ポーラ化成工業の大石研究員が日本顔学会にて輿水賞受賞
日常生活環境を模した8K画像で顔の魅力に影響する立体形状を研究
受賞者
大石 貴矢 (おおいし たかや)
ポーラ化成工業 フロンティアリサーチセンター 副主任研究員
2014年からポーラ化成工業にて皮膚科学研究に従事。現在は、基盤研究を担うフロンティアリサーチセンターにおいて、感性分野を中心とする研究に従事。2023年よりB.Aリサーチセンター長を兼任。特技は書道。
受賞した研究発表
「顔画像の解像度間で生じる魅力評定値の差に関連する顔の三次元特徴」 (口頭発表)
大石貴矢1, 岡部伊織1, 楊暁光1, 濵中祥弘1, 川畑秀明2, 水越興治1
1. ポーラ化成工業 フロンティアリサーチセンター 2. 慶應義塾大学
顔の認知研究では一般的に、ディスプレイに表示した顔画像を試験に用います。顔の魅力を感じる認知機構の理解を深めるためには、なるべく日常生活で本当の顔を見る時に近い条件を再現することが理想です。しかし画像にすることにより、本来は立体である顔は平面化されてしまいます。また、従来用いてきた顔画像の解像度(補足資料2)も、ヒトの網膜が捉えることのできる解像度の1/10程度(以下、従来解像度)と、リアルに近いとは言えません。そこで、ヒトの眼に匹敵する高い解像度を持つ8K画像を用いて、顔を見る側の魅力の感じ方から、顔の魅力認知の理解を深める研究に着手しました。
まず顔の魅力印象を調べたところ、同一の顔の間でも、8K画像では従来解像度の画像より魅力が増すことが明らかとなりました。したがって8K画像には、従来解像度の画像では再現できない、魅力に関する特徴が含まれると考えられました。次に、顔の立体形状データと、従来解像度から8Kにしたときの魅力印象の変化との対応付けを行いました。その結果、8K画像には額や鼻、頬部の起伏が反映されており、これが8K画像での魅力印象の上昇に影響していることが示されました(図1)。つまり、8K画像は平面にもかかわらず実際の顔を見たときに感じるリアルな立体形状が反映されやすく、それが魅力印象を高めた要因の一つになっていたのです。魅力印象に寄与しやすい立体形状の特徴も明らかにすることができました。
大石研究員のコメント
8K画像を用いることで、日常生活でのリアルなシーンに近い環境を再現した試験を、より簡便に行えるようになりました。これにより顔の知覚認知に関する理解が進み、さらに興味深い知見が得られると確信していますので、今後の研究発表にもぜひご期待ください。
【補足資料1】 第28回日本顔学会大会について
第28回日本顔学会大会は『人々のための顔 〜顔の技術と社会受容性』をテーマとして、一般講演(口頭・ポスター発表)、特別講演、実演展示、シンポジウムにより、2日間にわたって構成されました。
輿水賞は、日本顔学会大会(フォーラム顔学)における研究発表の中から、その着想と構想において顔学構築にインパクトを齎す期待の研究を選定し、これに貢献した発表者の方々の功績を顕彰するものです。
第28回日本顔学会大会Webサイトでの受賞者発表: https://www2.jface.jp/forum2023/
【補足資料2】 「解像度」について
解像度とは、画像やディスプレイを表現する格子の細かさを示す尺度で、一般的にディスプレイ上に表示された画像ではピクセル数によって表現されます。中でも、8K画像は非常に高い解像度で、通常、7,680×4,320ピクセル(29インチディスプレイで換算すると304 ppi(※1))で提供されます。
この高解像度によりディテールまで精細かつ鮮明な映像が実現され、映画、テレビ、ゲーム、デザイン、医療画像などの分野で重要な役割を果たしています。また、網膜の解像度は、300 ppiであることが知られており、8K画像は生物学的解像度に匹敵する高いピクセル密度を持つため、人間の網膜による知覚能力に近い鮮明な画像を提供できます。このような高解像度は、視覚的な現実感を向上させ、多岐にわたる応用分野で卓越した視覚体験をもたらすとされています。
※1 ピクセル・パー・インチ
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像