女子の文理選択、母親からのプラス影響が男子の1.6倍、理系女子は文系女子と比較して父親の影響が2倍弱
親や教員、理系体験等が進路選択に与える影響を全国8,800名を対象に調査
公益財団法人山田進太郎D&I財団は、スタディプラス株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:廣瀬高志)が運営するStudyplusトレンド研究所と連携して、2024年4月に高校生・大学生8,831人を対象に「文理選択に影響を与える要因:高校生・大学生の進路実態調査」を実施しました。このたび、調査結果をまとめましたのでご報告します。
本調査結果については、Studyplusトレンド研究所の公式サイトでも紹介しています。
https://www.trend-lab.studyplus.jp/post/20241224
「文理選択に影響を与える要因:高校生・大学生の進路実態調査」トピックス
①女子は中学3年生時点で理系志望が男子より13.5ポイント少なく、男子は将来の職業に関して、技術職への関心が高い
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中学3年生の時点で全体の約5割が理系を志望、このうち女子は45.2%で、男子の58.7%と比較して理系志望が13.5pt低い。
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最終的な進路選択では、15%前後の生徒が文系・やや文系から理系、または理系・やや理系から文系へ変更。
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将来の職業に関して、男子は女子より「技術職・専門職」への関心が高く、都市部*1の男子については30.3%となった。
②進路選択において女子は男子より1.6倍多く母親からプラスの影響を受け、特に理系女子は父親からのプラスの影響が文系女子の約2倍に
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女子の29.5%が母親からの影響をプラスに捉えており、これは男子の18.7%と比較すると、1.6倍多い。
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理系女子の場合、母親についで教員(20.5%)、父親(13.7%)からプラス影響を受けており、理系女子に限っては父親からの影響が文系女子(7.8%)の約2倍弱となる。
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一方で女子は母親(23.9%)、父親(20.2%)、教員(19.0%)から進路に対するマイナスの影響を受けており、男子(それぞれ15.8%、14.0%、19.2%)と比べて家族から影響を受けた。
③理系体験*2率は全体で40%、理系選択者は文系選択者よりも6.8ポイント体験率が高く、性別や地域差はほぼなし
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理系体験の経験率は全体で約4割で、理系選択者が文系選択者よりも6.8pt高い。
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男女間あるいは都市部と地方の地域間でも理系体験の有無にはほとんど差がない。
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最も印象に残った理系体験について、学校外での体験に限定すると、都市部では「プログラミングやロボット製作のワークショップ」で男子が17.4%と最も高く、都市部女子は10.9%、地方女子は9.5%となった。
④理系に向いていると感じる男子50.1%、女子31.2%、成績に自信があるのは男子60%に対し女子39%といずれも男女で20ポイント近くの差
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「理系に向いている」と感じる割合は男子50.1%に対し女子31.2%、理系の成績に自信があるのは男子60.5%に対し女子41.7%と、それぞれ20pt近く差が出た。
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一方、最終的には女子の51.2%が理系を選択しており、自己認識と実際の進路選択にギャップがある。
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親の理系進学に対する期待は男子39.5%、女子30.7%だったが、文系進学への期待は男女ともに20%を下回り、理系進学の方が重視されている。
*1 都市部とは三大都市圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪)を指す。地方は左記以外を指す。
