【年収200万円未満】この2年半でひとり親家庭の収入と正規雇用の割合がさらに減少
「これ以上、生活が困窮することを考えると…」「収入もなく、借金ばかりが増えていってしまいます」
ひとり親家庭を対象としたフードバンク事業「グッドごはん」を運営する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン(東京都大田区)は、2022年4月から5月にかけて、食品支援の利用登録者を対象に2021年の年収に関するアンケート調査を行いました。 2019年に行った同様の調査と回答を比較した結果、ひとり親家庭は2年半前よりさらに厳しい経済状況に置かれていることが分かり、新型コロナウイルスの影響が明るみに出る結果となりました。
【ひとり親家庭を対象とした年収に関するアンケート調査について】
アンケートに回答したのは、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営する、ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を利用する「ひとり親家庭等医療費受給者証(※)」を持つ首都圏および近畿圏のひとり親です。
(※)ひとり親家庭等医療費受給者証:18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証
【調査結果】
①2019年調査と2022年調査の世帯収入の比較
〇質問
児童扶養手当等の各種手当・養育費・同居家族の収入(子どものアルバイト含む)、あなたの就労収入も含めた2021年の収入の合計(世帯収入)はいくらですか?
さらに、100万円未満であると回答した人の割合は11%から23%に増加しています。
②2022年調査・世帯収入について不安なこと
〇質問 :世帯収入について、不安や心配に思うことを教えてください。
回答は多岐にわたり、生活の様々な場面で不安を感じているひとり親家庭の現状が見えました。特に、新型コロナウイルスの影響も相まって自身の仕事のことに関する不安の声が目立ちました。
仕事に関する声
また、子どもの教育資金・食費への不安は常にひとり親を悩ませています。特に2022年以降の著しい物価上昇は、新型コロナウイルスによる年収減少と相まって大きな痛手となっています。生鮮食品やエネルギー関連など「生活に欠かせないもの」ほど物価上昇の傾向が顕著で、所得が低ければ低いほど、影響を受けやすい現実があります。
食費に関する声
教育に関する声
厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査」によれば、児童のいる世帯の平均所得(※)は約745万円ですが、グッドごはん利用者の半数以上は年収200万円未満での生活を送っています。子どもの教育や食事にかかる費用は削りたくない、というのが親の本音です。しかし、新型コロナウイルスによる世帯収入の減少で、3食の食事さえままならない家庭が増えています。
(※)就労収入のほか、児童手当等の社会保障給付金、その他の収入も含む。
③2022年調査・就労形態と就労収入(※)
(※)利用者であるひとり親自身が働いて得た収入を指します。
〇質問:2021年12月時点での就労形態を教えてください
〇質問:あなたの就労による2021年の収入はいくらですか?
〇新型コロナウイルスに関連する不安の声
【ひとり親家庭への支援】
今回のアンケート調査では、児童扶養手当などの支援制度に関する声も寄せられました。
子どもの成長は喜ばしいことなのに、成長すればするほどお金がかかり生活が苦しくなる…という現実は、ひとり親の抱える大きな不安の一つです。特に給付金額が大きく、最強のセーフティーネットと呼ばれる児童扶養手当は子どもが18歳になる年までが対象で、大学の進学時期に給付が終わってしまいます。
経済的な理由で大学進学を諦める低所得家庭は多く、親の年収が高いほど4年制大学への進学率が高いという研究結果があります(高校生の進路追跡調査 第1次報告書/東京大学大学院教育学研究科 大学経営・政策研究センター)。
そして、大卒の方が高卒よりも給料水準が高いことは私たちの生活の実感としても明らかですが、厚生労働省の調査でも報告されています。(令和3年賃金構造基本統計調査)
こうした状況で、ひとり親を含む低所得者層への補助金や一時支援金等を拡充することは、貧困のサイクルを止めるための重要な一手です。
「サラリーマンの夫と専業主婦の妻、そしてその子ども」に代表される家父長制を基本とした家族モデルは、今や崩壊しつつあります。多様な家族のあり方や生き方がある中、ひとり親家庭はその一つです。支援制度の拡充や社会構造の改革を通して、ひとり親やその子どもが生きやすい社会を作り上げていくことは、これからの日本で「誰もが生きやすい社会」を作ることにつながると考えます。
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
私たちグッドネーバーズ・ジャパンは「子どものこころと身体を守る団体」として、ひとり親が抱える不安の一つである「食」に関する支援を行っています。ひとり親家庭の子どもがご飯をお腹いっぱい食べられるように、フードバンク事業「グッドごはん」を通して食品の配付を行っています。
「グッドごはん」とは、主に首都圏および近畿圏のひとり親家庭(※)を対象に、食品を無料で配付する事業です。企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食料を毎月ひとり親家庭に配付しています。 できる限り多くの食品を希望する全ての方にお渡しするため、現在、毎月4000世帯に食品を提供する体制を作ることを目標に配付拠点を増やし、食品の寄付を募集しています。
(※)当事業の対象者は、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭で、通常は首都圏および近畿圏の配付拠点に直接取りに来られる方を対象としています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
アンケートに回答したのは、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営する、ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を利用する「ひとり親家庭等医療費受給者証(※)」を持つ首都圏および近畿圏のひとり親です。
(※)ひとり親家庭等医療費受給者証:18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証
- アンケート名:【グッドごはん】2021年の収入に関するアンケート
- 実施日:2022年4月13日~5月15日
- 対象者:「グッドごはん」に利用登録している首都圏および近畿圏の利用者・3,297名(20代~50代)(首都圏は主に大田区、品川区、その他東京・神奈川・埼玉・千葉 / 近畿圏は主に大阪府を指す)
- 有効回答数:594名(回答率18%)※回答は無記名方式
【調査結果】
①2019年調査と2022年調査の世帯収入の比較
〇質問
児童扶養手当等の各種手当・養育費・同居家族の収入(子どものアルバイト含む)、あなたの就労収入も含めた2021年の収入の合計(世帯収入)はいくらですか?
