連続炭素繊維をリサイクルする基礎技術を開発
~エネルギー効率の向上や低炭素社会の実現に向けて~
旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎、以下「当社」)は、独立行政法人 国立高等専門学校機構 北九州工業高等専門学校と学校法人 東京理科大学と3者で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」に採択され、2021~2022年度を開発期間とした「自動車用炭素繊維サーキュラーエコノミー・プログラムの研究開発」と題したプロジェクト(以下、本プロジェクト)において、このたび、連続炭素繊維をリサイクルする基礎技術を開発したことをお知らせします。
- 背景
本プロジェクトでは、自動車から廃棄されるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)/CFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)由来の炭素繊維を、再びCFRP/CFRTPとして自動車に再利用する循環システムの社会実装を目指します。自動車から廃棄される炭素繊維を連続炭素繊維としてリサイクルすることで、高品質かつ安価なCFRTP提供による自動車軽量化、それに伴う省エネルギー効果が期待できます。また、日本がリードする炭素繊維と自動車業界への経済効果と競争力強化の実現を目指します。
- 取り組みの内容
本プロジェクトを実現するために、「電解硫酸法」を開発しました。「電解硫酸法」とは、硫酸を電気分解することで生成する酸化性活性種※3により、CFRP/CFRTPの樹脂成分を分解して、炭素繊維を取り出してリサイクルする技術です。この技術の特徴は、①全ての樹脂を分解できる、②リサイクルした炭素繊維の強度が低下しない、③炭素繊維を連続繊維としてリサイクルできる、の3点です。
そして、今回市販のスキューバダイビング用小型CFRP製タンクから連続繊維をリサイクルする基礎技術を開発しました。リサイクルした連続炭素繊維は「拠れ」、「毛羽立ち」などがなく、新品の炭素繊維と同様に扱う事ができます。そのため、再びフィラメントワインディング※4をすることで、Tank to Tankのサーキュラー・エコノミーが可能となります。
また、リサイクルした連続炭素繊維と当社のポリアミド樹脂「レオナ™」を用いたCFRTP-UDテープ(Uni-directional Tape、一方向連続繊維強化材料)の開発も進めております。CFRTP-UDテープは強度が金属より高く、今後自動車フレームやボディなどへの応用が期待されており、この技術を活用することにより自動車部品から自動車部品へのリサイクルが可能となります。
今後は、実証開発および事業開発を経て、2030年頃の社会実装を目指してまいります。
当社グループは、「Care for Earth」の観点から「カーボンニュートラルでサステナブルな世界の実現」を目指しており、バイオマス原料や再生原料、再生可能エネルギーの使用などの取り組みに注力しています。当社グループは、他社との協働を深化させながら、『中期経営計画 2024 ~Be a Trailblazer~』にもとづき、上記のような研究開発をより進めることで、社会や顧客からの期待に応えてまいります。
※1 チョップド炭素繊維:
長さ3~24mmの長さに切断した炭素繊維加工製品
※2 クローズドループ・リサイクル:
廃棄物を同等の品質を維持した材料として再生産し、再び製品へ採用する手法
※3 酸化性活性種:
強い酸化力を持つ物質で、樹脂を分解することができる
※4 フィラメントワインディング:
ロービング(連続繊維束)を引き揃え、樹脂を含浸させながら回転する金型に連続的に所定の角度で巻きつける成形方法
旭化成のエンジニアリングプラスチック総合情報について
https://www.asahi-kasei-plastics.com/
旭化成の炭素繊維強化ポリアミド樹脂UDテープについて
https://www.asahi-kasei-plastics.com/topics/udtape-01/
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