音声障害患者の生活への影響を評価する日本語版質問票を作成・検証
―杏林大学の共同研究成果が国際誌に掲載―
杏林大学(東京都三鷹市。学長 渡邊 卓)保健学部リハビリテーション学科言語聴覚療法学専攻の間藤翔悟学内講師(筆頭著者・責任著者)と医学部耳鼻咽喉科学教室の齋藤康一郎教授らが中心となって推進した共同研究成果が、音声障害や喉頭科学分野を代表する国際学術誌『Journal of Voice』電子版に先行掲載されました。保健学部と医学部付属病院が密接に連携する本学の特色を活かし、言語聴覚士と耳鼻咽喉科医が専門性を生かして連携することで、臨床現場の課題解決を目指した研究に取り組みました。

■研究概要
音声障害(声のかすれや声が出しにくい状態)は、会話や仕事、社会活動など日常生活に大きな影響を及ぼします。そのため、診察や音声検査だけでなく、患者自身が「声の問題が日常生活にどのような影響を及ぼしているか」を適切に評価することが重要です。
本研究では、音声障害患者の日常生活への影響を評価する質問票「Voice Activity and Participation Profile(VAPP)」の日本語版(VAPP-J)を作成し、その信頼性と妥当性を検証しました。VAPPは、「仕事」「日常会話」「社会的コミュニケーション」「感情」などの側面から、音声障害による日常生活における活動の制限や社会参加への影響を多面的に評価できる質問票です。
■研究成果
本研究では、音声障害患者100名と健常者52名を対象に調査を実施しました。その結果、日本語版VAPP(VAPP-J)は非常に高い信頼性が認められました(Cronbach’s α=0.98)※1。
既存の評価尺度であるVoice Handicap Index(VHI)と非常に強い関連性が認められ(r=0.93)※2、VAPP-Jが音声障害による生活への影響を適切に評価できることが確認されました。
音声障害患者では、健常者と比較してすべての評価項目で有意に高いスコアを示し、本質問票は音声障害患者と健常者の違いを適切に捉えることが分かりました。
音声治療(音声リハビリテーション)の前後で比較した結果、VAPP-Jのスコアは有意に改善し、治療効果を評価する指標としても有用であることが示されました。
■研究の意義
音声障害患者の日常生活への影響を評価する質問票として、Voice Activity and Participation Profile(VAPP)は国際的に利用されていますが、これまで日本語版は開発・検証されていませんでした。本研究では、日本語版VAPP(VAPP-J)を作成し、その信頼性・妥当性を初めて検証しました。
VAPP-Jを用いることで、音声障害が患者の生活や社会参加に与える影響をより詳細に評価できるようになり、患者一人ひとりに適した治療方針の決定や、音声治療(音声リハビリテーション)や音声外科治療の効果判定への活用が期待されます。また、本研究により、日本においても国際的に利用されている評価尺度を用いた臨床評価や研究を推進する基盤となり、音声障害診療の質の向上に寄与することが期待されます。
■用語解説
※1 Cronbach’s α:クロンバックのアルファ係数。質問票の各項目が、同じ概念を一貫して測定できているか(内的整合性)を示す指標。値は0~1の範囲で、1に近いほど信頼性が高いことを意味する。本研究のCronbach's α=0.98は、質問票の各項目に高い一貫性があり、信頼性が非常に高いことを示している。
※2 r:相関係数。2つの評価結果がどの程度関連しているかを示す指標で、値は-1から+1の範囲をとる。+1に近いほど強い正の相関がある。本研究のr=0.93は、VAPP-Jと既存の評価尺度VHIの結果が非常に強く関連していることを示し、VAPP-Jの妥当性を支持する結果である。
■掲載論文
雑誌名:Journal of Voice(Elsevier)
タイトル:Evaluation of the Reliability and Validity of the Japanese Version of the Voice Activity and Participation Profile (VAPP-J)
著者:Shogo Mato, Junichi Fukaura, Makoto Miyamoto, Itaru Watanabe, Tomoki Naoi, Hideki Nakagawa, Koichiro Saito
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jvoice.2026.07.010
■研究内容に関するお問い合わせ:
・研究に関すること
杏林大学保健学部リハビリテーション学科言語聴覚療法学専攻 間藤 翔悟(まとう しょうご)
TEL:0422-47-8000(代表)
E-mail:ma_shogo_0620@ks.kyorin-u.ac.jp
・プレスリリースに関すること
杏林学園広報室
TEL:0422-44-0611
E-mail:koho@ks.kyorin-u.ac.jp
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