世帯収入が200万円未満であるひとり親の割合は2019年調査では47%でしたが、2022年調査では54%に増加し、グッドごはん利用者の半数以上が年収200万円未満で生活を送っているということが分かりました。
また、2022年の調査結果を地域別にみると、近畿圏では60%もの利用者が世帯収入200万円未満であると回答しています。この年収の減少は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う失業・減収の影響が大きいと推察されます。さらに、100万円未満であると回答した人の割合は11%から23%に増加しています。
②2022年調査・世帯収入について不安なこと
〇質問 :世帯収入について、不安や心配に思うことを教えてください。
回答は多岐にわたり、生活の様々な場面で不安を感じているひとり親家庭の現状が見えました。特に、新型コロナウイルスの影響も相まって自身の仕事のことに関する不安の声が目立ちました。
仕事に関する声
- 職場がコロナで閉店し、近くの店舗に配属したが、コロナ前のようには働けない。
- コロナの影響で給料がいくらか下り、契約もいつまで更新してもらえるか解らない先行が不安
- 貯蓄もなくこの春高校入学した子供にかなりの金額がかかってしまい、借金を重ねてしまいました。収入もなく、借金ばかりが増えていってしまいます。この先返済していかないといけないのと、生活費を稼いで行かなければならないのですぐにでも働きたいのですが、職安で紹介され、履歴書を送付しても面接まで辿り付かないのが現状です。
- 収入は減っているのに、物価が上がり生活が大変です。このままいくと貯金も無くなるので、仕事を変わろうと思っても、採用されず焦ります。
また、子どもの教育資金・食費への不安は常にひとり親を悩ませています。特に2022年以降の著しい物価上昇は、新型コロナウイルスによる年収減少と相まって大きな痛手となっています。生鮮食品やエネルギー関連など「生活に欠かせないもの」ほど物価上昇の傾向が顕著で、所得が低ければ低いほど、影響を受けやすい現実があります。
食費に関する声
- このまま子ども達が大きくなり中学生になったら、餓死してしまいそうです
- 今は収入のほとんどが食費に消えます。食べ盛りの男の子3人分を賄うのは非常に厳しく、不安以外ないです。
教育に関する声
- 週6で働いて、仕事が休みの日には日雇いバイトに行ったりもしていますが、生活費で消えてしまい、子どもたちの大学への進学資金に回すことができません。
- 現在収入は児童扶養手当や子どものアルバイト代等で賄っておりますが、高校生が3人いるため、この先の進路で大学進学の夢を叶えてあげられるのか、とても不安です。
- 今はなんとか生活出来ているがこの先高校生等になった時の出費がどうなってるかが不透明なので不安がある。
- 生活にいっぱいいっぱいなので、これから先の進学費用が作れるか心配です。
厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査」によれば、児童のいる世帯の平均所得(※)は約745万円ですが、グッドごはん利用者の半数以上は年収200万円未満での生活を送っています。子どもの教育や食事にかかる費用は削りたくない、というのが親の本音です。しかし、新型コロナウイルスによる世帯収入の減少で、3食の食事さえままならない家庭が増えています。
(※)就労収入のほか、児童手当等の社会保障給付金、その他の収入も含む。
③2022年調査・就労形態と就労収入(※)
(※)利用者であるひとり親自身が働いて得た収入を指します。
〇質問:2021年12月時点での就労形態を教えてください
2022年の調査では、グッドごはん利用者の56%がパートやアルバイトなどの非正規雇用で働いていると回答しています。シフト制の仕事で収入が安定しないことはもとより、新型コロナウイルスの影響によってシフトの削減や、子どもの休校対応により仕事が減ってしまったという回答が多数見られました。
2019年の調査結果と比較してみると、非正規雇用の割合が51%から56%に増えたことに加え、正規雇用の割合が37%から21%にまで減っていることが分かります。〇質問:あなたの就労による2021年の収入はいくらですか?
