ANRI給付型奨学金「The ANRI Fellowship」 7期生として15名を採択
日本の科学技術の発展に寄与するため、世界最先端の基礎研究に取り組む学生を対象とした給付型奨学金を支給
独立系ベンチャーキャピタルANRI(東京都港区:代表パートナー 佐俣アンリ、以下 ANRI)は、日本の基礎科学研究への支援として、数学や物理学、生物学、化学など実用化までに時間がかかる基礎研究の分野に取り組む学生を対象とした給付型奨学金プログラム「The ANRI Fellowship」 を実施しており、この度、第7期生として、日本や世界で研究に取り組む学生15名を採択したことをお知らせいたします。
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ANRIでは、2019年より日本の科学技術の発展に寄与することを目的とし、基礎科学研究に取り組む学生への給付型奨学金プログラムを運営してまいりました。今回もたくさんのご応募をいただき、心より感謝申し上げます。
ANRIは、創業当時からの強みであるインターネット領域に加え、ディープテックやライフサイエンスなどの幅広いテクノロジー領域の研究開発型スタートアップへの投資をしており、日本の研究技術を世の中へ創出する支援を行っております。一方で、その世の中に出る研究技術は、それまで多くの研究者が携わった基礎研究の基盤があるからこそと考えております。そのため、ANRIでは基礎科学研究に取り組む学生への給付型奨学金プログラムの運営を行っております。
現在、1期生〜7期生まで総勢74名の研究者がThe ANRI Fellowshipに採択され、ANRIが得意とするコミュニティの輪を広げる取り組みも行っております。各期での研究発表会やSlackによるコミュニティ運営、また、分野も年齢も異なる研究者が集まるコミュニティイベントなども開催しています。
今後もより研究者同士の横や斜めの接点を持つことができるような運営を心がけると共に、The ANRI Fellowshipを通じて、日本の科学技術の発展に寄与することを目指してまいります。
■「The ANRI Fellowship」について
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給付金額 |
1人当たり50万円 |
募集対象 |
数学や物理学、生物学、化学などの分野において優秀な成績を収めた学生 |
選考方法 |
書類選考後、面接を予定 |
■ The ANRI Fellowship 第7期生の紹介(順不同)
岡村太路 名古屋大学 環境学研究科
イルカ・クジラを中心に泳ぐ動物に興味を持って、日々楽しく研究しています。この度は採択していただき光栄です。ANRI奨学金との出会いから、今後の研究活動を加速させるとともに、その幅をさらに広げていきたいです。
長沼大樹 モントリオール大学 コンピュータ科学専攻
この度、ANRI基礎科学スカラーシップに採択いただき、大変光栄に思います。
私の研究は、深層学習の堅牢性と信頼性を向上させるための理論的基盤の構築に焦点を当てています。特に、環境に依存しない不変な特徴量の抽出を通じて、学習アルゴリズムの一般化性能を高めることを目指しています。現在の深層ニューラルネットワークは、学習データと異なる分布(Out-of-Distribution, OOD)のデータに対して脆弱であり、不確実性の適切な推定が困難であるという課題を抱えています。私は、これらの問題がモデルの情報幾何学的な解釈と密接に関連していることを示し、学習ダイナミクスの理論的解析を通じて、堅牢かつ効率的な学習手法の確立を目指しています。
AIの信頼性向上は、医療や自動運転など社会的インパクトの大きい応用分野に直結する重要な課題です。私の研究が、深層学習の理論的理解を深化させるとともに、実世界での安全なAI活用の基盤を築く一助となることを願い、今後も研究に邁進してまいります。
惠谷隼 東京大学 医学系研究科脳神経医学専攻
「遺伝か、環境か」――これは、Robert Kolker著『Hidden Valley Road』(邦題:統合失調症の一族)の副題に掲げられた言葉です。統合失調症の動物モデル研究は、妄想・幻覚といった主観的な症状の再現が難しく、発症要因が複雑であるため、未解決の課題が多く残されています。私は、新たに作出した遺伝要因と環境要因を併せ持つマウスモデルを用い、統合失調症様の質的な異常行動と、その神経基盤の解明に取り組んでいます。本研究では、主観的体験を測定可能な指標へと落とし込み、行動表現と脳構造・神経回路の変化を詳細に解析することを目指しています。
このたび、ANRI基礎科学スカラーシップ第7期生としてご支援を賜ることとなり、心より感謝申し上げます。本研究費を有効に活用し、統合失調症のメカニズム解明に貢献できるよう尽力いたします。
染谷大河 東京大学大学院 総合文化研究科言語情報科学専攻
この度はANRI基礎科学スカラーシップ7期生として採択いただき,大変光栄に存じます.
