【アンケート】養育費が1万円?ひとり親家庭の実情を調査
「弁護士も手に負えない」「これ以上言うと命の危険」
ひとり親家庭のためのフードバンク「グッドごはん」をする運営する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、主に離婚によるひとり親家庭の養育費受け取りの実情を把握するためのアンケート調査を行いました。その結果、さまざまな理由により、多くのひとり親家庭が養育費をきちんと受け取ることができず、また、その状況を変えることが難しい現実が浮き彫りになりました。
2019年国民生活基礎調査によると、ひとり親家庭の48.3%(新基準)が相対的貧困の状態といわれています。ひとり親が経済的に困窮しがちな要因として、子どもがいる女性の非正規雇用の多さや就労の難しさによる低収入があげられますが、ひとり親家庭は公的な手当てや元配偶者の養育費など一定の収入があるという認識を持つ人も少なからずいるのではないでしょうか。
しかし、「全国ひとり親世帯等調査(平成28年厚生労働省)」によると、養育費を継続して受け取っている母子世帯は24%ほどという実態が明らかになっています。
ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を実施する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは今回、主に離婚によるひとり親家庭の「養育費」の実情を把握するため、利用者を対象に調査を実施しました。
【ひとり親家庭を対象とした養育費に関するアンケートについて】
アンケートに回答したのは、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営する、ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を利用する、「ひとり親家庭等医療費受給者証※」を持つ関東1都3県および大阪のひとり親です。
※ひとり親家庭等医療費受給者証:18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証
【調査結果】
①さまざまな事情でひとり親家庭へ
② 扶養する子どもの人数
※グッドごはんの利用条件のひとつは、18歳未満の子どもを養育していることですが、ここでは養育費の支払い対象となる20歳未満の子どもについて聞いています。
扶養している子どもの人数は、東京・大阪ともに1人が約半数と最も多く、若干大阪に多子世帯が多い傾向が見えました。
③ 養育費の取り決めがない家庭が多い
④ 必要な養育費用よりも低額にとどまる取り決め金額
最高裁判所のWEBサイトに掲載されている「養育費算定表」によると、14歳以下の子ども一人/権利者の年収200万円/義務者の年収500万円の場合、養育費の目安は4~6万円です。本調査では、ひとり親の元パートナーの年収は調査していませんが、第3者を介さず本人同士の口約束などで取り決めた場合などは、相場よりも低額になってしまう可能性が考えられます。
⑤ 養育費を受け取れていない家庭は7割以上
実際の受け取り状況について調査したところ、「毎月受け取っている」と回答した方は、東京19%、大阪13%で、「今までに何度か貰えないことがあった」「毎月貰っているが減額されることがある」と合わせると、前述の全国ひとり親世帯等調査の「養育費を継続して受け取っている母子世帯は24%」と近い結果となりました。「一回も貰えていない」と「数回貰った(あるいは貰ったことはあるが現在は貰えていない)」と回答したひとり親は、合わせて東京70%、大阪74%にものぼりました。実に7割以上のひとり親家庭が養育費を受け取ることができていないのです。
⑥ 実際の受け取り金額は、取り決めの金額を下回っている
養育費減少の理由については、
働けない事情がある場合を除き、男女を問わずひとり親は子どもを育てながら働いているため、長時間労働ができません。
インターネットによる子育て費用に関する調査(平成21年度 内閣府)によると、小学生ひとりの平均の年間子育て費用額(子どものための預貯金含む)は115万円で、一か月あたり9.6万円です。仮に年収が同じ親同士で折半したとしても、月5万円の子育て費用が必要と考えられます。
これらの費用が無いと、中高生の部活、あるいは塾や習い事ができないなど、子どもがやりたいことや学びたいことを諦めざるを得なく、将来の選択肢が限られてしまうことにも繋がります。
⑦ 変えることの難しい現実
養育費をもらえることができていない状況を改善することはできるのか。質問5で、養育費を減額されたことがある/貰えなかったことがあると回答した人に聞いたところ、状況の改善のために働きかけたことがあると回答した対象者は3割程度でした。
働きかけた人が無い、と回答した人の理由としては、
