放課後の居場所の質が子どもの気持ちや行動にも影響

〜全国11拠点での観察調査×子どもの声から居場所の質の可視化に全国初挑戦〜

「日本中の放課後を、ゴールデンタイムに。」をミッションに活動する特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール(代表理事:平岩国泰、本部:東京都文京区/以下「放課後NPOアフタースクール」)は、一般社団法人エビデンス共創機構(代表理事:伊芸研吾氏/東京都武蔵野市)と共に、2024年6月より放課後の居場所の質が子どもの健やかな成長や発達にどのように影響を及ぼすのか、「新・保育環境評価スケール④放課後児童クラブ」(SACERS※)を活用した調査研究を開始しました。全国6事業者11拠点に対して行なった2024年度の調査では、分析結果全体を通して環境の質が高い施設ほど、子どもが前向きな感情を抱き、問題行動も少ない傾向があることがわかりました。本調査は、学童期の放課後の居場所づくりにおいて、子ども本人の声と科学的な観察評価を組み合わせて実施した全国初の試みです。

調査事業概要

調査期間:2024年6月〜2027年3月末(最大3年半を予定)

調査対象:放課後児童クラブ(公設民営:5事業者9拠点、民設民営:1事業者2拠点)

対象事業者の所在地:宮城県、栃木県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、熊本県

主催:特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール|共同研究:一般社団法人エビデンス共創機構

助成:公益財団法人 日本財団

調査方法

対象となる拠点に訪問し、「保育環境評価スケール④放課後児童クラブ(SACERS/School-Age Care Environment Rating Scaleの略、読み:サッカーズ※)」を用いたアセスメントを2回実施。

1回目の後にアセスメント結果(評価スケールのスコアと子どもアンケート)の共有・ふりかえりを行った後、1回目の訪問から4-5か月程度期間をあけて2回目を実施する。

※SACERS=School-Age Care Environment Rating Scale. 小学生の子どもに、親以外によって提供される放課後のケアの環境の質を、7領域(空間と家具、健康と安全、活動、相互関係、育成支援計画、研修、特別支援)47項目のスケール(指標)で測定。

【アセスメント内容】

  • 保育環境評価スケール④を用いた観察評価によるスコアリング

  • 施設職員(支援員)へのアンケート・インタビュー

  • 施設利用児童・保護者へのアンケート

  • SDQ*を用いた児童の観察評価(支援員によるランダムに選んだ児童の観察)

(*SDQ:Strength and Difficulties Questionnaire:子どもの強さと困難さアンケート)

調査の背景と必要性

 近年、放課後の居場所づくりは待機児童対策など「量の確保」が進む一方で、子どもが「行きたくない」と感じるケースも指摘されています。子どもが「居たい・行きたい・やってみたい」と思える場になっていない現状が、一部で見られています。

背景課題

・学童期の居場所づくりは、質の評価や改善の仕組みが未整備であり、支援員の経験や熱意に依存している

・子どもにとって良い環境かどうかが見えづらく、課題が表に出にくい

・人手不足や業務負担の大きさから、質の向上に取り組む余裕が少ない

主な成果

2024年度の調査研究では、以下の2点について成果を得ることができました。

▶︎詳細は下記概要資料をご覧ください。概要資料URL:https://x.gd/jiynh

(1) 現場における「質の可視化」と改善のヒント

調査では、SACERSを用いて、放課後の居場所を「空間」「活動」「人との関わり」など多角的に評価。その結果、どの拠点でも共通してスコアが低かった項目が浮かび上がり、改善の方向性が具体的に見えてきました。特に以下の観点は、SACERSの評価で「最低限の水準(3.0)」を下回った項目であり、全拠点に共通する改善課題として明確になりました。

(2) 「質の高い居場所が子どもの気持ちや行動にもたらす影響

統計分析の結果、SACERSのスコアと子どもの感情や行動には次のような関係が確認されました。

・スコアが高い拠点ほど、子どもが「楽しい」「安心できる」「自信がつく」といったポジティブな気持ちを多く感じていた(p<.05)

・SACERSのスコアが高まると、問題行動(情緒面・行為面)が統計的に有意に減少(p<.05) 

 これにより、放課後の環境の「質」が、子どもの感情や行動、ひいては発達にプラスの影響を与える可能性があることが明らかになりました。

調査対象団体の声

調査対象となった拠点の半数近くでは、定員の増加に対応するため、学校の空き教室など、本来放課後の居場所として設計されていない環境を活用していました。そのため、スペースの限界や騒音、収納の難しさなどに日常的に直面しており、「これ以上の工夫は難しい」「仕方がない」と感じていた現場も少なくありません。

そうした中で、SACERSの観点をもとにフィードバックを受けたことで、「どこに工夫の余地があるのか」「どうすればよくなるのか」が具体的に見えてきたという声があがっています。

「エリア分けをするだけで、子どもが自然と使い方を変えていった。こちらの声かけが減りました」(放課後児童支援員)

「ラベリングで片付けのルールが明確になり、子どもたちが自分で戻すように。現場の負担も減りました」(統括責任者)

「SACERSの観点を通して、職員間でも“どこに課題があるか”が共有でき、対話が進むようになった」(運営事業者)

こうした声は、限られた空間・人員の中でも、少しの視点の変化や工夫で改善が可能であることを示す実例となっています。本調査では、評価者による外部観察だけでなく、子ども自身の感じ方・声を聴取・反映した点が特長です。これは、こども家庭庁が提示する「こどもの居場所づくりに関する指針」においても重視されている視点であり、子どもとともにつくる居場所づくりへの一歩となるものです。

さらなる実践、展開・改善へ|2025年度の調査研究

 本調査は、後以下の展開を予定しています。

  • SACERSを基盤とした自己評価ツールの開発と導入支援

  • 具体的な改善事例を整理・発信し、他拠点への普及

  • 政策提言資料としてのとりまとめ・自治体への展開

2025年度の実施スケジュールや詳細は、以下のURLよりご覧ください。

https://npoafterschool.org/archives/news/2025/04/44678/ 

引き続き、本調査研究を進めることで、<居場所の質の重要性>と<検証の必要性>について広く認知が進み、放課後の子どもの居場所「質」を上げることへの投資が進むことを目指していきます。

■特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクールについて

「日本中の放課後を、ゴールデンタイムに。」をミッションに活動。2009年に法人化。安全で豊かな放課後を日本全国で実現するため、学校施設を活用した放課後の居場所「アフタースクール」を運営。子どもが主体的に過ごせる環境づくりに力を入れています。また、企業や自治体と連携して、全国の放課後の居場所における環境整備や人材育成の支援、体験機会創出に取り組んでいます。活動に賛同くださる多くの方と共に、社会全体で子どもたちを守り、育む活動を加速させ、子どもたちのためのより豊かな放課後の実現に向けてチャレンジを続けています。https://npoafterschool.org/

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ビジネスカテゴリ
保育・幼児教育
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会社概要

URL
https://npoafterschool.org
業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都文京区本郷1丁目20−9 本郷元町ビル 5F
電話番号
03-6721-5043
代表者名
平岩国泰
上場
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資本金
-
設立
2009年06月