世界初の方式の大面積ダストセンサーを搭載した宇宙塵探査衛星ASTERISC(アスタリスク)が全てのミッションに成功して3年2か月の長期運用を終了

千葉工業大学

  • 惑星探査研究センター(PERC)の超小型衛星2号機である宇宙塵探査実証衛星ASTERISC(アスタリスク)は2025年1月21日の軌道離脱・大気圏突入をもって、3年2か月に渡る運用を終了しました。

  • ASTERISCは、超小型サイズの衛星である3Uキューブサット(30cm×10cm×10cm)でありながら、本格的な理学ミッションである、軌道上の固体微粒子(天然の宇宙塵や人為的な微小スペースデブリ(宇宙ごみ)など)を観測することを目的として開発されました。

  • ASTERISCは、PERC独自に開発した世界初の方式の大面積膜型ダストセンサー(粒子観測装置)を用いた軌道上粒子の観測、バスシステムの技術実証、長期観測運用の全てのミッションを達成しました(フルサクセス)。

  • 今回初めて宇宙実証された膜型ダストセンサーは、大面積のセンサーを実現できること、様々な膜に粒子観測機能をつけられること、安価で製造できること等の多くのメリットがあり、将来の様々な応用が期待できる技術です。 

  • 超小型衛星でありながら、姿勢制御・高速ダウンリンクを伴う本格的な理学ミッションを遂行したASTERISCバスシステムは、より高度な将来ミッションを行うに足る性能を持つことが実証されました。

  • 直近の計画としては、2026年度打ち上げ予定のJAXA火星衛星探査計画MMXに膜型ダストセンサーの技術を活用した1m2の大面積ダストセンサーCMDMが搭載されます。CMDMは、理論的に予想されながら未だ見つかっていない火星周回ダストリングの発見を目指しています。

 

<概要>

千葉工業大学惑星探査研究センター(PERC)の超小型衛星2号機である宇宙塵探査実証衛星ASTERISC(アスタリスク)(図1)はイプシロンロケット5号機により打ち上げられてから、3年2か月に渡って千葉工業大学地上局から運用を行ってきましたが、2025年1月21日の軌道離脱・大気圏突入をもって、運用を終了しました。

ASTERISCは、PERCが独自に開発した展開膜型の粒子観測装置(ダストセンサー)を用いて、軌道上の固体微粒子(宇宙塵と微小スペースデブリ(宇宙ごみ)など)を観測することを目的とする3Uキューブサットです(キューブサットは10cm角のユニットからなる超小型の衛星。3Uは30cm×10cm×10cmのサイズ)。今回搭載された膜型ダストセンサーは、粒子が膜面に衝突することで発生する波を膜面上に接着した特殊な素子により電気信号として検出し、独自の信号処理を行うことによりリアルタイムで粒子を観測する技術です(図2)。膜面全体をダストセンサーとする技術であり、膜の面積を大きくするだけで大面積ダストセンサーを容易に実現できる本システムは、一般的に軌道上の数が少ない宇宙塵・微小スペースデブリの観測の難しさを解決するものとしてPERCで開発を進めてきました。

ASTERISCの初期運用では、膜型ダストセンサーを展開し、それを用いた粒子観測に初めて成功しました(世界初の方式の大面積ダストセンサーを搭載した宇宙塵探査衛星 ASTERISC軌道上実証成功

https://www.it-chiba.ac.jp/media/pr20220215_1.pdf)(図3、図4)。また、PERC、東北大、メーカーの共同で開発した国産バスシステムの技術項目の全ての実証にも成功しています。その後の定常観測フェーズでは、(低消費電力の)磁気トルカを用いて衛星を回転させるスピン安定姿勢制御を確立することで、ダストセンサーを慣性空間の特定方向に指向させ続けた状態で長期間観測することに成功しています(例えば数か月間、太陽方向を観測し続けるなど)。これにより、特定の粒子が飛来してくる方向のみにセンサーを向け続けて観測できるため、科学的価値の高いダスト観測データを取得することができました。さらに数百kbps~数Mbpsのビットレートによる高速ダウンリンクを実施することで得られた波形データを詳細解析した成果についての論文を現在準備しています。超小型衛星でありながら、姿勢制御・高速ダウンリンクを伴う本格的な理学ミッションを遂行したASTERISCバスシステムは、より高度な将来ミッションを行うに足る性能を持つことが実証されました(このバスシステムを活かした全く新しい理学ミッションを計画していますのでご期待ください)。