*2 理系体験とは、プログラミングやロボット製作のワークショップ、企業での職場体験など、科学・技術・工学・数学(STEM)分野への関心を深めるための学びや実践的な機会を指す。
◆本調査の概要
調査対象 : 全国の「Studyplus」ユーザー(高校生、大学1年生、大学2年生)
回答者 : 8,831名
調査時期 : 2024年4月19日~4月22日
調査方法 : 学習管理アプリ「Studyplus」上でアンケート回答を依頼し、オンラインで回答を回収。
調査内容 : 文理選択で選択した進路、文理選択に影響を与えた人物、経験したことがある理系体験、理系科目や成績に関する自己認識など
■ 文理選択や将来の職業に関する項目
文理選択前の中学3年生の時点では、全体の約5割が理系を志望していました。しかし、男女で差があり、男子の理系志望は58.7%に対し、女子は45.2%で、13.5ptの差が見られました。
文理選択前の回答者を除くと、中3時点で文系・どちらかといえば文系だった回答者で最終的に理系進学した女子は15.4%、男子は14.7%となりました。一方、中3時点で理系・どちらかといえば理系だった回答者で最終的に文系進学した女子は15.7%、男子は15.0%となりました。概ね、15%前後が理転あるいは文転する結果となりました。
都市と地方では職業志向に違いが見られました。都市部では「技術職・専門職」がより高い支持を集めており、女子において都市部は12.1%と、地方(9.2%)よりも2.9pt高い結果になりました。最も支持が高いのは都市部の男子で、30.3%となりました。地方では「医療・看護・保健」分野が人気で、特に女子において31.2%と、都市部女子(26.6%)よりも4.6pt高く支持されています。
■ 進路選択における周囲からの影響
周囲から受けるプラスの影響*3について、女子の場合は29.5%が母親、ついで22.4%が教員、その次に10.9%が父親となるのに対して、男子は18.7%が母親、ついで18.1%が父親、次に17.2%が教員となりました。女子は母親と教員から影響を受けており、特に母親からの影響は男子と比較すると1.6倍です。一方、男子は母親と父親から影響を受けるという結果となりました。
周囲から受けるプラスの影響*4について、文系女子の場合は30.3%が母親、ついで24.7%が教員となり、父親から受ける影響は7.8%で、友人から受ける影響(9.0%)よりも低くなりました。一方、理系女子の場合は28.7%が母親、ついで20.5%が教員となり、父親から受ける影響は13.7%でした。理系女子は文系女子よりも父親からプラスの影響を受けた人が約2倍弱高い結果となりました。また、理系女子は文系女子よりも教員からプラスの影響を受けた人は4.2pt低くなりました。
マイナスの影響*5については、女子の場合は23.9%が母親、ついで20.2%が父親、その次に19.0%が教員となるのに対して、男子は19.2%が教員、ついで友人が17.1%、有名人やインフルエンサーが16.2%と続き、母親は15.8%、その次に父親が14.0%となりました。女子は母親および父親からマイナスの影響を受け、男子は教員や友人、有名人、両親と多様な要因からマイナスの影響を受けたことがわかります。
■理系体験が与える影響
全体では約4割の人が理系体験があると回答しており、理系選択者の方が63.9%と、文系選択者の57.1%と比較すると、6.8pt高い結果となりました。
男女間、地域間の差異はあまりない結果となりました。
「最も印象に残った理系体験はどのような体験でしたか?」という質問に対する回答として、学校外の体験に絞って結果を確認したところ、都市部では「プログラミングやロボット製作のワークショップ」で男子が17.4%と最も高く、都市部女子は10.9%、地方女子は9.5%となりました。
■文系・理系のバイアスの影響
男子は女子よりも「自分が理系に向いている」と強く感じる割合が高く、男子の50.1%が「理系に向いている」と考えるのに対し、女子は31.2%となり、18.9ptの差が出ました。女子は「理系に向いていない」と感じる割合が約5割も占めており、男性よりも理系に関する自信が低い傾向が見られました。
男子は女子よりも「理系科目で良い成績を取れる」と強く感じる割合が高く、男子の60.5%が「良い成績を取れる」と考えているのに対し、女子は41.7%であり、理系科目に対する自信は男子の方が18.8ptも高くなりました。理系適性および理系科目での成績に対する自信については、男女間で明確な差が出ました。
一方、最終的には女子の51.2%が理系を選択しており、自己認識と実際の進路選択にギャップがあることもわかりました。
親が理系に進むことを期待していると回答したのは男子が39.5%と女子よりも8.8pt高くなりましたが、女子の30.7%も親からの理系進学に対する期待があると回答しました。
親が文系に進むことを期待していると回答した割合は、男女ともにほぼ同じで、女子16.8%、男子16.3%でした。全体として理系進学への期待より低い結果となりました。
