光と影のあわいに立ち、いま自らを照らす画家――吉川龍。苦難の果てに見出した“自分を照らす光”と、その背に続く“影”。〈シルエットシリーズ〉で美術ファンを魅了してきた吉川龍。待望の初画集、ついに刊行!
『手のひらの虹色』――儚くも確かな光を、手のひらでつかみ取るように。タイトルに込められたのは、画家の切なる願い。本人の言葉もちりばめられ、“ひとりの表現者の生き様”が浮かび上がる、魂の記録です。

本書では、東京藝術大学卒業制作をはじめ、〈ボクサーシリーズ〉など初期の代表作から、画壇デビューを果たした〈シルエットシリーズ〉、そして最新作に至るまで約70点を4章構成で収録しています。
「少しでも良い絵を描きたい」——、その一念で歩み続けてきた吉川龍。画壇の権威や流行に迎合することなく、自らの信念を掘り下げてきたその姿勢を示すように、収録されるすべてのテキストは吉川自身による書き下ろしです。さらに巻末には、吉川が深く敬愛する同世代の彫刻家・大森暁生との対談を特別収録。益子の実家で語り合った創作の核心に迫る言葉は、読む者の心にも静かな余韻を残すことでしょう! 飽くなき探求と真摯な表現への情熱に貫かれた一書です。

・自身の足元を懸命に掘り下げた、学生時代の作品と幻の〈ボクサーシリーズ〉
第1章では、東京藝大卒業制作を起点に、全身全霊をかけて描かれた〈ボクサーシリーズ〉を紹介。プロライセンスを取得するほどボクシングに没頭し、「これ以上は描けない」と自らを極限まで追い込んだ作品群は、若き日の苦悩と情熱を生々しく刻んでいます。


・今でこそ人気の〈シルエットシリーズ〉が誕生した時代に迫る!
第2章は、吉川の画壇デビューを決定づけた〈シルエットシリーズ〉の誕生と、昭和会展優秀賞受賞という転機の時期をたどります。スタイルを確立しながらも、なお内なる格闘を続ける姿が、ダイナミックな作品構成から伝わってきます。

・創作への飽くなき思いが多彩なモティーフで表現された時期
第3章では、2008年から2019年にかけて展開した〈シルエットシリーズ〉の広がりと変遷を紹介。画壇での地位を確立しつつも、常に新しい色や形、マチエールを探り続ける創作姿勢は揺るぎません。時にヴィヴィッドに、時に静謐に、見る者の心を揺さぶる色彩世界がここにあります。


・優しさと光があふれる新境地へ
第4章では、2020年以降の制作を取り上げます。コロナ禍、益子町での災害を経てなお、絵に託した希望とは何だったのか。2025年春に奉納された長崎・本経寺の襖絵を初公開するとともに、新たな〈NEWシリーズ〉も収録。苦悩の先に見出した“優しさと光”の世界が広がります。



・人気彫刻家・大森暁生との対談を含む充実の巻末!
巻末には、大森暁生との対談「光と影が交叉する先の、新たな世界へ」を収録。初期作から新シリーズまでの作風の変遷、隠されたテーマや素材へのこだわり、そして画家として生きる理由や未来のヴィジョンまで、大森ならではの感性で深く掘り下げています。異なる領域でありながら響き合う二人の対話は、本書にしか収められない貴重な記録です。

吉川龍プロフィール
1971年栃木県生まれ。97年、 東京藝術大学絵画科油画科専攻 卒業(高橋芸友会奨学金)、99年同大大学院修士課程美術研究科絵画専攻 修了。2004年第39回昭和会展優秀賞。04〜05年文化庁新進芸術家在外派遣制度によりイタリア留学。08年、日動画廊で個展(以後、銀座、福岡、パリなどで多数)その他、個展、グループ展、国内外アートフェア出品。
◎目次
巻頭
はじめに 吉川龍
図版
第1章 1997~2002前半
卒業制作からボクサーシリーズ誕生まで
第2章 2002後半~2007
シルエットシリーズ誕生、昭和会展での受賞
第3章 2008~2019
画壇デビューとシルエットシリーズの変化
第4章 2020~2025
コロナ禍、本経寺襖絵制作、NEWシリーズ誕生
巻末
対談|大森暁生×吉川龍 「光と影が交叉する先の、新たな世界へ」
Colum 本、音楽、お酒とのコラボレーション
作品リスト
年譜
あとがき 吉川龍
◎商品情報
『吉川龍―手のひらの虹色』
対象:美術全般
発売日:2025年11月10日
定価:4,950円(税込)
著者:吉川龍
発行:gallery小町
発売:株式会社求龍堂
主な仕様:並製本、A4判(297×210mm)、132頁、作品点数:68点
◎関連イベント情報
画集刊行記念展「吉川龍作品展—キラキラひかる—」
全期間:2025年11月15日(土)~12月15日(月)
会場:gallery小町
https://kamakura-gallerykomachi.com/
◎編集者より
吉川さんの作品はデビュー当時から見ていたので、全貌を知ったつもりでいました。「そろそろ画集を作りたいんですよね」という相談を受け、「だったら、ちゃんとした一冊にしましょうよ!」と編集作業をスタートしてみると、これまで見ることのなかった初期作の葛藤まみれのボクサーシリーズ、益子の田園風景のなかに自身を捉えたナイーヴな修了制作、デビューしたものの暗澹たる気持ちが続くシルエットシリーズなどなど、ハートを鷲掴みしてくる作品が出てくる出てくる……。見れば見るほど、知れば知るほど、吉川龍という人が「絵を描くことを運命づけられた画家」であることを思い知らされることに。「偉い評論家先生のテキストは要らない、それより大森(暁生)君とじっくり対談したい」。そんな彼らしい素直な心もストレートに反映させたり、実家に眠っていた幼い頃の貴重な写真もごっそりと出していただいた。優しくて繊細で熱い男、吉川龍。作品だけでなく、そんな人となりもお伝えできたらと思っての画集ができました。

◎求龍堂について
求龍堂は1923年創業、2023年に創業100年を迎えた美術書出版社です。社名の求龍(きゅうりゅう)はフランス語の「CURIEUX」からとったもので、「芸術的あるいは知的好奇心を求める」「常に新しきを求める」ことを意味し、名付け親は画家の梅原龍三郎です。東洋の「龍」に理想を求め、時代という雲間を縦横無尽に飛び交いながら、伝統美からアート絵本まで、常に新たな美の泉を発掘すべく出版の旅を続けています。
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