私は大規模言語モデル(LLM)の言語理解能力に関する基礎研究を行っています.特に,言語モデルが文法をどの程度理解しているのか,またLLMの学習限界や学習バイアスを解明することを目指して研究をしています.
今回のご支援を活用して,より一層研究を加速していけること,また他分野の研究を行う同期採択者などとの交流を通じて、新たな視点を得られることを楽しみにしています.
このご支援への感謝を着実な研究成果という形で還元できるよう,より一層研究に邁進して参ります
安枝真生 イェール大学
この度は奨学生に採用していただき誠にありがとうございます。うつ病や統合失調症などの精神疾患には、いまだ確立された治療法が存在していません。こうした疾患に対して有効な治療法を見いだすには、神経科学の根底をなす「人がどのように学習を行うのか」という神経基盤の解明が不可欠だと考えています。現在、大学院では、ニューロンの集合体がいかに意識を形づくり、意思決定へと導いているのかを解き明かすことを目標に、統計力学と機械学習を組み合わせて研究に取り組んでいます。基礎研究は、社会とのつながりが見えにくいという観点から、日陰におかれることも少なくありませんが、基礎研究なくして研究の応用、社会実装はあり得ません。「知能とは何か」という大きな問いの解明に少しでも寄与すべく、このような支援をいただいたことに感謝し、今後も研究に邁進してまいります。
溝端秀彬 東京大学大学院 農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻
ミトコンドリアや葉緑体の例に代表されるように、細胞内共生は宿主細胞の能力を飛躍的にパワーアップさせることがあります。地球環境に存在する多様な細胞内共生現象の分子機構を理解することは、生命の進化に関する洞察を得られるだけでなく、応用技術を通じて新たな能力を持った生物の創出に繋がる可能性があります。私は、ユニークな2つの細胞内共生能力を持ったウミウシをモデルに、多様な細胞内共生の背後に潜む普遍的機構を理解することを目指しています。
この度ANRI基礎科学スカラーシップにご採択いただき、大変光栄に存じます。研究をより高い水準に押し上げるため、いただいたご支援を有効に活用させていただきます。また、多様なバックグラウンドを持つ奨学生の方々との交流を通じて日々刺激を受けながら、より広い視野で未来を切り拓いていきたいと考えております。
上田唯花 大阪大学大学院 基礎工学研究科
生細胞は内外環境の変化を感知し内部に伝達することで,適応的に自身の機能や挙動を決定する興味深い性質を有しています.例えば周囲の硬さに応じ,細胞は増殖・分化・アポトーシス等の基本状態を決定することが知られています.これは増殖能を有する細胞種に共通する普遍性の高い性質であり,本適応機能の低下は慢性炎症の誘発要因になることから医学的にも重要なテーマです.特に力学的な細胞適応性のメカニズムを解明することをモチベーションに,メカノバイオロジー分野にて生物・物理・工学に跨る研究に取り組んでいます.この度はANRI基礎科学スカラーシップに採択頂き感謝申し上げます.面白い基礎研究成果を生み出すことで,社会に長く大きなインパクトを与える貢献ができるよう今後より一層励んで参ります.
水野皓介 大阪大学蛋白質研究所/金沢大学新学術創成研究科
私は、細胞同士が自律的かつ協調的にコミュニケーションすることで生み出される機能や、細胞集団の形態・動態に関心を持ち、研究を行っています。生体外で培養可能な哺乳類細胞を改変し、人工的に細胞間相互作用を構築・制御することで、特定の仕組みを再現するために必要な因子や環境要因の解明を目指しています。そのために、合成生物学的手法(ボトムアップアプローチ)を活用しています。この手法の魅力は、異なる動物種やモデルから得られた知見を統合し、生命現象の本質を再構成・検証できる点にあります。単純な仕組みでも実際に再構成してみると、予想外の結果が得られることが多く、そこから思いがけない発見が生まれることに大きな喜びを感じています!
