医療機器コーティング材で医療分野の発展に貢献!~生体適合性・力学特性を兼ね備えた水系ポリウレタン樹脂を開発~
第一工業製薬(本社:京都市南区、代表取締役社長:山路直貴)は、自社技術を生かしたライフサイエンス分野への研究開発に注力しています。
このたび、国立大学法人九州大学(所在地:福岡市西区、総長:石橋達朗)先導物質化学研究所の田中賢教授らとの共同研究成果をもとに、生体適合性を有する水系ポリウレタン樹脂※1を開発しました。
これにより、従来の医療機器コーティング材の課題を解決し、医療分野の発展に貢献してまいります。
当社は、中期経営計画「FELIZ 115」でライフサイエンス分野の新規事業開拓に注力しています。
生体内に使用する医療機器表面には「生体適合性※2」、特に血液と接触する場合には「抗血栓性※3」が求められます。現在、Poly (2-methoxyethyl acrylate) (PMEA) やPoly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine) (PMPC) が抗血栓性コーティング材として使用されていますが、PMEAは柔らかすぎて成型できない、PMPCは水溶性で表面から溶出する課題があります。
今回、九州大学先導物質化学研究所の田中賢教授が提唱する「中間水コンセプト※4」をもとに、ポリオール、ポリイソシアネート、親水基の構造を最適化し、抗血栓性を有する水系ポリウレタン樹脂の開発に成功しました。
本材料はポリウレタン樹脂特有の優れた力学物性を有し、非水溶性で、従来の抗血栓性コーティング材と同程度に血小板の粘着を抑制します。
また、構造の調整により皮膜の柔軟性や強度も調整可能です。
さらに本材料は、タンパク質吸着抑制能および細胞非接着性を示すことから、防汚材としての利用や再生医療への応用も期待できます。
今後、用途に合わせた物性のカスタマイズや性能評価を進めるとともに、サンプル提供を行い、ライフサイエンス分野を含む幅広い用途での展開をめざします。
【用語解説】
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水系ポリウレタン樹脂:ポリウレタン樹脂を乳化、水に分散させたもの。
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生体適合性:材料と生体組織に親和性があり、材料の接触時に異物反応や拒絶反応などを生じない機能。
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抗血栓性:生体適合性の中でも、血液と材料が接触した際に血栓が発生しない機能。血栓は血液が凝固することで発生し、血栓によって医療機器内のチューブが詰まる、微小血栓によって血管が詰まり脳塞栓症などの重篤な疾患を引き起こすなどの問題がある。
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中間水コンセプト:生体分子や医療機器は生体内で含水状態に あり、その表面には水和層が形成される。表面に吸着した水分子は、以下の3種類に分類され、生体を構成する生体分子および生体適合性に優れた合成高分子には中間水が形成されるというコンセプト。
① 不凍水:表面に強く結合し分子運動性が低下した水分子
② 自由水:表面に弱く結合し分子運動性が高い水分子
③ 中間水:自由水と不凍水の中間的な性質を示す水分子
【本リリースについてのお問い合わせ先】
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