日立、HMAX Industryを支えるフィジカルAIの基盤技術としてエッジAI半導体を開発
製造設備・検査装置・産業ロボット・物流機器・ビル・エネルギー設備など幅広い産業用プロダクトに搭載可能
株式会社日立製作所(以下、日立)および株式会社日立ハイテク(以下、日立ハイテク)は、産業分野向け次世代ソリューション群「HMAX Industry」を支える基盤技術として、製造設備・検査装置・産業ロボット・物流機器・ビル・エネルギー設備など幅広い産業用プロダクトに搭載可能なエッジAI半導体*1を開発しました。本半導体は高速処理と省電力を特長とし、画像・音・振動など多様な現場データを装置内でリアルタイムに解析します。
今回、実機データを用いた評価で、従来比で10倍以上*2高い電力効率で処理を実行できること、および装置内で使用可能な省電力で安定動作することを確認しており、これまで専用サーバーを前提としていた高度な検査・監視処理を、装置内で直接実行できる見通しが得られました。設置スペースや消費電力の制約が大きい製造現場をはじめ、さまざまな現場装置に実装可能な段階に入りました。
今後は、本エッジAI半導体をフィジカルAIの現場適用を支える横断的な実行基盤として、装置データをその場で処理・活用し、品質の安定化、歩留まり向上、生産性向上につながるデジタルサービスを展開します。エッジAI半導体と軽量AIモデル、ソフトウェアを組み合わせた評価環境を用いながら、お客さまの装置・製造ラインに合わせた実装・運用を順次進め、産業分野で培ってきたドメインナレッジを組み込んだフィジカルAIを中核とする「HMAX Industry」のコア技術として、製造業全般、物流、ビル・エネルギーなど多様な分野へ広げていきます。
*1 エッジAI半導体: ネットワークの端末機器(エッジデバイス)に直接搭載し、装置内でAI推論を実行するための半導体チップ。
*2 開発したエッジ向け軽量AIモデルに対する電力効率を最先端GPUと比較(GPUの電力効率はカタログ値に基づいて算出)。
背景および課題
製造現場や物流、ビル・エネルギーなどの産業現場では、装置から得られるデータをリアルタイムに解析し、品質の安定化や生産性向上、保全効率化につなげることが求められています。しかし、従来のエッジAIシステムでは、消費電力や設置スペース、複数センサーデータを扱う際の処理負荷がボトルネックとなり、本格展開が難しい場面がありました。日立はこれまで、画像・音・振動など多様なセンサーデータを省電力にリアルタイムで解析するエッジAI技術を開発してきました*3。今回、その成果を実際の産業プロダクトに搭載して動作させるエッジAI半導体として具現化し、「HMAX Industry」が対象とする現場での適用を開始していきます。
*3 Lumada 3.0の現場適用を強化するエッジAI技術を開発 - 研究開発:2025年10月14日
技術のポイント
1. 産業用プロダクトにそのまま組み込めるエッジ向け軽量AIモデル
日立は、産業用プロダクトへの組み込みを前提としたエッジ向け軽量AIモデルを開発しました。工場やビル設備などで使われる装置は消費電力や設置スペースに制約があるため、多くの演算量を必要とするAIは装置内に載せにくいことが課題でした。今回、画像の微細な違いを捉えるCNN*4と全体の傾向を理解するTransformer*5を組み合わせることで、装置内実装に必要な軽量性と、検査・監視など産業用途で求められる高い推論精度を両立しました。特定機種に依存しない設計とし、検査・計測装置や産業機械で実装・評価を進めながらユースケースを広げています。
2. 検査・監視処理の時間と処理負荷を削減する適用例
高精度が求められる検査・監視では、多枚数撮像や複雑な解析処理がボトルネックとなるケースが多くあります。今回、代表例として半導体検査・計測分野で実測データを用いた検証を行い、従来、多枚数の画像を重ねて行っていた高精度計測処理を、1枚の画像に対するAI処理で置き換えられる可能性を確認しました。これにより、撮像回数を減らしながら必要な精度を確保できる見通しが得られ、インライン検査・計測*6の高速化と装置負荷低減につながることを確認しました。同様のコンセプトを、部品外観検査や設備状態監視など他分野の検査・監視装置にも順次適用していきます。

3. 装置内で省電力にAI処理を行える独自のエッジAI半導体の動作確認
エッジAI半導体は、実行するAIモデルに合わせて演算回路やメモリ構成を最適化することで、汎用プロセッサに比べて電力効率を高められます。今回、エッジ向け軽量AIモデルの演算に合わせて回路を設計したチップを評価し、従来比で10倍以上高い電力効率で処理を実行できることと、産業用装置内で使用可能な電力範囲で安定動作することを確認しました。これにより、従来は専用サーバーが必要だった高度なAI処理を、製造設備、検査装置、ロボット、物流機器、ビル・エネルギー設備など、実際の現場装置に組み込んだ運用に目途が付き、実装フェーズに移行しました。

*4 CNN: Convolutional Neural Networkの略。画像の特徴(エッジや模様など)を自動で抽出し、分類や検出に用いられる深層学習モデル。
*5 Transformer: 入力データの重要な部分に注意(Attention)を向けて特徴を捉える深層学習モデル。自然言語処理だけでなく画像解析にも用いられる。
*6 インライン検査・計測: 製造ラインの工程内で、製品をラインから外さずに連続的に行う検査・計測。
*7 CD-SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope): 半導体等のウェーハ上に形成された微細パターンの寸法計測用に特化した装置で、主に半導体等の電子デバイスの製造ラインで使用される。
今後の展望
今回開発したエッジAI半導体は、現場での処理を高速かつ省電力に実行するキーコンポーネントとして、「HMAX Industry」が対象とする工場・物流・ビル・エネルギーなどのプロダクト群へ横断的に展開していきます。現場データをその場で判断できる「プロダクトの知能化」を進めることで、Lumada 3.0を体現するソリューション群である「HMAX Industry」を支えるデジタルサービスとして、実装と運用の両面から広げていきます。
商標注記
記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
日立製作所について
日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.co.jpをご覧ください。
日立ハイテクについて
日立ハイテクは、持続可能な地球環境、健康で安心・安全な暮らし、科学と産業の持続的発展に貢献するため、「知る力で、世界を、未来を変えていく」という企業ビジョンを掲げ、社会やお客さまに最先端の技術や製品・サービスを提供しています。ヘルスケア分野における医用分析装置、バイオ関連製品、放射線治療システム、半導体分野における半導体製造・検査装置のほか、環境分野や材料の研究などで用いられる分析装置、解析装置を製造・販売しています。また、電池、通信インフラ、鉄道検測、デジタルなどの産業・社会インフラ分野で高付加価値ソリューションを提供するなど、幅広い事業領域でグローバルに事業を展開しています。私たちは、社会やお客さまの真の課題を正しく知り、解決策を提供し続けることで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。(2025年3月期日立ハイテクグループ連結売上収益は7,565億円)
詳しくは、日立ハイテクのWebサイト(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/)をご覧ください。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所 コネクティブインダストリーズセクター
https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/industry/jp/
株式会社日立製作所 研究開発グループ
https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/hqrd/news/jp/form.jsp
株式会社日立ハイテク ナノテクノロジーソリューション事業統括本部
https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/hitachi-hightech/jp/about/general/form_input.jsp
すべての画像
- 種類
- 商品サービス
- ビジネスカテゴリ
- 電子部品・半導体・電気機器
- ダウンロード