『2026堀場雅夫賞』受賞者決定/授賞式・受賞記念セミナーを10月15日に京都大学で開催
~「分析・計測技術」でエネルギー社会の高度化に貢献する研究を表彰~

株式会社堀場製作所(京都市南区吉祥院宮の東町2、代表取締役社長 足立正之|以下「当社」)はこのたび、国内外の大学または公的研究機関に所属する研究開発者を対象とした、分析・計測技術分野の研究奨励賞「堀場雅夫賞」の2026年度受賞者を決定しました。
2003年の創設以来22回目となる今回の選考テーマは、「高効率なエネルギー社会に貢献する先端材料の分析・計測技術」です。国内外から28件(うち海外12件)の応募があり、当該分野の第一線で活躍する8名の研究者で構成される審査委員会が、将来性、独創性、ならびに分析・計測技術としての発展可能性を重視して審査した結果、3名を堀場雅夫賞受賞者、1名を特別賞受賞者に決定しました。授賞式と受賞記念セミナーは、学術界、行政、産業界をはじめとする関係者を招いて、10月15日(木)京都大学 国際科学イノベーション棟5階(西館)「HORIBAシンポジウムホール」にて開催いたします。
<受賞者および主な受賞研究>
今回の受賞研究は、電池や水素製造装置の内部反応を動作中に可視化する技術や電極と電解液を一体で最適化するための解析手法、次世代パワー半導体の性能低下要因となる界面欠陥を原子レベルで捉える計測技術、SiC(炭化ケイ素)結晶中の構造欠陥の実態と進化を解明する研究など、エネルギー関連デバイスの高性能化と高信頼性を支える分析・計測技術の進展に資する成果が評価されたものです。
【堀場雅夫賞】
● 折笠 有基(オリカサ ユキ)氏
立命館大学 生命科学部 応用化学科 教授
「電気化学エネルギーデバイスの反応場を可視化するオペランドX線解析技術※の開拓」
本研究は、リチウムイオン電池や全固体電池、燃料電池、水電解槽などが実際に動作している最中の内部反応を、高エネルギー放射光X線でその場で観察できる技術を開発したものです。従来は外部から把握しにくかった電極や電解質の変化、反応の偏り、材料同士の接触状態を可視化できるようにし、電池では反応のムラが充電速度や劣化に影響すること、全固体電池では材料同士の接触状態が性能を左右することなどを明らかにしました。さらに、燃料電池や水電解槽では触媒の溶出・劣化の様子も捉え、電池や水素製造装置の高性能化・長寿命化に向けた設計指針を示した成果として評価されました。
※オペランドX線解析技術:材料が実際に機能している状態でX線測定を行い、反応や構造変化をその場で観察する解析技術
● 片山 祐(カタヤマ ユウ)氏
国立大学法人大阪大学 産業科学研究所 准教授
「電解・蓄電デバイスの電極・電解液統合設計を叶えるオペランド分光法※の開発」
本研究は、蓄電池や燃料電池、水素製造装置などの電解・蓄電デバイスにおいて、電極と電解液の境界で起きる反応を、動作中に分子レベルで観察できる解析手法を開発したものです。従来は主に電極材料の改良が進められてきましたが、性能向上には電解液を含めた反応場全体の最適化が重要になっていました。この研究では、さまざまな電気化学反応にオペランド分光法を適用することで、反応メカニズムの解明から材料設計、性能評価までを一貫して進められる研究基盤を築き、電極と電解液を一体で考える「統合設計」を実現した点に特徴があります。水素キャリア製造、二酸化炭素の資源化、蓄電池・燃料電池の高性能化につながる成果として評価されました。
※オペランド分光法:触媒や電池などが動作しているその場で光や電磁波を用いて測定し、反応の仕組みや材料の変化を解析する技術
● 杉本 宜昭(スギモト ヨシアキ)氏
国立大学法人東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授
「パワー半導体※1における個々の界面準位※2の多次元計測技術の開発」
本研究は、次世代パワー半導体の性能を妨げる、半導体材料と絶縁膜の境界にある極めて微小な欠陥を、原子レベルで一つひとつ直接捉えて分析する計測技術を開発したものです。SiCやダイヤモンドなどの新材料は電力損失を大幅に減らせる可能性がある一方、界面のわずかな乱れや欠陥が性能低下の原因となることが課題でした。本研究では、原子間力顕微鏡を用いた計測技術を独自に高度化し、界面欠陥を原子レベルで直接検出し、その位置やエネルギー状態まで解析することに成功しました。これにより、これまで特定が難しかった性能低下や不具合の原因解明が可能となり、超低損失パワー半導体の実用化を前進させる成果として評価されました。
