マーサー 「グローバル年金指数ランキング」(2020年度)を発表

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が将来の年金制度に与える影響を浮き彫りに

マーサージャパン株式会社

 
  • マーサーCFA協会グローバル年金指数では、 世界人口のほぼ3分の2を網羅する、39 ヵ国の年金制度を比較検証
  • オランダとデンマークはそれぞれ1位と2位の座を維持し、「A」ランクを獲得
  • 新たに調査対象として追加されたイスラエルはオーストラリアに代わって3位
  • 日本の年金制度は39ヵ国中32位
  • 将来の年金支給の観点からみると、COVID-19は、拠出金の減少、投資収益率の低下、政府債務の増加等の悪影響を誘因

COVID-19による経済への影響は広範囲にわたり、現在及び将来の年金受給者が直面する財政的な圧力が高まりつつある。第12回マーサー CFA協会 グローバル年金指数によると、平均寿命の延びやそれに伴う高齢者の健康と福祉を支える公共資源への圧力の高まりに加え、COVID-19の影響により、退職後の生活はさらに不安定さを増している。

マーサーのシニアパートナーであり、当研究の筆頭著者であるDavid Knox博士は次のように述べている。

「世界的な健康危機によって引き起こされた経済不況により、大半の国で年金拠出額は減少し、投資収益は低下、また政府債務は増加しました。これは必然的に将来の年金にも影響を与えることになり、人々はこれまでより長い期間働かざるをえなかったり、老後の生活水準を低く設定せざるを得ないような状況を余儀なくされるかもしれません。退職者がより豊かな長期的成果を確実に得られるようにするためには、各国政府が制度の長所と短所を見直すことが不可欠です」

CFA協会会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるMargaret Franklin氏は、下記のように述べている。

「COVID-19以前から、世界中の多くの公的および私的年金制度では、給付を維持するための圧力が高まっていました。私たちは年金制度の有効性については長年にわたって多くのことを学んできました。すべての国において有効な単一の年金制度モデルはありませんが、グローバル年金指数は、各国で何が可能で何が実用的なのかを比較検討するための情報を提供しています。CFA協会が今年のグローバル年金指数のスポンサーを務めさせていただいたことは誠に光栄です。この共同の取り組みを通じて、この指数による分析がさらに各国の年金制度へ多くの影響を及ぼすようになることを期待しています」

COVID-19が年金制度の将来に与える影響

COVID-19が及ぼす影響は健康面だけにとどまらず、はるかに広範囲に及ぶ。 すなわち、今後長期にわたり各産業、金利、投資収益、地域社会の信頼性(コミュニティ・コンフィデンス)などに経済的な影響を及ぼすと考えられる。その結果、十分かつ持続可能な給付を長期的に提供する現在までの年金制度にも変化が生じている。

COVID-19以降、多くの国で政府債務の水準が上昇している。この債務の増加により、将来の政府が、年金、あるいは医療や高齢者介護などのサービスの提供を通じて高齢者を支援する政策が制限される可能性が高い。

COVID-19の影響軽減のため、各国政府は国民や年金制度に関する多様な支援策を展開した。

モナッシュ金融研究センター(MCFS)のディレクターであるDeep Kapur教授は、COVID-19を受けて各国政府は大幅な財政刺激策を打ち出しており、また各中央銀行は型に嵌らない金融政策を採用していると述べ、さらに以下のように続けた。

「ボラティリティが上昇する可能性がある一方で投資収益の見通しは控えめであり、これは年金ポートフォリオにおいて新たなリスク管理事項となります。さらに一部の政府は、家計の資金流動性改善のため、年金貯蓄の一時引き出しを許可したり、強制拠出率の水準を引き下げたりしています。これらの動きは、年金制度の十分性、持続性、健全性に重大な影響を与える可能性が高く、それによって今後数年間のグローバル年金指数の推移に影響を及ぼすでしょう」

例えば、オーストラリアでは、収入が20%以上減少した個人が年金資産から最大20,000豪ドル(約13,000米ドル)まで引き出せるようにしたほか、チリでは、現役の拠出者が個人の年金積立額の10%、最大5,600米ドルまで引き出すことができるようにした。

「興味深いのは、グローバル年金指数で上位2位を占めたオランダとデンマークが、それぞれの年金制度の資産が国のGDPの150%以上であるにもかかわらず、年金積立金の早期引き出しを認めていないことです」とKnox博士は述べた。

また、COVID-19により、年金支給における男女間格差も拡大している。

「COVID-19が世界経済を混乱させる前でさえ、多くの女性は男性よりも少ない年金貯蓄で老後を迎えていました。今日、多くの年金制度でその格差はさらに拡大すると予想されています。特に接客サービス産業や外食産業など最も深刻な打撃を受けている産業では労働人口の半分以上を女性が占めており、格差拡大傾向が顕著です」とKnox博士は付け加えた。

現行の年金制度から将来の年金支給の可能性を測定する持続性のサブ指数は、多くの年金制度の弱点を引き続き浮き彫りにしている。COVID-19により殆どの国で経済はマイナス成長となったため、2020年の持続性指数の平均値は1.2低下した。

数値による分析

オランダは大幅な年金改革が断行されているにもかかわらず指数が最も高く(82.6)、総合ランキングではトップの座を維持している。最も指数が低かったのはタイであった(40.8)。各サブ指数で最も高い指数値となったのは、十分性ではオランダ(81.5)、持続性ではデンマーク(82.6)、健全性ではフィンランド(93.5)であった。最低指数値は、十分性ではメキシコ(36.5)、持続性ではイタリア(18.8)、健全性ではフィリピン(34.8)だった。

