に電気的要因による火災防止を行うことなどを目的とした防災衝撃用保護素子としての仕様確立が課題となります。現時点では確実な需要が考えられる自動車メーカーとの共同研究を希望しています。
また、振動を感知するセンサとして利用するための市場調査を行うとともに、水素社会を見据えた極低温液体冷媒環境で動作する新しい保護素子の開発やオン状態での抵抗ゼロの実現(通電状態での損失ゼロ)を可能とするための本素子の超電導化など、新たな応用や活用法に関する検討も行っていく予定です。
4.参考
成果プレスダイジェスト:九州工業大学准教授 大塚 信也氏
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、九州工業大学大学院工学研究院の准教授、大塚信也氏は、新しい動作原理にもとづいた過電流保護素子によって、繰り返し使用できる自己回復性マイクロヒューズ(SRF)を開発しました。
本SRF素子は、新しい原理に基づきオフ状態からオン状態への自動で回復する機能を有し、繰り返し使える過電流保護素子、あるいは電流遮断スイッチとして利用できます。また、機械的衝撃力や振動力を感知した場合にも動作するため、自動車の衝突時や大地震の際に電流供給を停止できるメカニカルヒューズ(防災衝撃用保護素子)としても活用可能な技術です。
電力ヒューズ、メカニカルヒューズの他、加速度・衝撃センサ、MEMS(注2)等の保護素子としての応用等、用途も多彩であり、絶縁液体として極低温用の冷媒を使用すれば、極低温環境下での過電流保護素子として利用できます。既に液体窒素(沸点-196℃)中での自己復帰機能も確認できており、水素社会や超伝導分野での応用も期待されます。
(注1)SRFはSelf-Recovering micro Fuseの略。SRF素子は、電極とその電極を短絡、開放する導電性粒子、およびその周囲を電気的に絶縁する液体絶縁マトリックスで構成される。導電性粒子は、通常のヒューズエレメントのようにワイヤであってもいいし、最初から粒子形状であってもよい。通常は、電極間を短絡している導電性パスによりオン状態として電流を流している。ここに過電流が流れると、導電性パスの分断・開放によりヒューズの機能をし、過電流が遮断される。この散開した導電性パスの一部あるいは導電性粒子は、電極間の開放電圧により生じる不平等電界により作用する誘電泳動力で電極間に収集され、導電性パスが再構築される。これにより、SRF素子は再びオン状態へ自動的に復帰する。即ち、自己回復性を有する素子として機能する。
(注2)(メムス、Micro Electro Mechanical Systems) は、機械要素部品、センサー、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したデバイス。
1.研究成果概要
本研究では、従来のヒューズやPTC素子に代わり、自己回復性を持ち、繰り返し使用できる保護素子の開発を目的としました。SRF素子は、電極間に散開している導電性粒子に作用する誘電泳動力を自己回復性発現の動作原理としています。構造や材料を種々変えた素子の電気的基礎特性を調べることで、自己回復性の原理を検証するとともに、SRF素子の実用化に向けた本格的検討も実施しました。
メカニカルヒューズとしての動作についても実験的に確認し、機械的な衝撃により電流遮断動作を行える保護素子や衝撃力を評価できる衝撃センサに適用できる可能性も示す等、SRF素子の他の用途展開可能性への提案も行いました。さらに、液体窒素中にSRF素子を浸漬して極低温環境下での基礎特性を確認する実験でも、自己復帰機能を確認しています。
2.競合技術への強み
1)自己回復性:繰り返し使用が可能なだけでなく、宇宙や深海といった人間がアクセスできない場所で、いったんオフ状態となったヒューズをオン状態に自己回復することができます。
2)高い抵抗特性:電極基板や使用粒子の材料と形状、液体絶縁マトリックスを適宜選定することで、μΩオーダ―のオン抵抗と1MΩ以上のオフ抵抗を達成しました。
3)動作条件が任意:液体絶縁マトリックスの材料の物性(特に誘電率や動粘性係数)を適宜選定することで、動作条件を任意に設定できますので、高い汎用性があります。
3.今後の展望
基礎的な検討はほぼ完了しているので、製品化・商品化を指向した実用化研究へステップアップしていきたいと考えています。そのためには、SRF素子のパッケージング化および機械的衝撃が加えられた際、電流供給停止を行うことで大地震や車の衝突等の際に電気的要因による火災防止を行うことなどを目的とした防災衝撃用保護素子としての仕様確立が課題となります。現時点では確実な需要が考えられる自動車メーカーとの共同研究を希望しています。
また、振動を感知するセンサとして利用するための市場調査を行うとともに、水素社会を見据えた極低温液体冷媒環境で動作する新しい保護素子の開発やオン状態での抵抗ゼロの実現(通電状態での損失ゼロ)を可能とするための本素子の超電導化など、新たな応用や活用法に関する検討も行っていく予定です。
4.参考
成果プレスダイジェスト:九州工業大学准教授 大塚 信也氏
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