2021年の就労収入が全くないと回答した人は今回の調査で13%に上りますが、その中には「コロナによる解雇」という経緯を持っている人も含まれています。新型コロナウイルスによる不況で社会全体が影響を受けましたが、非正規雇用で働くひとり親はその影響を特に受けました。また、新型コロナウイルス感染拡大に伴うこどもの休校・休園によって、仕事を休まざるを得ず収入が激減したという声も少なくありません。
〇新型コロナウイルスに関連する不安の声
- コロナの影響で収入が不安定になりはじめ、転職して頑張ろうと思った矢先、次は学校や保育園にまでコロナの影響で欠勤が多くなり、また収入が不安定なりました。結局その後、欠勤や収入やその他諸々の不安やストレス等で昨年末からメンタルの病気で退職することになり収入が0になりました。
- 飲食業なので…何度も何度も休業になったり、子供が小さいのでコロナで休校や感染などで…仕事を休まないと行けなかったり…まともに働けていません。
- 去年はコロナ不況で雇い止めになり、今年は再就職しましたが親子でコロナ感染して収入減。
- コロナで学級閉鎖になり仕事を休んで給料が減ったり、値上げが家計を圧迫して行くのが不安に思います。
- 先月は親子でコロナ感染し、1ヶ月のパート代が飛んでしまいました。正社員時代と違い、保証が無くとても不安でした。今は後遺症もあり、なんとか復帰していますが倦怠感があり不安は続いています。
- 大黒柱の私の収入がコロナ前に比べて1/4にまで減っている。
【ひとり親家庭への支援】
今回のアンケート調査では、児童扶養手当などの支援制度に関する声も寄せられました。
- 子供が大きくなるにつれて手当がなくなっていくのが怖いです。多子世帯への支援が増えたらいいなって思います。
- 男の子3人います。学用品と食費が年々増えますが手当は減ってくるので厳しいです。
- 養育費が主な収入ですが、子供の年齢が上がるにつれて 養育費、子供手当て、児童扶養手当が消滅していくので、なおかつ進学も伴うのでこの先、生活できるか不安です。
子どもの成長は喜ばしいことなのに、成長すればするほどお金がかかり生活が苦しくなる…という現実は、ひとり親の抱える大きな不安の一つです。特に給付金額が大きく、最強のセーフティーネットと呼ばれる児童扶養手当は子どもが18歳になる年までが対象で、大学の進学時期に給付が終わってしまいます。
経済的な理由で大学進学を諦める低所得家庭は多く、親の年収が高いほど4年制大学への進学率が高いという研究結果があります(高校生の進路追跡調査 第1次報告書/東京大学大学院教育学研究科 大学経営・政策研究センター)。
そして、大卒の方が高卒よりも給料水準が高いことは私たちの生活の実感としても明らかですが、厚生労働省の調査でも報告されています。(令和3年賃金構造基本統計調査)
新型コロナウイルスによる影響を受けたこの2年半で、グッドごはん利用者の収入が減少あるいは失業した背景には、子どものいる女性が働く際の選択肢が少なく、収入の不安定な非正規雇用でしか働きにくいという社会構造があります。また年収が減っている一方で、2022年から食品や日用品の価格が高騰し、ますます生活が苦しくなっています。
こうした状況で、ひとり親を含む低所得者層への補助金や一時支援金等を拡充することは、貧困のサイクルを止めるための重要な一手です。
「サラリーマンの夫と専業主婦の妻、そしてその子ども」に代表される家父長制を基本とした家族モデルは、今や崩壊しつつあります。多様な家族のあり方や生き方がある中、ひとり親家庭はその一つです。支援制度の拡充や社会構造の改革を通して、ひとり親やその子どもが生きやすい社会を作り上げていくことは、これからの日本で「誰もが生きやすい社会」を作ることにつながると考えます。
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
私たちグッドネーバーズ・ジャパンは「子どものこころと身体を守る団体」として、ひとり親が抱える不安の一つである「食」に関する支援を行っています。ひとり親家庭の子どもがご飯をお腹いっぱい食べられるように、フードバンク事業「グッドごはん」を通して食品の配付を行っています。
「グッドごはん」とは、主に首都圏および近畿圏のひとり親家庭(※)を対象に、食品を無料で配付する事業です。企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食料を毎月ひとり親家庭に配付しています。 できる限り多くの食品を希望する全ての方にお渡しするため、現在、毎月4000世帯に食品を提供する体制を作ることを目標に配付拠点を増やし、食品の寄付を募集しています。
(※)当事業の対象者は、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭で、通常は首都圏および近畿圏の配付拠点に直接取りに来られる方を対象としています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
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