格差に関する最新報告書発表 「最も豊かな1%のための経済」
世界の資産保有額の上位62人の総資産は、下位50%(36億人)の人々の総資産に匹敵
1月20日から23日にかけてスイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(通称ダボス会議)に先駆けて、オックスファムは、2014年、2015年に引き続き、格差に関する最新の報告書を発表しました。
・ 一方で、2015年には、世界人口の貧しい半分の総資産額は、2010年と比較して1兆ドル、41%減少。同時期に世界人口は4億人増加。
・ 世界の資産保有額上位62人の資産は、2010年以降の5年間で44%増加し、1.76兆ドルに達した。
・ 男女の格差も顕著で、世界で最も裕福な62人のうち男性は53人。女性は9人に過ぎない。
極度の格差は、貧困を克服するためのここ25年間の取り組みを無駄にしてしまう可能性があります。貧困の克服に取り組んできたオックスファムは、深刻化するこの格差の課題に国際社会が真剣に取り組む必要があると考えます。最優先事項として、裕福な個人や大企業が租税回避のために活用するタックスヘイブンの問題に対処しなければなりません。タックスヘイブンの活用による租税回避によって、なされるべき社会への還元がなされていません。各国政府は、税収入の減少により、貧困と格差の問題に対処するための重要な財源を失っています。
世界人口の半数が有する富の合計以上の富を数十人の人々が所有している現状を、私たちは受け入れるべきではありません。世界中で格差の問題が声高に叫ばれていますが、具体的な取り組みは成されておらず、世界の格差は急速に深刻化しています。何百万人もの人々が食べることもできず、貧困に苦しむ世界の現状において、最も裕福な人々にさらに資源と富が集積していくことは望ましいと言えるのでしょうか。
ダボス会議に集う政府代表や大企業など世界のエリートたちは、タックスヘイブンの時代に終止符を打つためにそれぞれの役割を果たさねばなりません。世界の富裕層そして多国籍企業は、社会が機能するための大前提である納税義務を果たしていません。世界の大企業の201社のうち188社が少なくとも一つのタックスヘイブンに登記していることがこの事実を物語っています。
オックスファム・インターナショナル事務局長 ウィニー・ビヤニマ
2015年、G20各国政府は、BEPS行動計画の合意を通じて多国籍企業の租税回避の問題に取り組むことに合意しました。しかし、その合意内容は、タックスヘイブンの課題にはほとんど触れていません。世界的に見て、タックスヘイブンの口座に預けられている個人資産は、約7.6兆ドルと言われています。この資産に対して本来支払われるべき税金が各国政府に納められた場合に得られる税収入は毎年1,900億ドルにのぼります。
アフリカの金融資産の30%がタックスヘイブンに置かれていると推測され、このことによって毎年140億ドルの税収入が失われています。140億ドルの予算があれば、母子保健の充実などを通して年間400万人の子どもの命を救うことができるばかりか、アフリカのすべての子どもたちが学校に通うために必要な教員を雇用することができます。
ダボス会議の企業パートナーである10社のうち9社が少なくとも一つのタックスヘイブンに登記されています。多国籍企業による租税回避がもたらす途上国における損失は、最低でも年間1,000億ドルと言われています。2000年から2014年にかけてタックスヘイブンに対する企業投資はおおよそ4倍になりました。
昨年9月に合意された国連の「持続可能な開発目標」を達成し、2030年までに極度の貧困をなくすためには、企業と個人を問わず富裕層から各国政府がしっかりと税収入を得ることが不可欠です。極度の貧困に暮らす人々の数は1990年から2010年にかけて半減したものの、世界人口の最も貧しい10%の収入は、過去25年間で年間3ドルも増加していません。これは、各個人の収入が年間1セントも増加していないということです。1990年から2010年までの間に各国の格差が広がっていなければ、貧困を抜け出すことができた人の数は2億人多かったはずです。
本報告書でも取り上げているように、ほぼ全ての先進国、そして大半の途上国に見られる格差拡大の背景にある傾向の一つが、労働賃金が国民所得に占める割合の低下です。これに加えて、所得規模における格差拡大も傾向として見られます。所得格差の拡大、そしてタックスヘイブンの活用が、経済における富と権力の集中を促しているのです。
