制裁対象のミャンマー軍所有企業と関係する日本の企業、政府貿易保険機関、官民投資ファンドはミャンマーの港湾事業から責任ある撤退を
ミャンマーでは大地震の後も、被災地の学校がミャンマー軍の空爆を受け子どもたちが殺害されるなど、同軍による残虐行為は続いています。
ミャンマー軍はビジネスから収入を得ていることが知られていますが、国連のミャンマーに関する事実調査団は2019年の報告書で、「ミャンマー国軍とその所有会社であるミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リミテッド(MEHL)やミャンマー経済公社(MEC)が参加する外国企業の活動はすべて 、国際人権法や国際人道法の違反の一因となる、またはそれらの違反と関連づけられる危険性が高い」と述べています。また、この報告書には、クローニー(政商)企業への言及もあります。ティラワ多目的国際ターミナル(TMIT)事業は、クローニー企業と関係があるものです。
日本とミャンマーの七つの市民団体は、上組、住友商事、豊田通商、また政府が出資するインフラ投資企業である海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、および日本貿易保険(NEXI)に対し、TMIT事業への関与について懸念を表明し、2021年2月1日にミャンマー軍が起こした未遂クーデター後に適切な人権デューデリジェンスを実施したかを問う書簡を送りました。書簡はまた、とくにミャンマー港湾公社(MPA)が2025年1月にティラワ多目的国際ターミナルの新たな長期運営主体について入札公告を出したことに照らし、同ターミナルからの撤退計画についても尋ねました。
回答が寄せられたものの不十分な点が多く、7つの市民団体はJOINおよび関係企業に対し、人権保護義務を果たす形でティラワ多目的国際ターミナル事業から完全に透明で責任ある撤退を行い、ミャンマー軍政にいかなる金銭的利益も与えないと確約することを求めます。また、すべての当事者が人権面の義務を果たすまで、今後の展開を注意深く監視し、公的な説明責任を求め続けます。
全文と各社への質問と回答は、下部を参照してください。
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日本とミャンマーの7つの市民社会団体は、日本の投資家、日本政府が出資する貿易保険機関、そして日本の官民インフラファンドに対し、ティラワ多目的国際ターミナル事業からの撤退において透明性を確保し人権基準を守るよう求めました。同ターミナルは、制裁を科されているミャンマー軍所有企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リミテッド(MEHL)との関係が証明されているエバー・フロー・リバー(EFR)グループというクローニー(政商)企業と共同で運営されてきました。
上記の市民団体は2025年3月19日に、上組、住友商事、豊田通商、また政府が出資するインフラ投資企業である海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、および日本貿易保険(NEXI)に対し、TMIT事業への関与について懸念を表明し、2021年2月1日にミャンマー軍が起こした未遂クーデター後に適切な人権デューデリジェンスを実施したかを問う書簡を送りました。書簡はまた、とくにミャンマー港湾公社(MPA)が2025年1月にティラワ多目的国際ターミナルの新たな長期運営主体について入札公告を出したことに照らし、同ターミナルからの撤退計画についても尋ねました。
ティラワ多目的国際ターミナルは、ミャンマーに対する日本の政府開発援助(ODA)の一環で建設されました。
上組はミャンマー港湾公社から運営権を取得したのち、JOIN、住友商事、豊田通商による合弁企業STJ Thilawa Terminal Co., Ltd. およびミャンマー企業である K Efficient Logistics Consortium Company Limited と共にティラワ多目的国際ターミナル社(TMIT)を設立し、TMITが2019年5月よりターミナルを運営してきました。 K Efficient Logistics Consortium Company Limited は、エバー・フロー・リバー(EFR)グループに含まれます。
EFRグループは、ヤンゴンの内陸水運施設開発のために、MEHLの子会社であるランピー・マリーン社とも提携しています。
国連のミャンマーに関する独立事実調査団(FFM)は、人権侵害を可能にするおそれがあることを理由に、いかなる企業もMEHLやその関連会社に関与するべきではないと具体的に勧告しました。MEHLは、米国、英国、EU、カナダ、オーストラリアによって制裁を科されており、ランピー・マリーン社もMEHLの子会社であるため制裁対象に含まれます。
上組、住友商事、豊田通商からは返信があり、ティラワ多目的国際ターミナル事業から撤退し、精算手続きを始めたことが確認されました。これら3社はまた、人権を保護し、撤退に際する従業員の転職などの支援を含めて従業員の安全を確保するための措置を講じたとも主張しました。
しかし、事業からの撤退が、OECD多国籍企業行動指針や国連ビジネスと人権に関する指導原則を含む国際的な人権基準を満たしているかについての詳細は明らかにされていません。事業の資産がどのように処理されるかや、コンセッション契約解除に伴う違約金の支払いによりミャンマー軍政が利益を得るのか、また事業からの今後の収入がミャンマー軍と関係のある事業体に流れるのをどう防ぐのかについても透明性が欠如しています。
JOINからはいまだに実質的な回答がありません。公的資金で投資を行う機関が公的な説明責任を果たしていないことは、深く懸念されます。
ティラワ多目的国際ターミナル事業において付保を行ったNEXIは回答で、同事業を「負の環境影響が最小限か、または全くない」ものに分類したこと、したがって環境レビューを実施しなかったことを明らかにしました。NEXIはまた、同事業に対する貿易保険の責任期間が終了しているとも述べました。しかしNEXIは、OECD多国籍企業行動指針を守ると明言しているにも関わらず、同事業の人権に対するリスクについては言及しませんでした。
上記7団体は、JOINおよび関係企業に対し、人権保護義務を果たす形でティラワ多目的国際ターミナル事業から完全に透明で責任ある撤退を行い、ミャンマー軍政にいかなる金銭的利益も与えないと確約することを求めます。
また、すべての当事者が人権面の義務を果たすまで、今後の展開を注意深く監視し、公的な説明責任を求め続けます。
メコン・ウォッチの木口由香事務局長は次のように述べました。「ミャンマーにおけるリスクの高い事業からの撤退は、通常のビジネス上の決定と同様に扱われるべきではない。関係する企業や公的機関には、撤退がミャンマーの軍政やクローニーに金銭的な利益をもたらさないようにする義務がある。JOINから回答がないことや、NEXIが事業によるリスクを狭く解釈していることは、責任ある企業行動からはかけ離れている」
ジャスティス・フォー・ミャンマーのヤダナーマウンは次のように述べました。「ミャンマー軍は残虐行為を続けており、3月にミャンマーを襲った大地震の後にも空爆を激化させている。人権を尊重しない不透明な撤退は、残虐行為を悪化させるおそれがある。関係企業と日本政府は、人権基準・規範に沿って、軍政による国際犯罪への加担をどのように回避しているのかを明らかにしなければならない」
2025年3月19日付の質問状に対する回答(日本語)
アーユス仏教国際協力ネットワーク
アジア太平洋資料センター(PARC)
国際環境NGO FoE Japan
ジャスティス・フォー・ミャンマー
日本国際ボランティアセンター(JVC)
武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
メコン・ウォッチ
連絡先
メコン・ウォッチ 木口由香 contact@mekongwatch.org
ジャスティス・フォー・ミャンマー ヤダナーマウン media@justiceformyanmar.org
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