*3 「どれも当てはまらない」と回答した男女3割弱を除いた影響
*4 「どれも当てはまらない」と回答した文系女子3割強と、理系女子2割強を除いた影響
*5 「どれも当てはまらない」と回答した男女7割を除いた影響
■ 有識者コメント
・かえつ有明中高等学校 理科主任 深谷新先生
今回の調査結果は、中高生に理科を教える立場として日々感じていることを裏付ける内容でした。探究学習では、生徒が自ら問いを立て、方法を考え、結果を整理して考察する過程で、特に女子生徒が内容を深めたり夢中になる姿をよく見かけます。調査では、中学3年生時点で女子生徒の約45%が理系志望であり、その7割が実際に理系進学していることがわかりました。
興味深いのは、文理選択に影響を与えた存在として、母親や父親、教員などの「身近な大人」を挙げた割合が女子では7割に達している点です。また、最も印象に残った理系体験として、プログラミングやロボット製作よりも職場体験や科学系イベントなど「人との対話」が生まれる場が挙げられる傾向が強いことも特徴的です。これを踏まえると、中学1~3年生の段階で、理系分野で活躍する大学生や社会人と直接触れ合う「対話会」を学校で実施することが有効と考えられます。さらに、1回きりで終わるのではなく、継続的に授業に来てもらって探究学習の発表や活動中のアドバイスなどに関わってもらうようなしくみができると、「身近な」存在となり、理系進学にプラスの影響を与えられる可能性があります。
・学校法人創志学園 クラーク記念国際高等学校 教務開発部 部長 兼 京都・彦根キャンパス長 阿部賢太先生
「男子は理系、女子は文系」という固定概念があることから、今回の調査結果はある意味で納得のいくものでした。しかし、なぜそのような概念があるのかという点から、いくつか興味深い結果がありました。中学3年生時点で理系志望は男子の方が13.5pt高いということ。そして、「理系に向いていると感じる」「成績に自信がある」という質問に対し、それぞれ男女で20pt近い差があるのに関わらず、最終的には女子の51.2%が理系を選択しているということ。
この2点から最終的な進路選択をゴールと捉えた時、男女差は想像よりも少なく、その要因として、学校における文理選択時のイメージと男女における自己認識の点が大きいのではないかと感じます。学校現場においては、まだまだ集団教育の要素が強く、中・高校生という集団形成が未成熟の状態では、他人に影響されやすい傾向にあることから、自己認識とは別に集団に動かされる傾向もあると感じます。今後、より一層、個別最適な学びが浸透していった時、本調査における文理選択の分類については、多少変化が生まれてくるようにも感じます。
別添資料
d83893-58-c01da71e318d44dabff28863337dfefd.pdf
■Studyplusトレンド研究所について
「Studyplusトレンド研究所」は、日本最大級の学習管理アプリ「Studyplus」のユーザーを通じて、次代を担う若者の「いま」を見つめるための研究所です。
若者の学校生活や学習・受験といった側面から、好きなアーティストや消費行動といった生活者の側面まで、これからの新しい時代の「トレンド」を研究していきます。
https://www.trend-lab.studyplus.jp/
■スタディプラス株式会社について
所在地:東京都千代田区神田駿河台2丁目5−12 NMF駿河台ビル4階
代表取締役:廣瀬高志
事業内容:学習管理アプリ「Studyplus」、若年層向けマーケティングソリューション「Studyplus Ads」、教育機関向けコミュニケーションプラットフォーム「Studyplus for School」の提供
設立:2010年5月20日
◾️公益財団法人山田進太郎D&I財団について
D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進を通じて、誰もが能力を発揮できる社会を目指し、2021年7月にメルカリCEO山田進太郎によって設立された公益財団法人です。 特にSTEM(理系)のジェンダーギャップに注目し、中高生女子のSTEM分野への進学やキャリア選択を支援する奨学助成金事業を展開しています。2024年より「Girls Meet STEM」事業を開始し、企業でのオフィスツアーや大学でのキャンパス・研究室ツアーを通じて、STEM領域で活躍するロールモデルとの交流機会を提供しています。プログラムは通年で開催され、対面およびオンライン形式で参加可能です。
代表理事:山田 進太郎(株式会社メルカリ 代表執行役 CEO)
設立年月日:2021年7月1日(木)
公益財団法人山田進太郎D&I財団公式ウェブサイト:
【一般のお問い合わせ先】
公益財団法人山田進太郎D&I財団事務局
Eメール:info@shinfdn.org
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