ワークマンでさえも在庫効率は低下/3月期決算アパレルの収益力はコロナ前7掛け
フルカイテン、コロナ決算まとめレポートを公表
小売・卸売企業向けに最少の在庫で売上・粗利・キャッシュフローを最大化させる在庫DXクラウドシステム(SaaS)『FULL KAITEN』を開発・提供するフルカイテン株式会社は、新型コロナウイルス感染拡大の時期と重なった2020年4月~2021年3月の1年間における大手上場アパレル企業7社の決算を調べ、在庫と粗利益(粗利)の観点から各社がいかに在庫を効率よく粗利に換えることができているかを考察するレポートを作成しました。
下記にレポート全文を公開します。PDFファイル版は下記リンクからダウンロードできます。
https://full-kaiten.com/news/report/3252
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なお、当レポートは2月期・5月期・8月期決算の16社の20年3月~21年2月の1年間における決算をまとめた別のレポート「大手アパレルの収益力回復は三極化、コロナ第3波で再降下も」(本年4月21日公表、https://full-kaiten.com/news/report/3108)の続編となります。
- 要約
・1年間の仕入れ(発注)額は5社が前年から減少。21年3月末の在庫高は、4社が前年同期と比較して11.6%~29.6%削減している
・売上増加が利益最大化につながらない今後は、必要最低限の在庫で粗利とキャッシュフローを最大化させるビジネスモデルへの変革が必須となる
- 最高益更新のワークマン含め全7社で在庫効率が低下
大半のアパレル企業が主戦場とする日本国内は縮小市場であり、売上規模ばかり追求すると過度の価格競争に陥る。そうした市場では、売る力を超える量の在庫を持つことは経営リスクとなるため、必要最小限の在庫で売上・粗利・キャッシュフローを最大化させる経営が求められる。そうした観点から本稿ではGMROIを重要な指標とみている。
※GMROI:小売業などの在庫ビジネスにおいて、保有する在庫を用いて効率的に粗利(売上総利益)を上げる力、つまり「どれだけの在庫で、どれだけの粗利を確保したか」を表す指標。(粗利額) ÷ (期中平均在庫高)で求められる
コロナ禍によって2020年4月に最初の緊急事態宣言が出された後、20年秋冬ものを中心に仕入れを抑制する動きが相次ぎ、その流れは21年秋冬ものの仕入れまで変わらなかった。
その結果、2021年3月までの1年間の仕入れ額は、増収となったワークマン、7.5%の減収にとどまったコナカを除く5社が前年を15%~30%ほど下回った。また、3月末の在庫高はワークマンとコナカのみ前年同期を上回った(増加率3.1%、7.4%)。これ以外の5社のうちはるやまホールディングスを除く4社の減少率は11.6%~29.6%に達した。
これらの結果、GMROIは全7社で前年に及ばなかった。需要消失という環境下で在庫コントロールの難しさが浮き彫りになったといえる。
- 収益力はコロナ前の7掛け
19年4月~20年3月を1とした指数で推移を表しており、例えば0.8であれば前年同期比20%低下を意味する。
全体的に、最初の緊急事態宣言の発令があった4~6月の落ち込みが最も大きい。その後は各社とも仕入れ抑制による在庫削減の効果が出てきてシーズンが進むにつれ数値は向上している(コロナ前との差は縮まっている)。
2021年3月までの1年間通期でコナカとワークマンは前年比90%台まで回復したが、他の5社は70%台に沈むという二極化が見て取れる。
在庫の減少自体は、短期的にはキャッシュ(手もと現金)が増えるという利点がある。その半面、安易な在庫削減は売上の減少を招き、中長期でみると事業規模が縮小して事業の成長はままならない。場合によってはキャッシュフロー(資金繰り)に支障をきたしてしまう。
つまり、状況に応じて必要な在庫高は増減するのだ。特に3月末の在庫を大きく減らした企業にとっては、今期どのような反転攻勢に出るかが今後の成長戦略を左右するのではないか。
- まとめ:仕入れ抑制は一旦底打ち。価格競争の回避が課題
ワークマンとコナカは21年3月末時点の在庫高が前年同期より増加したが、20年12月末時点と比べて増加率は大きく縮小している。
また、ワールド、青山商事、AOKIホールディングス、ユナイテッドアローズ、はるやまホールディングスの5社は21年3月末時点の在庫高が前年同期から減少した。そしてAOKIホールディングスを除く4社は3月末時点の減少率が12月末時点のそれよりも大きくなっている。
つまり、21年3月末の在庫削減の度合いの方が、12月末よりも大きいということだ。
値下げをいとわず在庫の現金化を優先したことが窺える。
アパレル産業ではこれまで、欠品を過度に恐れ「売上を失うより在庫を持つ方がよい」という考え方が主流だったために在庫過多が解決されてこなかった。その背景には、プロパー消化率が高かった1990年代の成功体験があるのかもしれない。
しかしコロナ前から国内市場は変化しており、90年代のような高いプロパー消化率は見る影もない。そしてコロナで需要が消失した影響で、仕入れを大きく抑制した2020年4月~21年3月は、限られた商品在庫で売上を立てていかなければならない初めての一年となった。
コロナ禍をめぐる状況は依然として不透明なうえ、日本は2025年以降、毎年100万人前後の人口が減っていく。しかも高齢化も進み、人口の3分の1が65歳以上の高齢者になる時代がすぐそこまできているため、社会保障関連の支出が増えていく。これらを考慮すると個人消費の減少に伴う需要消失が“新常態”になる蓋然性が高く、縮小する市場で売上規模ばかり追うと、規模が大きい事業者が圧倒的に有利となる価格競争が過度に進むことは必至だ。
従来と異なり、こうした成熟経済は、売上高の増加が利益の増加につながらない環境に変化したということであり、必要最小限の在庫によって粗利とキャッシュフローを最大化させるビジネスモデルへの変革を図ることが求められているといえる。
- 本レポートのPDF版ダウンロードはこちら → https://full-kaiten.com/news/report/3252
※本調査は、対象となった上場企業7社の経営成績や財政状態の優劣を評価するものではありません。
【本レポートの引用について】本レポートの内容は自由に引用していただけますが、その際は下記へご連絡ください。
フルカイテン株式会社
広報チーム 南昇平
電話: 06-6131-9388
Eメール: info@full-kaiten.com
【会社概要】
社名: フルカイテン株式会社
URL: https://full-kaiten.com
事業内容: 在庫問題を解決するクラウドサービスの開発
本社: 大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2階B
設立: 2012年5月7日
代表者: 代表取締役 瀬川直寛
従業員数: 21名
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