日立、自動運転車両の運行管制システムを開発、実フィールドでの実証にて有用性を確認
複数の自動運転車両を安全かつ効率的に運行管理する技術を通じて、持続可能な未来の都市交通づくりに貢献

株式会社日立製作所(以下、日立)は、地域交通の運転手不足や移動困難者の増加などの社会課題の解決に向けて、長年、社会インフラを支える事業の中で培った知見を活かし、モビリティ向けのフィジカル AIとデータ収集・管理基盤の技術を融合した自動運転車両の運行管制システムを開発しました。自動運転車両を活用した交通サービスの社会実装を進めるためには、複数車両を安全かつ効率的に運用する「運行管制」の仕組みが必要です。しかし技術的には、定時性を支える運行計画の自動調整、運行における突発事象発生時の迅速な状況把握と対応、そして道路環境の異常検知や車両の遠隔監視を含む運用・保守の省人化といった課題がありました。それに対して日立が開発した本システムは、AIによるリアルタイム解析に基づいて運行計画案を自動で作成し、運行管制に反映することで、高効率かつ定時性の高い運行を実現します。さらに、デジタルツイン技術および遠隔監視支援AIを活用することで、走行環境の安全性評価と少人数オペレーションによる運用負荷低減の両立を図ります。2026年3月下旬に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの自動運転バス路線を実フィールドとして活用して検証を行い、その有用性を確認しました。この結果をもとに、中長期で研究・開発を進め、データ収集・管理基盤の技術を社会インフラ全体とも連携させながら、本システムの社会実装をめざします。その一環として、日立市と推進している「次世代未来都市共創プロジェクト」のグランドデザイン*1に基づき、日立市の公共交通への社会実装に取り組み、持続可能な都市交通の実現に貢献します。
*1 日立市と日立製作所が、2035年の「日立市の公共交通の将来像」としてグランドデザインを描きました:2024年11月22日
背景および課題
地域交通では、運転手不足や従事者の高齢化により、サービスの維持が難しくなりつつあります。加えて、人口減少に伴う利用者の減少により、路線の縮小や廃止も進んでいます。その結果、住民の移動手段を持続可能な形で再構築していくことが課題となっています。こうした背景から、自動運転車両を活用した交通サービスの社会実装に向けて、産官学で技術開発が進められています*2。実装においては、車両の走行技術だけでなく、効率的な運用体制の確立が重要です。例えば一般的な地域バス事業では、数十〜100台規模の車両を広域の多数区間で走らせているため、全車両の運行・管理を支えるシステムの構築が求められています。しかし、こうした規模で自動運転車両を運用するには、遅延や交通状況の変化に応じた運行計画の自動調整、車両・環境情報を踏まえた突発事象への即時対応、少人数で車両を効率的に監視できる運用体制などの課題が残っています。そのため、現在の交通サービスでは、複数車両の運行を安定的かつ効率的に一元管理・運用する仕組みは十分に確立されていません。
*2 経済産業省・国土交通省「自動運転レベル4等先進モビリティサービス 研究開発・社会実装プロジェクト」
課題を解決するために開発した技術の特長
そこで日立は、これらの課題を解決するため、社会インフラを支える事業の中で培った、複数の設備やシステムの個々の現場状況に合わせて全体を最適化するノウハウとAIを活用し、新たな自動運転車両の運行管制システムの開発に取り組みました。本システムでは、以下の3つの技術を組み合わせ、複数車両の運行を支える仕組みを構築しています。
1. 高効率かつ定時性の高い運行を実現するダイナミック運行管理技術
社会インフラ分野で培った最適化・予測技術とAIの融合により、自動運転車両の速度をリアルタイムに計画し、制御指示を送信します。最新の遅延状況や大域的な交通状況を考慮した効率の良い運行が可能になるため、交通事業者は運行停止や遅延拡大リスクを低減でき、サービス品質の向上に繋がります。
2. 安全な運行を支える走行環境デジタルツイン×影響予測AI技術
実世界の車両や道路などの走行環境を3Dで再現しつつ、日々の変化を可視化するデジタルツイン技術と、変化が与える自動運転への影響を予測するAI技術を統合します。これにより、運行に支障をきたす変化の検知によるリスク回避や、走行環境の点検や保守に必要なコストの削減を可能にします。
3. 少人数オペレーションを支える遠隔監視支援AI技術
AIを活用したシーン分析によって、遠隔監視者による支援や駆けつけ要員による現場支援の要否を推定することで、監視者の意思決定や業務を支援します。これにより、交通事業者は少人数でも車両の効率的な監視・整備業務が可能となり、運行管理全体の業務効率化とスムーズな運用を実現します。
実証実験の結果
2026年3月下旬、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパスにて実証実験を実施しました。本実験では、将来の複数車両運行に向けた基礎検証として、単一車両の効率的な運行管制を主眼に、「ダイナミック運行管理」、「デジタルツインによる走行環境評価」、「AIによる遠隔支援」といった機能の有用性を評価しました。具体的には、ダイナミック運行管理では、一時的な遅延が生じた場合においても、後続の運行への影響を最小限に抑えられることが示されました。同大学内で設定した実証ルートおよび時刻表条件のもと運行した結果、乗降対応や歩行者横断などによる遅延発生時であっても、その時点の走行状況を踏まえて運行計画をリアルタイムに見直せることを確認しました。また、デジタルツインによる走行環境評価では、同大学内の走行環境を3D空間上に再現・評価する技術と、周辺状況を解析するAIを組み合わせることで、道路工事や駐車車両など運行に支障をきたす環境変化が検知でき、その有用性を確認しました。さらに、AIによる遠隔支援では、自動運転車両の走行状況解析により、遠隔オペレーターなど人による現場支援の要否を約90%という高い精度で判断できることを実証しました。

今後の展望
今後は、大学内での実証に留まらず、日立市における実証および2030年度の社会実装をめざして研究・開発を段階的に進めます。具体的には、今回の実証成果を踏まえ、複数車両における統合的な運行管理へと拡張するとともに、走行環境に関わるデータ収集・管理基盤の構築を加速します。さらに、自治体や交通事業者との協創により、バス加えオンデマンド交通やドローンなど多様なモビリティへと適用を広げ、運行・保守のデータ連携を社会インフラ全体へ波及させていく方針です。これらの取組みを通じて得られる運行管制に関するナレッジは、Lumada 3.0のさらなる成長を支える技術の一つとしても活用します。また日立が推進する、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi」を支えるフィジカルAI統合モデル「Integrated World Infrastructure Model (IWIM)」に反映し、社会インフラの安全性と持続的な革新に繋げます。
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関連情報
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