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フルカイテン株式会社
会社概要

小売の採算を悪化させる宅配便「2024年問題」/物流コスト上昇でECは利益体質の強化が急務に

フルカイテンが調査レポート公表

FULL KAITEN

在庫の効率を上げる在庫分析クラウドサービス(SaaS)『FULL KAITEN』を開発し小売企業等に提供するフルカイテン株式会社(本社・大阪市福島区、代表取締役・瀬川直寛)は、日本経済を支える物流業界のうち、国内貨物輸送量の9割を担うトラック物流の現状を調査し、ドライバーの時間外労働の上限規制に端を発する「2024年問題」を念頭に、小売業界が受ける影響を考察するレポートを作成しました。なお、本稿は、2020年9月2日に公表した別レポート「トラック物流は高齢化・低待遇による人手不足でますます運賃上昇へ…ECの利益体質改善は必須」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000025713.html)の内容をアップデートし、新たな考察を加えたものとなります。
下記にレポート全文を公開します。PDFファイル版は下記リンクからダウンロードできます。
https://full-kaiten.com/news/report/4184

 

要点は次の通りです。
  1. 宅配便の年間取扱個数は、直近10年間で1.5倍に増加。新型コロナウイルス禍に揺れた2020年度は前年度から約12%増え48億個を超えた
  2. 小口・多頻度の宅配貨物の急増によってトラックの輸送効率は低迷。宅配便運賃は直近10年間で約40%上昇した
  3. 2024年度からドライバーの時間外労働に上限が適用されるなど、荷主にとってはさらなる物流コスト上昇要因が待ち受ける
  4. EC事業者はさらなる運賃値上げを念頭に利益体質を強化する必要がある

  • 宅配便の取り扱い数がコロナ禍の1年間で12%も増加
宅配便は現在、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社で取扱個数の95%を占めている。1990年代後半まで遡ると、97年に楽天が設立され、99年にはヤフー・ショッピングが始動し、2000年にはアマゾンドットコムが日本で通販サイトを開設した。これ以降、取扱個数はリーマン・ショック直後を除いて右肩上がりで、2020年は10年と比較するとちょうど1.5倍になった(下グラフ)。

国土交通省によれば、2020年度の宅配便の取扱個数は48億3647万個で、前年度から5億1298万個、割合にして11.9%の大幅増加となった。新型コロナウイルス禍の影響で外出自粛が広がり、通販の利用が増えたことが要因とみられる。

日本通信販売協会(JADMA)の統計では、2020年度の通販全体の売上高は前年度比20.1%(1兆7800億円)増の10兆6300億円だった。1982年に調査を始めて以降、前年度からの伸び率が初めて20%を超えた。なおかつ直近4年間の対前年度伸び率は一貫して8%を超えており、今後も通販売上の増加と、それに伴う宅配便の取扱個数は増え続けると見込まれる。
 
  • 貨物の小口化・多頻度化が進み物流コストが急騰
次に運送サービスの供給サイドの指標を見てみる。下グラフは国土交通省の自動車輸送統計年報からトラックの輸送トンキロ(トン数 × キロ数 = 荷物の重量と輸送距離の積)と能力トンキロを抽出し、輸送トンキロを能力トンキロで除した「積載率」の推移を表している。

輸送トンキロは貨物輸送の総需要を表し、能力トンキロはトラック運送事業者の輸送能力を示す。積載率が低いと、トラックは荷台に多くの余剰スペースが残して走ることになり、いわば空気を運んでいる状態になる。これはドライバーの貴重な労働時間が有効に活用されないだけでなく、余分な二酸化炭素の排出も意味し、輸送効率が悪化する。

そして、輸送効率の悪化は当然ながら運送事業者にとってはコスト上昇につながる。
前章でみたとおり宅配便の貨物量が急激に増えている一方で、上のグラフにあるように、輸送効率を示す積載率は低迷している。自動車輸送統計年報によれば、貨物輸送の総需要を示す輸送トンキロは下記のように推移しており、貨物輸送の総需要は大きく減少している。

 ・2007年度:3547億トンキロ(リーマン・ショック前のピーク)
 ・2020年度:2134億トンキロ(コロナ禍の影響を受けた1年)

貨物輸送の総需要が減っているにもかかわらず輸送効率が低下しているのは、貨物の中でも小口・多頻度の輸送が求められる宅配便のみが大きく増えているためと考えられる。

そして、輸送効率の悪化によるコスト上昇は実際に徐々に運賃に反映されている。
次のグラフは日本銀行が調査している企業向けサービス価格指数から、宅配便運賃と宅配以外のトラック貨物(道路貨物輸送)運賃、インターネット付随サービス料金の推移を、2015年を100とした指数で表している。

宅配便は2010年に90.41だったが、20年には125.83となり10年間で39.2%上昇した。道路貨物運送も94.48から110.53へ17.0%上がっている。
対照的に、通販の代表的手段であるECのインフラ関連やマーケティングツールなどを指すインターネット付随サービスの価格はここ10年でほとんど変動がない。

以上から、実物を運ぶ物流コストだけがここ数年で急騰していることが窺える。消費税率は2014年に5%→8%、19年には8%→10%へ引き上げられたが、宅配便と道路貨物運送のサービス価格は消費税の影響を遥かに上回る割合で上昇している。
 