今回の日本の結果について、マーサージャパンのプリンシパルである北野信太郎は次のようにコメントしている。

「本指数は老後の所得補償の観点から、各国の年金制度を比較・評価していますが、そこで浮き彫りになった課題に対応しようとすると、どうしても雇用との関係を考えざるを得ません。例えば、日本の指数を改善するための策として、公的年金の支給開始年齢の引き上げが挙げられていますが、これは高齢人材の雇用をどうするか、という問題とセットで考えねばなりません。今年の5月には、世界経済フォーラムとマーサーが共同で「Redesigning Retirement」というイベントをアジア地域で実施しましたが、そこに出席された日系企業の人事関係者からは、高齢人材の多くは企業が求めるスキルや能力を持ち合わせていない、との厳しい指摘を数多く受けました。「雇用の保障」には実に多くの観点が関係するため、単に本指数の点数を上げること一つとっても、老後の生活保障の観点だけでなく、包括的な視点からのアプローチが求められると考えています」

マーサーCFA協会グローバル年金指数について

グローバル年金指数(旧名称はマーサー・メルボルン・グローバル年金指数)は、世界各国の年金制度のベンチマークとして、各制度の弱点を浮き彫りにし、より充実した、持続可能な年金給付を提供するために改革すべき領域を示している。グローバル年金指数は、投資プロフェッショナルの世界的団体であるCFA協会(https://www.cfainstitute.org/)がスポンサーを務め、モナッシュ金融研究センター(MCFS)(https://www.monash.edu/business/mcfs)とプロフェッショナルサービスを提供するマーサー (仕事そのものを再定義し、退職制度や年金の投資成果を再構築するグローバルリーダー)が共同で実施する研究プロジェクトである。

当該指数は今年度、世界の人口のほぼ3分の2を網羅する39ヵ国の退職制度を比較検証している。2020年度の指数は調査対象として新たにベルギーとイスラエルの制度を追加した。
 各国の制度の総合指数は、「十分性 (Adequacy)」、「持続性 (Sustainability)」、「健全性 (Integrity)」に大別される50以上の項目から構成され、この3つのサブ指数を加重平均して算出している。2020年度のグローバル年金インデックスでは、年金への公的支出、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資、介護者の支援などに関する新たな質問項目を採用した。

マーサーCFA協会グローバル年金指数の詳細についてはこちら(https://www.mercer.co.jp/newsroom/2020-global-pension-index.html)をご参照ください。

マーサー CFA協会 グローバル年金指数ランキング(2020
 




CFA協会について
CFA協会は投資専門職の卓越性と資質の基準を設定する投資専門家の世界的な団体です。同協会は投資市場における倫理行動の推進者であり、世界の金融業界における知識の発信者として高い評価を得ています。投資家の利益が優先され、市場が最良の状態で機能し、経済が成長する環境を生み出すことを最終目標としています。また、世界の162の国と地域で178,000名を超える会員(CFA資格者)を有し、世界各地に9つの支部を持ち、159のメンバーソサエティが所属しています。詳細はwww.cfainstitute.org 、ツィッター(@CFAInstitute)またはFacebook.com/CFAInstituteをご覧ください。

モナッシュ金融研究センター(MCFS)について
モナッシュ金融研究センター(MCFS)は、オーストラリアのモナッシュ大学ビジネススクールの研究センターで、金融業界における実践上の研究課題に学術的厳密さを持たせることを目指しています。また、エンゲージメントプログラムを通じて、学者と実務家の間の双方向の知識交換を促進しています。同センターの研究テーマは多岐にわたっていますが、現在は退職後に向けた資産形成、持続可能な金融、技術のディスラプションなど、資産運用業界に関連する問題に重点を置いています。


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マーサーについて
マーサー(https://www.mercer.co.jp/) はより輝かしい未来は築くことができるものと信じています。私たちはクライアントと共に、仕事そのものを再定義し必要な改革に導き、退職制度や年金の投資成果を再構築します。そして、真の健康とウェルビーイングへと導くビジョンを掲げています。全世界約25,000名のスタッフが44ヵ国をベースに、130ヵ国以上でクライアント企業と共に多様な課題に取り組み、最適なソリューションを総合的に提供しています。マーシュ&マクレナン(NYSE:MMC)グループの一員として、日本においては 40年以上の豊富な実績とグローバル・ネットワークを活かし、あらゆる業種の企業・公共団体に対するサービス支援を行っています。

マーシュ&マクレナンについて
マーシュ&マクレナン(ニューヨーク証券取引所コード: MMC)は、グローバルプロフェッショナルサービスを提供する企業グループとして、顧客企業にリスク、戦略、人材分野の助言とソリューションを提供しています。マーシュ(保険仲介とリスクマネジメント/https://www.marsh.com/jp/)、ガイ・カーペンター(再保険仲介・コンサルティング/http://www.guycarp.com/)、マーサー (組織・人事マネジメント・コンサルティング/https://www.mercer.co.jp/)、そしてオリバー・ワイマン(戦略コンサルティング/https://www.oliverwyman.jp/)から構成されており、年間総収入170億米ドル、全世界に76,000名の従業員を擁し、世界各地の顧客に分析・アドバイスを提供しています。

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業種
サービス業
本社所在地
東京都港区赤坂9丁目7番1号 ミッドタウン・タワー
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-
代表者名
草鹿 泰士
上場
未上場
資本金
-
設立
1978年02月