「なんばパークス」が“都心の森”として生物多様性の保全に貢献
~定量調査で、広大な人工緑地における生物の生息、繁殖を確認~
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)と南海電気鉄道株式会社(本社:大阪市浪速区、社長:岡嶋信行)は、生物多様性に配慮した設計施工と、20年以上にわたり生物に向き合った運営管理を行っている「なんばパークス」(大阪市)の屋上公園「パークスガーデン」において、生物調査を実施しました。調査の結果、全国的に個体数の減少が危惧されているスズメの繁殖が確認されるなど、多様な生物が生息し、繁殖していることを確認しました。
1. 背景
生物多様性の減少は地球規模での重大なリスクと言われており、社会や企業が協力し、積極的に対応していく必要があります。近年では、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)(※1)の枠組みに沿って、企業の経済活動が自然環境や生物多様性に与えるリスクや機会を評価すること、ネイチャーポジティブ(※2)の実現に向けた取り組みを推進することが求められています。
両社はパークスガーデンにおいて、設計段階から湿地や草地などの多様な環境を設け、鳥類の飛来促進のため、実をつける樹種を豊富に植栽するなど、生物多様性に配慮した取り組みを行ってきました。また、農薬を使わない管理や、本来駆除対象であっても鳥の餌になる昆虫類を一部残すなど、20年以上にわたって生物や植物に向き合った管理を行っています。
2009年度から2011年度には、生き物環境、熱環境、CO2固定量について調査を行い(※3)、「人、都市、自然がもっと一つになるためになんばに森をつくる」の施設コンセプト通り、人と環境に優しい豊かな緑へと成長していることを確認しました。
今般、2022年度から2023年度の2年間、鳥類および昆虫類の調査を行い、パークスガーデンの生物多様性の保全状況をモニタリングしました。
2. 調査概要
(1)定量調査の実施
鳥類調査は、パークスガーデン内およびなんばパークス敷地内の街路樹に複数の調査地点を設置し、5分間で観察できた種類と数を記録する方法(スポットセンサス法)により、渡り期(春・秋)、繁殖期、越冬期において、年12回行いました。
昆虫類調査は、パークスガーデン内の複数の地点において、目視調査および捕虫網を使った調査を5分間行いました。調査は5月から8月および10月に月1回の頻度で行うほか、9月には日没後に虫の鳴き声を聞き取る調査を行いました。
(2)鳥類の調査結果
定量調査では、パークスガーデンで多く確認された鳥類が11種であったのに対し、街路樹で確認された鳥類は5種のみだったことから、パークスガーデンの存在が鳥類の多様性の向上に寄与していることが確認できました。全国的に個体数の減少が懸念されているスズメは、幼鳥が虫を採食している姿も見られ、パークスガーデンがスズメの繁殖地になっていることを確認しました。また、ヒヨドリなどがパークスガーデン内の実を採餌している姿も見られました。
定量調査以外に確認した種も含めると、5目16科25種の鳥類を確認し、その中には、キビタキ、メボソムシクイ上種などの渡り鳥が含まれており、パークスガーデンが渡り鳥の中継地になっていることが示されました。パークスガーデン内の意図的に緑地管理が行われていない場所では、藪を好むウグイスやアオジなどが確認されたことから、生物に向き合った運営管理が鳥類の多様性に良い影響を与えていることが考えられます。
パークスガーデンに隣接するパークスタワーでは、環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類(VU)であるハヤブサも確認できました。
(3)昆虫類の調査結果
9目64科171種の昆虫類を確認しました。その中には、羽化から日が浅いと思われるショウジョウトンボや、大阪府レッドリスト2014の準絶滅危惧(NT)であるマイコアカネも含まれています。また、都市では局所的にしか見られないネジロハキリバチ、トモンハナバチ、アオスジハナバチなども確認できました。これらの種は人を自ら刺すことはなく、受粉により地域の生態系を支える重要な役割を担う種です。
また、雑木林などでよく見られるテングチョウの日本本土亜種などが確認されました。秋の夜には、ハラオカメコオロギ、カネタタキ、シバスズの鳴き声が、風情のある雰囲気を作り出していることを確認しました。
藪や水場などの多様な環境、約500種類10万株の豊富な植物、生物に配慮した長年の運営管理などが、パークスガーデンの生物多様性に大きく貢献していると推察されます。
3. 今後の展望
大林組と南海電気鉄道は、今後もパークスガーデンの緑地管理と定期的なモニタリングを継続し、大阪難波の“都心の森”を維持していくことで、生物多様性の保全に貢献していきます。
