個々の肌の再生能力を予測するシステムを開発！
～ 肌の外部から内部の幹細胞を可視化する技術 ～
＊LC-OCT(Line-field Confocal Optical Coherence Tomography）
これまでの研究から、私たちの肌の再生には幹細胞が重要な役割を担っていることが分かっています。また、肌の幹細胞は、加齢にともない数の減少や状態の変化などがおこり、肌の機能や再生能力が低下していくことも明らかになってきました。これまで、このような肌の幹細胞の状態を解析するためには、一般的に病理学的手法により摘出した皮膚を用いることが必要でしたが、この手法では侵襲性をともなうため汎用的に実施するのは困難でした。そこで今回の研究では、肌を傷つけることなく、肌内部の幹細胞の数や分布を知ることで、その人の肌の状態や再生能力を見極める技術の開発を目指しました。
メナードでは、これまでの研究から、表皮幹細胞の形状が他の角化細胞と異なりラグビーボール状であることを見出しています。この情報を利用して、基底膜上にある細胞の中から幹細胞を見分ける独自のAIを開発しました。さらに、肌を傷つけることなくその内部構造を高解像度で観察できるLC-OCTの技術を用いて、得られた肌内部の３次元映像を先に開発したAIにより分析し、表皮の基底膜上にある幹細胞（表皮幹細胞）の数や分布を予測し可視化する技術を確立しました。
この技術は、再生医療前後の肌の状態変化の観察や肌の再生を促す有効成分の探索などへの応用が期待されます。
本研究の成果は2023年11月3日から5日にかけて札幌で開催された第32回日本バイオイメージング学会にて発表しました。
【参考資料】
1.表皮幹細胞がラグビーボール状をしていることを発見
幹細胞は、肌の再生を担う重要な細胞として、再生医療への応用や創薬研究のターゲットとして研究が進められています。これまでの研究から、肌に存在する幹細胞の数や状態が、肌の状態や組織の再生能力に大きく関係していることが分かってきました。つまり、個々の肌状態や肌の再生能力を見極めるためには、その人の肌の幹細胞の状態を知ることが必要になります。
そこで今回の研究では、20～80代の人の皮膚組織（20検体）に存在する表皮幹細胞と、角化細胞を含めた非幹細胞の形状（細胞の大きさや形など）について詳細に解析しました。
その結果、表皮幹細胞の高さの平均値は約12.50 μm、横幅の平均値は約7.56 μmであるのに対し、角化細胞の高さは平均値は約9.60 μm、横幅の平均値は約8.32 μmでした。解析した各細胞のアスペクト比（縦横比）を算出し、判別分析法による評価を行った結果、アスペクト比が1.55以上の細胞が表皮幹細胞として判断できることが分かりました。つまり、肌内部に存在している表皮幹細胞は角化細胞に比べて縦方向に長いラグビーボール状の形状をしていることが明らかになりました。
2.LC-OCTとAIを活用した非侵襲的な表皮幹細胞の検出方法の開発
これまで肌の幹細胞の状態を解析するためには、皮膚組織を摘出し病理学的手法を用いて解析することが一般的でした。しかしこの方法では、個々への負担が大きく汎用性に欠けるものでした。そこで我々は、昨今のイメージング技術の進歩に着目し、肌を非侵襲的に外部から内部の構造を高解像度でイメージングできるLC-OCT＊の技術を応用することを考えました。
LC-OCTは、組織の内部構造を細胞レベルでイメージングすることが可能です。そこで、先に解析した表皮幹細胞の形状に関するデータをもとに、形状から表皮に存在する幹細胞を見極める独自AIを開発し、LC-OCTで得た映像を今回のAIで分析することで、基底膜上に存在する表皮幹細胞を予測し可視化する技術を開発しました。
＊LC-OCT(Line-field Confocal Optical Coherence Tomography）
ラインフィールド共焦点光コヒーレンストモグラフィー。共焦点顕微鏡と光干渉断層計の組み合わせに基づくイメージング技術で、皮膚組織を細胞レベルで映像化できる非侵襲的な解析手法。
＜AI分析と表皮幹細胞の可視化について＞
具体的には、LC-OCTで得た映像をもとに下記の手順でAI分析を行い、表皮幹細胞を特定し基底膜上に3D CGとして可視化させます。
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