ANRIの方々や素晴らしい奨学生の皆様との出会いに感謝し、交流を楽しみながら、研究に一層励んでいきたいと思います。
葛野諒 東北大学大学院 工学研究科航空宇宙工学専攻
私は宇宙空間で用いられる柔軟構造物の挙動解析理論の研究に取り組んでいます。今日、宇宙空間は新たなフロンティアとして注目されており、そのミッション内容も高度化し、洗練されてきています。膜やロープのような柔軟構造物は少質量で展開し、大面積を稼げるため、多様な宇宙ミッションを実現する大きな潜在可能性を秘めています。一方で、柔軟構造物はミッション中の姿勢変更や熱、さらには宇宙ゴミ衝突などが原因で容易に振動する可能性があり、ミッション成功に大きな影響を及ぼします。打上に多額の費用を要し、実証実験が難しい宇宙機は、事前設計の段階で高精度な数値シミュレーションが求められます。私の研究では柔軟宇宙構造物の高精度な数値シミュレーションを開発し、宇宙機の可能性を拡げることを目指しています。
この度はANRI奨学金へ採択いただき光栄に思います。今回の支援を基に自身の研究と知的好奇心をさらに深め、科学技術の発展に少しでも貢献できるよう邁進します。
直川史寛 東京大学 理学系研究科物理学専攻
私は宇宙論と呼ばれる分野を中心に、広く宇宙物理学について研究しています。宇宙論とは、物理学の基礎理論や天文学の観測データをフル活用し「宇宙はどうやって始まったのか?今宇宙はどのような状態にあり、なぜそうなっているのか?」などの根源的な疑問に迫る分野です。私自身も、理論的な計算と観測的な研究の両面から、暗黒物質や暗黒エネルギーと呼ばれる正体不明な宇宙の構成要素や、その候補となる未知の素粒子に迫る研究等を行っています。一方、現在の研究対象と直接結びつくかどうかに関わらず、幅広い分野に興味をもち、知的好奇心に正直に生きるようにもしています。宇宙やその研究の魅力を広く伝える活動も積極的に行っています。これらは基礎科学に携わる者として重要な姿勢だと思います。ANRI基礎科学スカラーシップでは、自由度高く使用可能な研究費に加え、同世代の多様な分野の研究者との交流の機会をご提供いただき、大変ありがたく思います。
中島梨夏 関西学院大学大学院 理工学研究科生命医化学専攻
この度は、ANRI基礎科学スカラーシップ7期生として採択いただき、大変光栄に思います。
私は、がんの発症メカニズムに基づいて、ほぼ全てのがんに共通する異常に着目し、がん細胞特異的にアプローチすることを目標に、分子生物学的手法で研究を行っています。抗がん剤の副作用は、がん細胞のみならず、正常な細胞にもダメージを与えてしまうことにより生じます。従って、副作用を抑えるためには、いかにがん細胞特異的にダメージを与えるかが重要です。細胞には、二大がん抑制因子を中心としたがん化抑制機構が備わっています。そのため本来細胞にがん性変化が生じると、がん化抑制機構が働き、細胞死を誘導することでがん細胞が生じることを防いでいます。しかしがん細胞では、二大がん抑制因子による両経路が傷害されているため、がん細胞は死なずに生き延びています。そこで私は、がん細胞にのみ存在する特異な転写因子の活性に着目し、がん細胞のみに細胞死を誘導することを試みています。
ご支援いただけることに感謝し、研究をより発展させていきたいと思います。改めまして、心より感謝申し上げます。また、様々な分野の方々が集まる本コミュニティはとても魅力的で、今後の交流会等も楽しみにしております。
長谷川愛美 東京大学工学部化学生命工学科
癌細胞は、ワーブルグ効果として知られる代謝様式の変容によって、細胞外に排出された乳酸とプロトンの蓄積による酸性環境に晒されることが知られています。わたしは、癌細胞がこの過酷な酸性環境中でどのような生存戦略をとっているかについて、マルチオミクス解析などを用いて解明しようとしています。これまで、過酷な低pH環境で引き起こされる細胞死が、実際の腫瘍の低pH環境では回避されることを見出しています。
今回、ANRI奨学金に採択いただき、大変嬉しく思います。学部生が応募可能な研究費やトラベルグラントは限られており、このような貴重な機会をいただけたことを光栄に思います。本奨学金を活用し、国際学会に参加して多くのがん研究者と交流し、最先端の知見を深める予定です。また、他のANRI奨学生との交流を通じて、異なる研究分野に触れ、新たな刺激を受けることを楽しみにしています。今後も一歩一歩、研究を進めてまいります。