オックスファムは、拡大する格差への対処として三つの柱を提唱しています。その一つ目がタックスヘイブンに代表される租税回避の問題への対処です。二つ目は、貧しい人々の生活に大きな利益をもたらす保健や教育などの必須社会サービスへの投資にこそ税収入が向けられなければならないという途上国内の政策における対処です。そして三つ目は、各国政府は、しかるべき賃金が裕福な人々に対してだけでなく、貧しい人々に対してもきちんと支払われるようにしなければならないということです。最低賃金を生活賃金の水準に引き上げ、男女間の賃金格差にも取り組まなければなりません。
最も裕福な人々は、彼らの富が全ての人々のためになると言うことが、もはやできなくなりました。彼らの極度の富は、病める世界経済の表れです。一部の富裕層に富が集中する仕組みは、世界の過半数の人々、特に最も貧しい人々の犠牲の上に成り立っています。
オックスファム・インターナショナル事務局長 ウィニー・ビヤニマ
オックスファムは、格差の問題に加え、気候変動の問題、そしてシリア危機を含む人道危機への取り組みを各国政府やビジネス界に促すためにダボス会議に出席します。
詳しい注記・出典、調査手法などについては、英語版の報告書をご確認ください。
Oxfam Briefing Paper "An Economy For the 1%" http://oxf.am/Znhx
プレスリリース全文はこちらからご確認ください。
20160118_02_Davos Inequality_BriefingPaperJPN_FNL.pdf
オックスファムは世界90カ国以上で活動する国際協力団体です。
オックスファム・ジャパン: http://oxfam.jp/
オックスファム・インターナショナル: http://www.oxfam.org/
以下は、オックスファムの新たな報告書「最も豊かな1%のための経済 (An Economy for the 1%)」の要旨です。
・ 世界で最も裕福な62人が保有する資産は、世界の貧しい半分(36億人)が所有する総資産に匹敵する。この数字が、わずか5年前2010年には388人だったことが事態の深刻さを示している。・ 一方で、2015年には、世界人口の貧しい半分の総資産額は、2010年と比較して1兆ドル、41%減少。同時期に世界人口は4億人増加。
・ 世界の資産保有額上位62人の資産は、2010年以降の5年間で44%増加し、1.76兆ドルに達した。
・ 男女の格差も顕著で、世界で最も裕福な62人のうち男性は53人。女性は9人に過ぎない。
各国首脳および様々な国際機関が、格差問題への取り組みの必要性について訴えており、昨年9月に採択された国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の一環としても、格差問題に取り組むことに世界は合意しました。しかし、この12ヶ月間で格差は縮まるどころか広がり、2015年のダボス会議に先駆けて指摘された「世界の1%が残り99%より多くの富を所有する」という状況は、オックスファムの予想よりも1年早く、2015年内に現実となってしまいました。
極度の格差は、貧困を克服するためのここ25年間の取り組みを無駄にしてしまう可能性があります。貧困の克服に取り組んできたオックスファムは、深刻化するこの格差の課題に国際社会が真剣に取り組む必要があると考えます。最優先事項として、裕福な個人や大企業が租税回避のために活用するタックスヘイブンの問題に対処しなければなりません。タックスヘイブンの活用による租税回避によって、なされるべき社会への還元がなされていません。各国政府は、税収入の減少により、貧困と格差の問題に対処するための重要な財源を失っています。
世界人口の半数が有する富の合計以上の富を数十人の人々が所有している現状を、私たちは受け入れるべきではありません。世界中で格差の問題が声高に叫ばれていますが、具体的な取り組みは成されておらず、世界の格差は急速に深刻化しています。何百万人もの人々が食べることもできず、貧困に苦しむ世界の現状において、最も裕福な人々にさらに資源と富が集積していくことは望ましいと言えるのでしょうか。