※1 TNFD :2021年6月に正式発足した、自然関連の財務情報を開示する枠組みの開発・提供をめざ
す国際組織
※2 ネイチャーポジティブ:生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せること
※3 再開発事業に伴う人工緑地の豊かな緑への成長を確認(2012年10月11日付)
参考情報
(1)基本情報
<なんばパークスについて>
◆施設概要 : 2007年4月に全館開業を迎えた施設で、パークスタワーを併設した大型複合商業施設
◆所 在 地 : 大阪市浪速区難波中2-10-70
◆延床面積 : 243,800㎡
◆店舗面積 : 約51,800㎡
◆店 舗 数 : 約240店舗
◆ホームページ: https://nambaparks.com/
<パークスガーデンについて>
◆施設概要 : パークスガーデンは、なんばパークスのグランドレベルから地上9階まで段丘状に続
く、約500種類10万株の豊富な植物が生育する都市の屋上公園。ガーデン内にある多種
多様な植物は、常駐する専属のガーデナーが管理を徹底しています。
2023年から2024年にかけては、「タッチングネイチャー」をコンセプトに、これまで
以上に人と自然が近づき五感で自然を感じられる空間となるようリニューアルしまし
た。
◆開園年月 : 2003年10月( 1期オープン)、2007年4月( 2期・全館グランドオープン)
◆敷地面積 : 約11,500㎡(緑地:約5,300㎡/通路・広場:約6,200㎡)
◆植 物 数 : 約500種類・10万株
(1)高木(H2.5m 以上の樹木) 70種 約550本
[常緑樹] シマトネリコ・シロダモ・ヤマモモ・タイサンボク・バンクシア・カリ
ステモン・オリーブなど
[落葉樹] マグノリア・モミジ・サルスベリ・ハナミズキ・アメリカデイゴ・エゴ
ノキ など
(2)中低木・草花 約430種
ランドカバー・ガーデニア・ツツジ類・アジサイ・ヤマブキ・サンゴミズキ・フ
ォッサギラ・ストレリチア・アガパンサス・ゲットウ・ロマンドラ・ディアネラなど
◆土 壌 : 土の深さ 平均55cm(浅い部分20cm、深い部分80cm(高木部分)
土の種類 人工軽量土壌(比重約0.8)を採用
◆営業時間 : 10時~24時[入場無料]
◆専属ガーデナー: 総勢7名 [2024年7月現在]
◆ホームページ : https://nambaparks.com/garden
(2)なんばパークスのサステナビリティ
<なんばパークスの屋上緑化によるヒートアイランドの緩和>
強い風や日差し、荷重制限などにより、大きな樹木を育てることは難しいと言われている屋上環境。そんな状況下において、パークスガーデンでは設計上の工夫や軽量土壌の活用により多く中高木を配植しています。夏季日中での調査では、周囲のアスファルト道路などと比べて表面温度が約15~20℃低くなっていることがわかりました。大気に伝わる熱がそれだけ小さくなり、都市のクールスポットとして機能しています。
また、緑地帯が建物断熱効果や冷却効果を生み、空調の負荷を低減することでCO2排出量削減にも効果をもたらしています。
打ち水ペーブ
パークスガーデン7階展望広場には、地中に供給した水を毛管現象により吸い上げ、舗装表面を湿潤させ、気化熱により冷却する「打ち水ペーブ」舗装を施しています。水はねや水たまりが生まれることなく、昔ながらの「打ち水」の効果を常に維持でき、ヒートアイランド現象の低減にも寄与しています。
水管理
なんばパークスでは地下に中水処理設備を設置しており、微生物や活性炭を用いて浄化処理した無色透明な水を、トイレの流し水や植栽への水まきなどに利用。気候変動などによる水不足など、水リスクが高まっている中、水管理体制を整備し、取水量や水使用量をできるだけ節減するとともに、汚染物質の排出防止に努めています。
緑地帯には水やりを自動的に行う自動潅水システムを張り巡らし、雨水センサーにより無駄な散水も防止しています。
<環境認証の取得>
一般財団法人ベターリビングCASBEE評価認証業務規程において、建築物や街区、都市などにかかわる環境性能を様々な視点から総合的に評価いただき、2023年5月に「CASBEE不動産Sランク」を取得しました。
<生物多様性のための30by30アライアンスへの参画>
両社は、日本政府が2021年G7サミットで約束した2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとして保全するための「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画しています。
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