清水萌々子 東京農工大学大学院
この度は、奨学生として採用いただきありがとうございます。
私は放電工学と流体力学を融合させた、電気流体力学という分野で研究をしています。放電が生じると、プラズマが生成されます。このプラズマが電場によって加速され、空気とぶつかることで、体積力が生じます。これによって、結果的に流れが誘起されます。
私は特にこの流れを使った、機械的可動部のない飛行機を実現させることが夢です。
しかし、放電にはまだまだ分からないことが多く、今は放電現象そのものに着目し、プラズマの動きに寄り添って、どのように強い流れが生じるか、解明することを目指して、研究をしています。奨学金は実験する際のシステムや学会への参加費に使用させていただきます。
このような機会をいただけたことに感謝申し上げます。
片山涼香 早稲田大学 先進理工学研究科 / 東京都医学総合研究所
古生代に共通祖先生物から分岐した哺乳類と鳥類は、肥大した大脳を持ち、高度な情報処理を行うことが知られています。しかし、大脳の内部構造は大きく異なり、哺乳類は層構造、鳥類は核構造の脳領域を特に発達させています。
共通祖先を持つ哺乳類と鳥類がどのようにして異なる脳構造と、複雑な神経回路を獲得したのか。その進化の過程はほとんど明らかになっていません。私は、鳥類の持つ核構造の大脳が発生期にどのように形成され、神経回路を構築していくのかを解析することで、この脳進化のメカニズムを解明していきたいと考えています。
この度はANRI基礎科学スカラーシップに採択していただき、大変光栄に思います。今回のご支援をもとに、鳥類の脳形成、そして脳の進化を司る驚くべきメカニズムを発見、発表していけるよう、より一層研究に励んでいきます。研究への熱意あふれる奨学生の皆様、ANRIスタッフの皆様と交流できることをとても楽しみにしております!
川本亮 Johns Hopkins University School of Medicine
この度ANRI奨学金に採択いただき大変嬉しく思います。「痒み(かゆみ)」は1660年、ドイツの科学者によって「掻きたいという欲望を生じる不快な感覚」として定義されました。このように遥か昔から研究対象となり、我々が日々直面する身近な悩みであるにも関わらず、我々が痒みを感じる仕組みの全体像はほとんど解明されていません。特に、痒みの大部分を占めるヒスタミン非依存性の痒みと呼ばれる経路については未知の部分が多く、ステロイドのようないわゆる痒み止めが著効しないため、臨床現場でも患者さんにとって大きな苦痛となっています。私は現在、これらの経路に関与する受容体群に着目し、それらが痒みにどう寄与するか調べることで新たな創薬ターゲットの発見を目指しています。将来的には(生理的に必要なものは除いて)痒みによる不快のない、みんなが今より少しだけ幸せになれる世界を実現できればと思っています。
■「The ANRI Fellowship」第8期生の募集について
2025年夏頃にThe ANRI Fellowshipのサイトおよび、ANRI公式メールマガジンにてお知らせいたします。通知をご希望の方は、メールマガジンをご登録ください。
■ベンチャーキャピタルANRIについて
ANRIは2012年のANRI1号ファンド設立より、一貫して創業初期(シード期)に特化してスタートアップへの投資を実行、現在5つのフラッグシップファンドと脱炭素問題に特化したANRI GREENファンドなどを運営し、累計約780億円を運用しております。
「未来を創ろう、圧倒的な未来を」というビジョンのもと、創業当時からの強みであるインターネット領域に加え、ディープテックやライフサイエンスなど幅広いテクノロジー領域への大学発研究開発型スタートアップへの支援も注力しております。また、創業期の出資先を支援するため、六本木ヒルズに1200平米のインキュベーションオフィスを運営し、より起業家と近い環境で、起業の準備段階からサポートできる体制を整えております。
■会社概要
社名:ANRI株式会社
代表者:代表パートナー 佐俣アンリ
所在地:東京都港区六本木6丁目10−1六本木ヒルズ森タワー15F CIRCLE by ANRI
企業HP:https://anri.vc
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