今回、宇宙実証された膜型ダストセンサーは既に宇宙実績のある圧電素子、ポリイミド膜、ケーブル、エレキにより構成されるシンプルな構成であり、従来の粒子観測装置と比較して圧倒的な低価格で製造可能であることに加え、多用途の膜(例えば、ソーラーセイル、衛星用断熱材など)に比較的容易にダスト検出機能を付加できるなど将来の様々な応用が期待できます。直近の計画として、2026年度打ち上げ予定のJAXA火星衛星探査機MMXには膜型ダストセンサーの技術を活用したダストカウンターCMDMが搭載されます。衛星・探査機のシステム系コンポーネントとして通常搭載される多層断熱材MLI(衛星表面のキラキラした膜)に圧電素子を貼りつけて信号処理するエレキを搭載することで1m2の大面積センサーを実現します。CMDMは大面積を活かして、理論的に予想されながら未だ見つかっていない火星周回ダストリングの発見を目指しています。

 

図1 ASTERISC外観写真 (写真左)展開前の衛星外観。(写真右)30cm×30cmの膜型ダストセンサー(左方向に広げられたオレンジ色の膜)展開後の衛星外観。膜型ダストセンサーの膜面には受信用の8個の圧電素子と2個の試験信号用の圧電素子が接着されています。

図2 膜型ダストセンサーシステムの概念図
図3 展開した膜型ダストセンサーをオンボードカメラで撮影した自撮り画像。センサーが取り付けられたパドル面には千葉工業大学の校章とPERCのロゴが印字されています。
図4  実際にASTERISCが軌道上で取得した粒子観測データ。膜面上に接着された8個の圧電素子で同時に受信した波形を解析することでノイズと真の信号を区別することが可能。

<プロジェクト紹介>

千葉工業大学惑星探査研究センター(PERC)は、独自の惑星科学探査を高頻度で継続的に行うことを目指し、超小型衛星プロジェクトを2012年に立ち上げました。本プロジェクトの初号機S-CUBEは日本初の3Uキューブサットとして2015年9月に打ち上げられ、2016年11月の軌道離脱に至るまで、約1年2か月に渡って、千葉工大局で運用されました。この地上局は、千葉工業大学が日本の大学として初めて開発し2002年に打ち上げた衛星WEOS(鯨生態観測衛星:観太くん)の運用に際に用いた設備をPERCが受け継ぎ、オーバーホールして使っています。

その後、将来の惑星探査を見据えた宇宙機搭載用に新型の粒子観測装置である膜型ダストセンサーシステムの開発を進めてきましたが、高速衝突銃を用いた衝突実験による原理の検証や、衛星搭載のためのエレキ設計の目途が立ってきたことを契機に、プロジェクト2号機に本観測装置を搭載し軌道実証を行うとともに宇宙塵の理学観測を行うこととなりました。宇宙塵は、PERCのメインテーマの一つであるアストロバイオロジーの観点においても、惑星に有機物を供給するキャリア(運び手)として重要な観測ターゲットです。打ち上げ機会を探す中で、JAXAの革新的衛星技術実証プログラム2号機の実証テーマに採択され、2018年度からASTERISCの開発がスタートしました。ASTERISCはPERCを実施責任機関として、PERCと東北大学の共同で開発されました。JAXAの革新的衛星技術実証2号機の一つとしてイプシロンロケット5号機により2021年11月9日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられ、高度約560kmの太陽同期軌道に投入されました。衛星運用は全て千葉工業大学津田沼キャンパス内に設置された千葉工大地上局にて行われました。

 

衛星名の由来:

アスタリスクは、古代ギリシャ語で「小さい星」という意味を持ち、記号「*」の名前でもよく知られています。観測する宇宙塵が星のかけらであることと、超小型衛星を「小さい星」に例えて、今回ASTERISC(アスタリスク)と命名しました。

 

WEBサイト:

プロジェクト紹介ページ http://www.perc.it-chiba.ac.jp/projects/nano-satellite2

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瀬戸熊 修
上場
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資本金
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設立
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