また、働きかけたことがあると回答した人でも、
公正証書や調停証書には養育費の支払いの強制執行力があるとされていますが、裁判所に強制執行を認めてもらうためにはいくつかの条件があり、養育費の権利者がこれらを用意しなければなりません。
① 債務名義(公正証書等)と送達証明書がある
② 相手の現住所を把握している
③ 相手の財産を把握している
たとえば「離婚してから連絡も取っていない」「ハラスメントを受けていたので声も聴きたくない」という状況で、相手の所在地や銀行口座を確認し、条件がそろった後も
・申立のための書類を準備
・地方裁判所(元配偶者の居住地)に申し立てる
といった手続きを自分自身でまたは弁護士費用を負担して行う必要があります。カツカツの収入で、毎日休む間もなく働いている人がこれらのことを行うのは、経済的にも心理的にも大きな負担を伴います。
【養育費は子どものもの】
今回の結果から、当団体の食品支援を利用する、死別を除いたひとり親家庭のうち、養育費を実際に受け取ることのできていないひとり親家庭は7割以上と非常に多く、受け取ることができていても不十分な金額であることが多いことがわかりました。
養育費は、シングルマザーを例にとると、元妻が「取る」、夫は「取られる」といった風に語られることがあります。しかし、養育費の負担は親の義務であり、離婚により親権がなくなっても親であることは変わりありません。なにより養育費は、監護している親のものではなく「子ども本人のもの」であり、子どもの権利です。
グッドネーバーズ・ジャパンは2017年より国内の貧困対策としてひとり親家庭の支援事業を行っていますが、ひとり親の生活・経済状況に関するアンケートを行ってきた中で、平均的なパート収入プラス公的手当で暮らすひとり親とその子ども達が、必要なものを買い進学をあきらめないためには「養育費のありなし」と「家賃」が大きく影響すると考えます。
世の中には、一生懸命働いて子が20歳になるまで養育費を支払う親ももちろんいます。2021年「親ガチャ」という言葉が世間をにぎわせましたが、養育費を貰えなかったために子どもの人生の選択肢が狭まってしまうことも考えられます。何の責任もない子ども達の将来と、彼らが作る未来のために、すべての子どもの養育費は確保されるべきです。
養育費の確保については、「両親の話し合い」が成り立たない場合でも養育費を受け取ることができるよう制度を考える必要があります。例えば勤め先の給与から天引きする、元配偶者が行方不明な場合に裁判所や自治体が連携して居場所を探す、マイナンバー制度を活用するなど、すべての子どもが日本の未来の大切な財産であることを考えればできることはあるのではないでしょうか。
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、主に首都圏および大阪近郊のひとり親家庭(※)を対象に、食品を無料で配付する事業です。企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約18,000円相当のカゴいっぱいの食料を毎月ひとり親家庭に配付しています。
※1 当事業の対象者は、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭で、通常は関東および関西の配付拠点に直接取りに来られる方を対象としています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
しかし、「全国ひとり親世帯等調査(平成28年厚生労働省)」によると、養育費を継続して受け取っている母子世帯は24%ほどという実態が明らかになっています。
ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を実施する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは今回、主に離婚によるひとり親家庭の「養育費」の実情を把握するため、利用者を対象に調査を実施しました。
【ひとり親家庭を対象とした養育費に関するアンケートについて】
アンケートに回答したのは、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営する、ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を利用する、「ひとり親家庭等医療費受給者証※」を持つ関東1都3県および大阪のひとり親です。
※ひとり親家庭等医療費受給者証:18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証
- 実施日:2021年6月
- 対象者: 「グッドごはん」に食品を申し込んだ関東1都3県および大阪の利用者
