みんなのコード、全国の学校教育における「プログラミング教育実態調査」を公開
小・中学校教員2,400名、子ども・保護者3,000組を対象に意識調査を実施
全国でテクノロジー教育の普及活動を推進する特定非営利活動法人みんなのコード(東京都渋谷区、代表理事:利根川 裕太、以下みんなのコード)は、 Google.org の支援のもと、日本国内の学校教育におけるプログラミング教育の実態について、全国の小学校教員1,037名、中学校教員1,362名、小学生・中学生・高校生およびその保護者3,000組を対象に、定量・定性調査を実施し、報告書を公開したことをお知らせいたします。
なお、中学校技術分野教員向けのアンケート調査は、全日本中学校技術・家庭科研究会との共同調査として実施いたしました。
●報告書は、以下よりダウンロードいただけます。
・報告書
https://speakerdeck.com/codeforeveryone/programmingeducationreport2021
・教員の意識調査(小学校教員)単純集計結果
https://speakerdeck.com/codeforeveryone/programmingeducationreport2021-ele
・教員の意識調査(中学校教員) 単純集計結果
https://speakerdeck.com/codeforeveryone/programmingeducationreport2021-junior
・子供・保護者の意識調査 単純集計結果
https://speakerdeck.com/codeforeveryone/programmingeducationreport2021-parents
●研究目的にて、本調査のローデータを入手されたい場合は、以下よりお問い合わせください。
https://forms.gle/TW6vrUUnPdjmKsVf7
本調査は、プログラミング教育が2020年度から全国の小学校にて必須化、2021年から中学校での指導内容の拡充が図られる中で、今後、全国の教員がさらに効果的・系統的な指導が行えるよう、教育関係者に有益かつ実践的な情報を提供するために実施したものです。
小中学校の教員および、生徒・保護者を対象に、大規模なプログラミング教育の実態調査を行うのは、国内では類をみない非常にユニークな取り組みとなります。
加えて、今後の日本国内の取り組みの参考にするべく、「諸外国のプログラミング教育調査」として、イングランド、オーストラリア、韓国、ケニアにおける取り組み状況についても、文献調査を実施いたしました。
- 本調査結果からの考察(一部)
【考察①】『7割を超える子どもたちは、プログラミングを楽しんでいる!という結果に』
小学生の子ども・保護者を対象とした意識調査において、プログラミング教育への子どもたちの反応として、 73.8%の子どもたちが「プログラミングは楽しかった」と回答しています。この結果は、「あまりそう思わない」「全くそう思わない」との回答(7.7%)を大きく上回る結果となりました。小学校のプログラミング教育必須化が決定した際に、一部から「プログラミングのプロフェッショナルではなく、学校の先生方が教えることで、プログラミングへの苦手意識などが増えるのでは?」との懸念の声を払拭する結果となりました。
【考察②】『プログラミングの経験可否が、その後のキャリアに影響する可能性も』
児童・生徒に対する意識調査において、プログラミングに関するイメージについては、小学生と高校生の結果をみてみると、プログラミングを経験した児童・生徒のほうが、イメージが良いことがわかりました。例えば、「将来プログラミングに関する仕事に就くか?」という質問に対しては、プログラミングの経験あり・なしで、ポジティブな回答が小学生では2倍、高校生では3倍になることがわかりました。IT人材の不足が叫ばれる中で、プログラミング教育の経験可否が、その後のキャリアにも影響する可能性があることがわかりました。
【考察③】『先生方の準備の度合いによって、児童のプログラミングへの関心度合いが大きく変わる!』
教員の意識調査では、小学校の教員への「プログラミング教育後の児童の反応」について、7時間以上の研修を実施する場合と、1時間未満の短時間の研修や研修を受けていない場合と比べて、児童の関心度合いに大きな差があることがわかりました。
【考察④】「多忙な先生方がプログラミング教育を実践できるよう、職場環境の改善も必要!」
小学校教員向けのアンケートでは、授業の準備時間を「十分に確保できている」という回答は17.7%にとどまり、「十分に確保できない理由」を大半の教員が「校務」と答えています。また、中学校教員においては「十分に確保できている」と回答したのは11.5%にとどまり、「十分に確保できない理由」として「部活動」をあげており、約半数の先生が週10時間超(平日3日の放課後と休日の半日超が部活という)と回答しています。
