日立、現場で自ら学びながら動作を最適化し、複雑作業を自動化するフィジカルAI技術を開発
製造・設備保守・ロジスティクスなど幅広い現場に導入可能、従来困難だった作業を現場適用レベルの速度・品質で実現

株式会社日立製作所(以下、日立)は、One Hitachiの体制のもと、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi」(以下、HMAX)をグローバルに展開し、人・AI・ロボットが共に進化する産業現場の実現・価値最大化と社会インフラの変革をめざしています。その一環として、現場で自律的に学習し、動作を最適化しながら作業の速度・品質を向上するフィジカルAI技術を開発しました。
本技術が搭載されたロボットは、現場で得られる動作データや作業ノウハウを継続的に学習することで、現場環境や作業内容の変化に合わせて進化を続けます。さらに、視覚や力触覚などのセンサー情報をもとに、作業対象物と接触する際の力の強さや向きをきめ細かく制御して動作することで、ワイヤーハーネスの組付けのような柔軟物を繊細に扱う複雑作業まで自動化します。製造・設備保守・ロジスティクスなど幅広い産業現場に導入でき、これまでの技術では自動化が困難だった作業を、現場適用レベルの速度・品質で対応します。
なお本技術は、Lumada 3.0を体現するHMAXにおいて、日立が掲げる「IWIM」*1を構成するモデルの一つです。今後も、現場で培ったドメインナレッジをAIに組み込み、設計・実装・運用改善まで一貫して展開できる日立のフィジカルAIの強みを活かし、お客さまの産業現場の生産性向上と事業成長にグローバルな規模で貢献します。
*1 日立が2025年11月に発表したフィジカルAIやHMAXの構築を支えるモデル。日立が蓄積してきた社会インフラ領域のナレッジ/手法に、AI技術を統合することで、フィジカル世界の現象を正確に理解/推論/応答できるようにするもの。これにより、現象予測/計画・制御など現場で連続的・自律的に進化できるAI基盤を構築します(自律進化型製造オートメーションなど)
背景および課題
産業現場では、深刻化する労働力不足に加え、熟練技能者の高齢化による技能継承が大きな課題となっています。特に多様な製品を扱う現場では、工程ごとの作業が異なるだけでなく、繊細な力加減や動きが求められる場面も少なくありません。そのため、依然として熟練技能者をはじめとした人手に頼らざるを得ない状況が続いています。
こうした課題に対して日立は、現場作業の自動化につながるフィジカルAI技術の研究・開発を進めてきました。単純作業の自動化は進展した一方で、設備・部品・手順が異なる多様な現場では、作業環境や対象物の変化のたびに設備停止を伴うデータ収集や動作調整が必要でした。その結果、汎用性・柔軟性の確保が難しく、変更の多い工程や複雑で繊細な作業の自動化には課題が残っていました。
課題を解決するために開発した技術の特長
そこで日立は、新しいフィジカルAI技術を以下の通り開発しました。
1.現場で進化し続ける“自ら学び最適化する”AI
開発したAIは、現場にすぐ導入できるだけでなく、導入後も現場で得られる作業データや熟練作業者のノウハウをAIが自動的に取り込み、継続的に学習*2します。これにより、AIが反復訓練をするように自身を鍛え、作業の速度や品質を向上させます。また、現場ごとに異なる作業環境や設備構成、工程の変更や新たな作業パターンに対しても、現場データの蓄積を通じて柔軟に対応し、最適な動作へと進化を続けます。例えば、成功した作業動作データのみを自ら収集・追加学習し、動作の精度を高めます。これにより、設備の入れ替えや製品仕様の変更があった場合でも、追加の大規模な再学習やシステム改修を必要とせず、現場で得られる最新の情報を活用して自律的に学習し、最適化が可能です。
*2 本研究の一部は、JST・ムーンショット型研究開発事業 (グラント番号JPMJMS2031) の支援を受けて実施しています
2. 多様な現場や工程にすばやく対応できる日立独自の100Hz高速AIモデル
従来のロボットは搭載AIによる作業動作指示の速度が毎秒10回程度と限られていたため、柔らかい部品やケーブルなどを扱う繊細な作業には十分対応できませんでした。日立は、早稲田大学と共同研究で開発した「深層予測学習」*3を基盤に、毎秒100回の高速な指示が可能なAIモデルを開発しました。これは人間の無意識的・反射的な筋肉の調整に相当する速さであり、触覚センサーなどの情報を瞬時に処理できるため、人間と同等の速度と精度で複雑な作業を実現します。さらに、開発したAIモデルは小型・省電力設計*4で、少ないデータでも効率よく学習が可能なため、多様なロボットや現場への迅速な適用が可能です。
*3 AIが先の状況を予測し、現実とのズレを最小限に抑えつつ、自律的に行動を決定・実行する深層学習技術
*4 大規模言語モデルの場合は数十億~数百億パラメータに対して、数十万パラメータ。小型モデルは学習・推論時の計算処理が少ないため、大規模モデルに相対して電力消費量が少ない
3.人のような身体の動かし方を自律的に可能にする“全身協調動作学習”
人は幼少期から、自身の身体の構造や動かしやすさ(身体性)を体得しています。そのため作業内容に応じて最も動きやすい位置・姿勢を無意識に選び、全身を効率よく動かしながら作業を行っています。日立はこの仕組みに着想を得て、腕や手の動きだけでなく、上半身・下半身を含む全身の協調動作を学習するアルゴリズムを開発しました。これによりロボットは、対象物に対して作業しやすい位置・姿勢を自律的に取りながら動作できるため、作業品質のばらつきや手戻りを抑え、作業者の負担軽減に貢献します。
今後の展望
日立は、グループ内外のさまざまな現場で実証を重ねながら、本技術をHMAXの中核技術として展開していきます。取り組みの一環として、お客さまやパートナーとの協創を通じて、フィジカルAIで現場の課題解決を加速する「フィジカルAI体験スタジオ」を、2026年4月1日、日立の協創施設「Lumada Innovation Hub Tokyo」内に開設します*5。日立が持つ最新のフィジカルAI技術・知見にさらなる興味関心・理解を持っていただくべく、本技術を搭載したロボットを常設します。
*5 日立ニュースリリース「日立、フィジカルAIの社会実装をお客さまと協創する「フィジカルAI体験スタジオ」を開設」
商標注記
記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.co.jpをご覧ください。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所 研究開発グループ
問い合わせフォーム: https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/hqrd/news/jp/form.jsp
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