ダボス会議に集う政府代表や大企業など世界のエリートたちは、タックスヘイブンの時代に終止符を打つためにそれぞれの役割を果たさねばなりません。世界の富裕層そして多国籍企業は、社会が機能するための大前提である納税義務を果たしていません。世界の大企業の201社のうち188社が少なくとも一つのタックスヘイブンに登記していることがこの事実を物語っています。
オックスファム・インターナショナル事務局長 ウィニー・ビヤニマ
2015年、G20各国政府は、BEPS行動計画の合意を通じて多国籍企業の租税回避の問題に取り組むことに合意しました。しかし、その合意内容は、タックスヘイブンの課題にはほとんど触れていません。世界的に見て、タックスヘイブンの口座に預けられている個人資産は、約7.6兆ドルと言われています。この資産に対して本来支払われるべき税金が各国政府に納められた場合に得られる税収入は毎年1,900億ドルにのぼります。
アフリカの金融資産の30%がタックスヘイブンに置かれていると推測され、このことによって毎年140億ドルの税収入が失われています。140億ドルの予算があれば、母子保健の充実などを通して年間400万人の子どもの命を救うことができるばかりか、アフリカのすべての子どもたちが学校に通うために必要な教員を雇用することができます。
ダボス会議の企業パートナーである10社のうち9社が少なくとも一つのタックスヘイブンに登記されています。多国籍企業による租税回避がもたらす途上国における損失は、最低でも年間1,000億ドルと言われています。2000年から2014年にかけてタックスヘイブンに対する企業投資はおおよそ4倍になりました。
昨年9月に合意された国連の「持続可能な開発目標」を達成し、2030年までに極度の貧困をなくすためには、企業と個人を問わず富裕層から各国政府がしっかりと税収入を得ることが不可欠です。極度の貧困に暮らす人々の数は1990年から2010年にかけて半減したものの、世界人口の最も貧しい10%の収入は、過去25年間で年間3ドルも増加していません。これは、各個人の収入が年間1セントも増加していないということです。1990年から2010年までの間に各国の格差が広がっていなければ、貧困を抜け出すことができた人の数は2億人多かったはずです。
本報告書でも取り上げているように、ほぼ全ての先進国、そして大半の途上国に見られる格差拡大の背景にある傾向の一つが、労働賃金が国民所得に占める割合の低下です。これに加えて、所得規模における格差拡大も傾向として見られます。所得格差の拡大、そしてタックスヘイブンの活用が、経済における富と権力の集中を促しているのです。
オックスファムは、拡大する格差への対処として三つの柱を提唱しています。その一つ目がタックスヘイブンに代表される租税回避の問題への対処です。二つ目は、貧しい人々の生活に大きな利益をもたらす保健や教育などの必須社会サービスへの投資にこそ税収入が向けられなければならないという途上国内の政策における対処です。そして三つ目は、各国政府は、しかるべき賃金が裕福な人々に対してだけでなく、貧しい人々に対してもきちんと支払われるようにしなければならないということです。最低賃金を生活賃金の水準に引き上げ、男女間の賃金格差にも取り組まなければなりません。
最も裕福な人々は、彼らの富が全ての人々のためになると言うことが、もはやできなくなりました。彼らの極度の富は、病める世界経済の表れです。一部の富裕層に富が集中する仕組みは、世界の過半数の人々、特に最も貧しい人々の犠牲の上に成り立っています。
オックスファム・インターナショナル事務局長 ウィニー・ビヤニマ
オックスファムは、格差の問題に加え、気候変動の問題、そしてシリア危機を含む人道危機への取り組みを各国政府やビジネス界に促すためにダボス会議に出席します。
詳しい注記・出典、調査手法などについては、英語版の報告書をご確認ください。
Oxfam Briefing Paper "An Economy For the 1%" http://oxf.am/Znhx
プレスリリース全文はこちらからご確認ください。
20160118_02_Davos Inequality_BriefingPaperJPN_FNL.pdf
オックスファムは世界90カ国以上で活動する国際協力団体です。
オックスファム・ジャパン: http://oxfam.jp/
オックスファム・インターナショナル: http://www.oxfam.org/
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