  • ドライバーの時間外労働に上限がかかる「2024年問題」
マンパワーの面でも物流コストのさらなる上昇に懸念がある。労働基準法の改正により時間外労働(残業、休日出勤)に罰則付きの上限が法律に規定され、2019年4月から(中小企業は20年4月から)適用された。
トラックドライバーは24年3月まで適用が猶予されているが、24年4月からは時間外労働の上限が年960時間(月平均80時間)となる。ドライバーの総労働時間に歯止めがかけられることで、運送事業者が運送効率の低さをドライバーの長時間労働によってカバーすることが難しくなり、荷主であるEC事業者が負担する運賃が上昇するのは必至だ。

もともと、トラックドライバーの労働時間は他産業と比べ長いことが課題となっている。次のグラフは、厚生労働省の毎月勤労統計調査(従業者数5人以上)から運輸業と全産業平均の月あたり総労働時間(所定内労働時間+所定外労働時間)を比較したものだ(なお、事業所ごとの労働者1人あたりの平均労働時間が公表されている)。

 ※所定内労働時間:事業所の労働協約、就業規則等で定められた正規の始業時刻と終業時刻の間の実労働時間
 ※所定外労働時間:早出、残業、臨時の呼出、休日出勤等の実労働時間

2020年の運輸業の月あたり総労働時間は161.5時間で、全産業の135.1時間より19.5%も長い。16年は運輸業170.7時間、全産業143.7時間で18.8%の差があったことから、コロナ禍でも長時間労働は変わっていないことが窺える。

大企業には2019年度から適用された時間外労働の上限規制が、中小企業には1年の経過措置を経た20年度から適用されたのに加え、運送業は是正が難しいことからさらに4年の猶予期間が与えられたことから分かる通り、ドライバーの実際の労働時間は統計に表れるよりもはるかに長時間に及ぶと推察される。
また、2023年4月からは中小企業でも月60時間超の時間外労働に対する賃金の割増率が50%(月60時間までの割増率は25%)へ引き上げられ、ドライバーにも適用される。

こうした物流コストの上昇は運賃へ反映される他なく、荷主となるEC事業者にとっては大きなコストアップ要因となるであろう。 
 
  • まとめ:EC事業者は運送費高騰でも利益が出る経営モデルが急務
もちろん、大手ECプラットフォームは前章までに触れた事情は百も承知であり、対策を打ち始めている。
ヤフーは2021年4月、ヤマト運輸と組んでEC事業者向けに提供しているフルフィルメントサービスを刷新し、アマゾンや楽天グループが提供する同様の物流サービスを下回る配送料金を示した。

出店者(ショップ)にとっては、ヤフーショッピング内のサイトで受注した商品の配送料が、他のECモールや自社ECサイトで受注した商品の配送料よりも最大24%安く設定されている。
アマゾンもヤマト運輸とともに出店者向けのフルフィルメント・バイ・アマゾンを提供しており、ヤフーと同様にアマゾン内での受注分の配送料は他のモールや自社サイトでの受注分よりも最大47%安価になっている。

一方の楽天は日本郵便と提携し楽天スーパーロジスティクスを展開。最大の特長は楽天市場で受注した商品と、他のモールや自社サイトで受注した商品とで配送料に差を付けていない点だ。楽天出店者からみると、他のモールや自社サイトでの受注分の配送料は楽天スーパーロジスティクスが圧倒的に安い。

このように、3大ECモールはマクロで見たトラック運賃の上昇傾向を無視したかのような安値攻勢を仕掛けており、出店者が自社サイトでの売上を増やすことを阻みたいとの思惑が透けて見える(楽天スーパーロジスティクスは同一料金だが、いつまでもこの体系が続く保証はない)。

一方、EC事業者にとって、3大モールへ出店することは集客力や知名度アップの面で不可避とはいえ、詳細な顧客データを蓄積してLTVを上げていくには自社ECサイトでの売上獲得が欠かせない。
そして、自社サイトでは3大モールよりも配送料が“割高”になることを所与のこととして受け容れ、それでも利益が出るよう収益体質を強化する取り組みが急務だと本稿は考える。

日本の小売市場は既に長期的な縮小が始まっている。小売企業が縮小市場で利益を上げていくには、在庫を多く持つことで売上増加を目指す従来のビジネスモデルから、「在庫効率」を上げることで少ない在庫で今よりも売上・粗利益・キャッシュフローを増やすビジネスモデルへの変革が求められるといえるだろう。
 
 
【本レポートの引用について】
本レポートの内容は自由に引用していただけますが、その際は下記へご連絡ください。
フルカイテン株式会社
広報チーム 南昇平
電話: 06-6131-9388
Eメール: info@full-kaiten.com

【会社概要】
社名: フルカイテン株式会社
URL: https://full-kaiten.com
事業内容: 在庫効率を上げる在庫分析クラウドサービスの開発
本社: 大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2階B
設立: 2012年5月7日
代表者: 代表取締役 瀬川直寛
 

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業種
情報通信
本社所在地
大阪府大阪市福島区福島1-4-4 セントラル70 2F
電話番号
06-6131-9388
代表者名
瀬川直寛
上場
未上場
資本金
4億2154万円
設立
2012年05月
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