(東京は主に大田区、品川区、その他神奈川・埼玉・千葉 / 大阪は大阪府を指す) (主に30代~50代) - 有効回答数:1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)494名 / 大阪府388名 計882名
【調査結果】
①さまざまな事情でひとり親家庭へ
ひとり親になった経緯についての調査では、離婚が8割以上を占めるものの、未婚・非婚も約1割、その他さまざまな事情を持つ人がグッドごはんを利用していることがわかります。ひとり親家庭等医療費受給者証は、両親の一方または両方に障がいや病気があり就労できない等の理由で対象になる場合があるため、ひとり親家庭以外も利用者に含まれています。
以降の調査項目では、「死別」「ひとり親ではない」といった養育費の受け取りの対象にはならない属性の回答者は集計から除外しています。② 扶養する子どもの人数
※グッドごはんの利用条件のひとつは、18歳未満の子どもを養育していることですが、ここでは養育費の支払い対象となる20歳未満の子どもについて聞いています。
扶養している子どもの人数は、東京・大阪ともに1人が約半数と最も多く、若干大阪に多子世帯が多い傾向が見えました。
③ 養育費の取り決めがない家庭が多い
養育費の受け渡しの取り決めをしたかどうかについての調査では、東京・大阪ともに「取り決めはしていない」と回答しているひとり親が4割以上にのぼりました。
公正証書や家庭裁判所を介して取り決めるなど、強制執行可能な方法(グラフでは黄色と水色の部分)で取り決めをした方は東京で17%、大阪で12%に留まっています。④ 必要な養育費用よりも低額にとどまる取り決め金額
② で、「養育費の取り決めをした」と回答した方を対象に、具体的な取り決め金額を聞き、子ども一人当たりの金額に換算したところ、上のグラフのような結果になりました。
月々2万円〜3万円台の取り決めをしたと回答したひとり親が全体の5割から6割を占めています。最高裁判所のWEBサイトに掲載されている「養育費算定表」によると、14歳以下の子ども一人/権利者の年収200万円/義務者の年収500万円の場合、養育費の目安は4~6万円です。本調査では、ひとり親の元パートナーの年収は調査していませんが、第3者を介さず本人同士の口約束などで取り決めた場合などは、相場よりも低額になってしまう可能性が考えられます。
⑤ 養育費を受け取れていない家庭は7割以上
※取り決めの有無にかかわらず、養育費受け取り対象家庭を集計にしています。
実際の受け取り状況について調査したところ、「毎月受け取っている」と回答した方は、東京19%、大阪13%で、「今までに何度か貰えないことがあった」「毎月貰っているが減額されることがある」と合わせると、前述の全国ひとり親世帯等調査の「養育費を継続して受け取っている母子世帯は24%」と近い結果となりました。「一回も貰えていない」と「数回貰った(あるいは貰ったことはあるが現在は貰えていない)」と回答したひとり親は、合わせて東京70%、大阪74%にものぼりました。実に7割以上のひとり親家庭が養育費を受け取ることができていないのです。
⑥ 実際の受け取り金額は、取り決めの金額を下回っている
さらに、実際に受け取っている養育費の金額(子どもが複数いる場合は合計額)を調査すると、1万円~3万円が最も多く、1万円以下という回答も少なからずあるという結果になりました。④の取り決めの金額と比較すると、取り決めた金額より実際に支払われる金額が低くなっていることがわかります。
養育費減少の理由については、
- 「コロナの影響による相手の収入減少。」
- 「念書に「増減可能」と記載されている為。」
- 「養育費を払ってもらえるように、毎月LINEで何度も連絡して、なるべく払ってもらうように頼んでいるが、お金がないといい、いつも減額したり、払ってくれないことも多い。」
- 「相手は自営業なので仕事の状況や、再婚、子供が生まれるなどの理由で支払いが滞り、必要時にはLINEで連絡はとれるがあまり話し合いに応じてはくれない。」
働けない事情がある場合を除き、男女を問わずひとり親は子どもを育てながら働いているため、長時間労働ができません。
インターネットによる子育て費用に関する調査(平成21年度 内閣府)によると、小学生ひとりの平均の年間子育て費用額(子どものための預貯金含む)は115万円で、一か月あたり9.6万円です。仮に年収が同じ親同士で折半したとしても、月5万円の子育て費用が必要と考えられます。
これらの費用が無いと、中高生の部活、あるいは塾や習い事ができないなど、子どもがやりたいことや学びたいことを諦めざるを得なく、将来の選択肢が限られてしまうことにも繋がります。
⑦ 変えることの難しい現実
養育費をもらえることができていない状況を改善することはできるのか。質問5で、養育費を減額されたことがある/貰えなかったことがあると回答した人に聞いたところ、状況の改善のために働きかけたことがあると回答した対象者は3割程度でした。