また、教員のインタビュー調査では、GIGAスクール端末の準備整備が教員の負担になっているという声も多くありました。これらの状況を改善することも、教員がプログラミング教育にしっかりと時間を使えることにつながると思われます。
- 調査概要
【小学校教員の意識調査】
・調査対象および調査方法
ー全国の小学校教員1,037名へのアンケート調査
ー全国の小学校教員12名へのインタビュー調査
・調査方法:インターネットリサーチ、および対面インタビュー
・期間:2021年7月〜8月
・調査支援:阪口 瀬理奈
【中学校技術分野教員の意識調査(全日本中学校技術・家庭科研究会との共同調査)】
・調査対象および調査方法
ー全国の中学校教員(技術分野)1,362名へのアンケート調査
ー全国の中学校教員(技術分野)6名へのインタビュー調査
・調査方法:全日本中学校技術・家庭科研究会の会員へのアンケート、および対面インタビュー
・期間:2021年7月〜8月
・調査支援:阪口 瀬理奈
【子ども・保護者の意識調査】
・調査対象および調査方法:
ー小学生、中学生、高校生およびその保護者3,000組へのアンケート調査
ー小学生、中学生、高校生の保護者16名(2~3名×6グループ)へのグループインタビュー
・期間:2021年6月〜8月
・調査支援:阪口 瀬理奈
【諸外国でのプログラミング教育の取り組み状況調査】
・調査方法:文献調査
・対象国
ーイングランド
ーオーストラリア
ー韓国
ーケニア
・期間:2021年7月~9月
・担当:識名 由佳(SERI 代表)
- 主な調査結果(報告書にて取り扱っている内容の一例。詳細は報告書をご覧ください。)
【小学校教員の意識調査】
・プログラミング教育を取り巻く環境:GIGAスクール対応でプログラミング教育が後手に。
・プログラミング教育に関する研修:研修の参加時間が長いほど、実施したとの手ごたえを感じる。
・プログラミング教育の実施状況:実施状況は半数弱、今後実施予定が3割(*1)。
・児童の反応:教員の7割が、児童のITやプログラミングへの関心が高まったと回答。
・プログラミング教育の課題と今後のあり方:専門知識や指導事例の不足が課題。
【中学校教員の意識調査】
・プログラミング教育を取り巻く環境:授業の準備時間を十分に確保できていない教員が9割弱。
・プログラミング教育に関する研修:積極的な教員のほど、生徒の反応から手ごたえ。
・プログラミング教育の実施状況:D2、D3では4時間以上、一方でD(1) が3時間以下(*2)。
・プログラミング教育を行う際の課題:D2に対する課題意識が強い。
・生徒の反応:考え方の変化や進路選択のきっかけにつながった。
【子ども・保護者の意識調査】
・プログラミング教育の実施率:高学年での実施が中心、低学年での実施は2割(*3)。
・子どもたちの反応:プログラミングに対してのポジティブな印象
・家庭環境の影響:保護者のITリテラシーが大きく影響
・学校外でのプログラミング教育の機会:保護者のITへの関心度が影響
(*1)調査時点(2021年7月)の結果。2学期以降に実施されることが期待される。
(*2)D(1)、 D(2) 、D(3) とは、中学校技術・家庭科(技術分野)の内容「D 情報の技術」のうち、(1) 生活や社会を支える情報の技術、(2) ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決、(3) 計測・制御のプログラミングによる問題の解決の単元のこと。
(*3)児童・生徒向けのアンケートでは、ロボットやフローチャートでの学習活動等をプログラミングとして認識・記憶していない可能性があることを考慮する必要がある。
- 本調査にあたり、NPO法人みんなのコード 代表理事 利根川 裕太からのコメント
2020年度は小学校での新学習指導要領の全面実施に伴いプログラミングが始まり新しい教育が始まる一年となるはずでした。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大のため、学校現場も未曾有の危機に対応するだけでなく、これまでプログラミング教育の推進役であった先生や教育委員会の担当者もGIGAスクールの整備や遠隔授業の準備等に追われた一年となり、プログラミング教育の実施に多くの困難が伴った一年でした。本調査によって、学校でのプログラミング教育の実施状況については、これまでになく広い範囲での調査を実施し、研修を含む教育委員会・学校の計画の重要性、プログラミング教育の子どもへの効果が示唆されました。本調査が、今後のプログラミング教育の支援策及びその先のテクノロジー教育の政策を検討する一助となればと願っています。
以上
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