米国臨床腫瘍学会(ASCO®)においてTS-1の第Ⅲ相試験結果を発表― 大腸がん・頭頸部がん -
大鵬薬品工業株式会社(本社:東京、社長:小林 将之、以下「大鵬薬品」)は、5月31日~6月4日に米国イリノイ州シカゴにて開催された第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO®)において、日本国内で実施された次の3試験: ACTS-CC試験(対象:治癒切除後Ⅲ期結腸がん)、SOFT試験(対象:切除不能・再発大腸がん一次治療例)、およびACTS-HNC試験(対象:根治治療後の頭頸部扁平上皮がん)の結果が発表されましたことをお知らせします。
ACTS-CC試験は結腸がんの切除症例、ACTS-HNC試験は頭頸部がんの根治治療例に対してのTS-1の有効性を世界で初めて検討した第Ⅲ相臨床試験であり、またSOFT試験は切除不能・再発大腸がんに対するTS-1+ Oxaliplatin療法とBevacizumab併用の有効性を世界で初めて検討した第Ⅲ相臨床試験です。これらの結果は、がん治療に従事されている医療関係者および治療を受けられる患者さんに大きく貢献するものと考えております。
大鵬薬品は、今後もがん領域における治療開発を進めてまいります。
ACTS-CC試験
【試験概要】
本試験は、大鵬薬品が公益財団法人 先端医療振興財団 臨床研究情報センター(TRI)に委託し、Stage Ⅲ結腸がん治癒切除例を対象にTS-1療法と標準療法の1つであるUFT/LV療法を比較した第Ⅲ相臨床試験です。本試験で、TS-1療法の無病生存期間 (Disease Free Survival : DFS)における非劣性が証明されました。
【試験結果】
主要評価項目について、3年DFSはTS-1群75.5%、UFT/LV群72.5%で、TS-1群のUFT/LV群に対する非劣性が証明されました。(HR =0.85 ; 95%CI: 0.70-1.03, non-inferiority test p<0.0001) Grade 3以上の有害事象の主な内訳については、TS-1群、UFT/LV群それぞれで、下痢4.4%:5.5%、食欲不振4.9%:3.5%、総ビリルビン値上昇1.2%:1.5%、AST値上昇0.8%:2.1%、ALT値上昇1.1%:3.3%でした。
SOFT試験
【試験概要】
本試験は、大鵬薬品が実施主体となり、切除不能・再発大腸がんを対象にTS-1/Oxaliplatin(SOX)+Bevacizumab(Bev)療法と標準療法の1つである5-FU/l-LV/Oxaliplatin (FOLFOX) + Bev療法を比較した第Ⅲ相臨床試験です。本試験で、SOX+Bev療法の無増悪生存期間 (Progression Free Survival : PFS)における非劣性が証明されました。
【試験結果】
主要評価項目(PFS)において、SOX+Bev群のPFS中央値:11.7カ月 (95% CI: 10.7−12.9)、FOLFOX+Bev群のPFS中央値:11.5カ月 (95% CI: 10.7−13.2)で、SOX+Bev群のFOLFOX+Bev群に対する非劣性が証明されました(HR=1.043 ; 95% CI:0.860-1.266, non-inferiority test p=0.0139)。Grade 3以上の有害事象の主な内訳については、SOX+Bev群、FOLFOX+Bev群それぞれで白血球減少2.4%:8.4%、好中球減少8.8%:33.7%、食欲不振5.2%:1.2%、下痢 9.2%:2.8%でした。
ACTS-HNC試験
【試験概要】
本試験は、大鵬薬品が公益財団法人 先端医療振興財団 臨床研究情報センター(TRI)に委託し、頭頸部扁平上皮がん根治治療後の症例を対象にTS-1療法とUFT療法を比較した第Ⅲ相臨床試験です。
【試験結果】
主要評価項目(DFS)について、UFT群およびTS-1群の3年DFSの割合はそれぞれ60.0%、64.1%であり、TS-1群のUFT群に対する優越性は証明されませんでした(HR= 0.87; 95% CI: 0.66- 1.16, p=0.34)。一方、3年生存割合についてはUFT群75.8%、TS-1群82.9%であり、TS-1群が統計学的に有意に生存割合が高い成績でした(HR=0.64 ; 95.0 % CI:,0.44-0.94, p=0.02)。Grade 3以上の有害事象については、TS-1群において次の項目が有意に高い傾向にありました:口内炎(2.4%)、白血球減少(5.2%)、 好中球減少(3.6%)、および血小板減少(2.0%)。(括弧内:TS-1のGrade3,4の有害事象発現率)
【ティーエスワン(TS-1)について】
フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤であるティーエスワンは、吸収後、抗がん剤フルオロウラシル(5-FU)に変換される代謝拮抗物質のテガフール、体内で5-FU の分解を阻害するギメラシル(5-chloro-2,4-dihydroxypyridine,またはCDHP)、消化管で5-FU のリン酸化を阻害するオテラシル(Oxo)の3化合物の配合剤です。胃がんの治療薬として開発され、1999 年に国内で最初に承認を受け、現在では胃がんの標準治療薬となっています。日本においては、他に結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌の6つの追加効能を取得しています。海外では、胃癌の適応でアジア(7ヵ国*)、欧州(15ヵ国*)で販売されています。
*:2013年5月15日現在