※1 パワー半導体:電力を効率よく変換・制御する半導体。電気自動車や電力機器などに用いられる
※2 界面準位:半導体材料と絶縁膜の境界に存在し、電気特性に影響する欠陥や電子状態
【特別賞】
● Moonkyong Na(ナ・ムンギョン)氏
韓国電気研究院 先端半導体研究センター 主任研究員(韓国)
「高信頼性パワーデバイス実現に向けた4H-SiC※1中の多様な構造欠陥の包括的結晶学的解析と進化機構の解明」
本研究は、次世代パワーデバイス材料として注目される4H-SiC(4H型炭化ケイ素)に含まれる結晶欠陥について、その構造、形成過程、変化の仕組み、デバイス性能への影響を総合的に解明したものです。SiCウェハー中の微小な結晶欠陥は、デバイス性能や長期信頼性を左右する重要な要因ですが、その実態解明は容易ではありませんでした。本研究では、光学観察、電子顕微鏡観察、X線解析、デバイス測定、理論計算を組み合わせ、欠陥の特徴、原子構造、形成経路、デバイスへの影響を一貫して関連付けて解析しました。その結果、積層欠陥※2が従来考えられていた以上に多様で動的な構造を持ち、特定の欠陥がデバイス抵抗の非線形な増加を引き起こすことを示しました。SiCウェハー品質の向上と高性能・高信頼性パワー半導体デバイスの実現につながる重要な基礎的知見として評価されました。
※1 4H-SiC:炭化ケイ素の結晶構造の一種。高耐圧・低損失のパワー半導体材料として注目される
※2 積層欠陥:結晶の原子配列が部分的に乱れた欠陥の一種で、半導体の性能や信頼性に影響する
<受賞記念セミナー・授賞式について>
日程:2026年10月15日(木)
場所:京都大学 国際科学イノベーション棟5F(西館)「HORIBAシンポジウムホール」
【プログラム(予定)】
第一部:受賞記念セミナー(14:00~)
・受賞者3名および特別賞受賞者1名による講演
第二部:授賞式 (16:00~)
・受賞研究の紹介
・本賞および副賞の授与
<堀場雅夫賞について>
堀場雅夫賞は、堀場製作所創立50周年を記念して2003年に創設した研究奨励賞です。国内外の若手研究者や技術者を対象に、将来の発展が期待される分析・計測技術の研究を顕彰・支援しています。毎年テーマを定め、独創性や将来性の高い研究を選考しています。
<2026堀場雅夫賞の募集分野と背景>
世界がカーボンニュートラルの実現に向けて取り組むなか、再生可能エネルギーの導入拡大や電動化の進展に伴い、社会全体の電力システムを支える技術基盤の重要性が一層高まっています。加えて、AIの社会実装の加速やデータセンターの増設、通信インフラの高度化などを背景に、今後は電力需要の増加も見込まれています。安定供給の確保と環境負荷低減を両立するためには、エネルギー変換・貯蔵デバイスの高効率化と高信頼化を支える技術革新が不可欠です。なかでも、パワー半導体、二次電池、燃料電池・水電解、太陽電池などのエネルギー関連デバイスでは、材料開発と製造プロセスの高度化を支える分析・計測技術の進展が重要です。2026堀場雅夫賞では、「高効率なエネルギー社会に貢献する先端材料の分析・計測技術」をテーマに、エネルギー関連デバイスの高性能化および信頼性向上に貢献する材料開発と、その実現・高度化を支える分析・計測技術を募集対象としました。
【2026堀場雅夫賞 審査委員会】 (敬称略、順不同)
審査委員長:辰巳砂 昌弘
公立大学法人大阪 大阪公立大学 エグゼクティブアドバイザー/名誉教授
海外審査員:Eric A. Stach(エリック・A・スタック)
Robert D. Bent Professor of Engineering, Department of Materials Science and Eng
ineering, University of Pennsylvania
Jong-In Shim(ジョンイン・シム)
Professor Emeritus, Hanyang University
審査委員:松本 広重
国立大学法人九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 副所長 教授
若宮 淳志
国立大学法人京都大学 化学研究所 教授
国立大学法人京都大学 理事補/副プロボスト
分島 彰男
国立大学法人熊本大学 半導体・デジタル研究教育機構 教授
井上 正規
株式会社堀場エステック 開発本部 副本部長
樋口 誠司
株式会社堀場製作所 先端材料・半導体技術本部 先端材料ソリューション部 部長
受賞者の所属・役職等は応募時点のものです。
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