働きかけた人が無い、と回答した人の理由としては、
- 「もと主人のDVが原因で私が離婚調停をして離婚したので、怖くて先方には連絡していません。」
- 「離婚に応じてもらうだけで精一杯だった為。」
- 「精神的ストレスになる為、トラウマ。」
- 「養育費の話をすると火がついたようにキレだす。酒癖が悪く、DV、子供も殴られた事があるので、これ以上言うと命の危険があるので言えない。」
- 「連絡先がわからないため。」
- 「今住んでいる自宅を知られる恐れがあるため。」
また、働きかけたことがあると回答した人でも、
- 「何度か話合いの場を設けたが、声を荒げ話合いにならなかった。」
- 「裁判所に勧告してもらったが、また数回だけで払われなくなった。」
- 「一度、親戚から電話をかけてもらったが無視された。DVなどの問題があり、協議や調停を行うと負担が大きい。弁護士は費用が高額となるので難しい。」
- 「何度も電話で話し口座を聞かれ教えたが一度も振り込まれなかった。」
- 「弁護士に相談しましたが、相手方から脅迫紛いの行為があり弁護士が手に負えないとの事。」
公正証書や調停証書には養育費の支払いの強制執行力があるとされていますが、裁判所に強制執行を認めてもらうためにはいくつかの条件があり、養育費の権利者がこれらを用意しなければなりません。
① 債務名義(公正証書等)と送達証明書がある
② 相手の現住所を把握している
③ 相手の財産を把握している
たとえば「離婚してから連絡も取っていない」「ハラスメントを受けていたので声も聴きたくない」という状況で、相手の所在地や銀行口座を確認し、条件がそろった後も
・申立のための書類を準備
・地方裁判所(元配偶者の居住地)に申し立てる
といった手続きを自分自身でまたは弁護士費用を負担して行う必要があります。カツカツの収入で、毎日休む間もなく働いている人がこれらのことを行うのは、経済的にも心理的にも大きな負担を伴います。
【養育費は子どものもの】
今回の結果から、当団体の食品支援を利用する、死別を除いたひとり親家庭のうち、養育費を実際に受け取ることのできていないひとり親家庭は7割以上と非常に多く、受け取ることができていても不十分な金額であることが多いことがわかりました。
養育費は、シングルマザーを例にとると、元妻が「取る」、夫は「取られる」といった風に語られることがあります。しかし、養育費の負担は親の義務であり、離婚により親権がなくなっても親であることは変わりありません。なにより養育費は、監護している親のものではなく「子ども本人のもの」であり、子どもの権利です。
グッドネーバーズ・ジャパンは2017年より国内の貧困対策としてひとり親家庭の支援事業を行っていますが、ひとり親の生活・経済状況に関するアンケートを行ってきた中で、平均的なパート収入プラス公的手当で暮らすひとり親とその子ども達が、必要なものを買い進学をあきらめないためには「養育費のありなし」と「家賃」が大きく影響すると考えます。
世の中には、一生懸命働いて子が20歳になるまで養育費を支払う親ももちろんいます。2021年「親ガチャ」という言葉が世間をにぎわせましたが、養育費を貰えなかったために子どもの人生の選択肢が狭まってしまうことも考えられます。何の責任もない子ども達の将来と、彼らが作る未来のために、すべての子どもの養育費は確保されるべきです。
養育費の確保については、「両親の話し合い」が成り立たない場合でも養育費を受け取ることができるよう制度を考える必要があります。例えば勤め先の給与から天引きする、元配偶者が行方不明な場合に裁判所や自治体が連携して居場所を探す、マイナンバー制度を活用するなど、すべての子どもが日本の未来の大切な財産であることを考えればできることはあるのではないでしょうか。
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、主に首都圏および大阪近郊のひとり親家庭(※)を対象に、食品を無料で配付する事業です。企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約18,000円相当のカゴいっぱいの食料を毎月ひとり親家庭に配付しています。
※1 当事業の対象者は、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭で、通常は関東および関西の配付拠点に直接取りに来られる方を対象としています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザーログイン既に登録済みの方はこちら
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像