米国への不信、韓国への複雑な感情、台湾有事リスクへの警戒が浮き彫りに

〜日韓国交正常化60周年を節目にした合同調査暫定速報を発表〜

公益財団法人国際文化会館

 拝啓 時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 この度、公益財団法人国際文化会館(東京都港区、理事長 近藤 正晃ジェームス)アジア・パシフィック・イニシアチブ(以下、API)は、韓国の東アジア研究院(East Asia Institute、 以下、EAI)と米国のKorea Economic Institute of America(以下、KEI)と合同で「第1回日米韓国民相互認識調査」(以下、本調査)を実施いたしました。

 本年は、日韓国交正常化60周年の節目にあたり、両国関係の現状と将来展望を探る重要な節目です。また米国トランプ政権とアジアの主要同盟国である日本、韓国との関係にも注目が集まっています

本調査は、戦略的重要性が高まっている日米韓3カ国協力の基盤として、3カ国国民間の相互認識や主要争点に関する意識の現状を深く分析するとともに、日韓両国間の世論の推移と政策的示唆を提示することを目的に、実施いたしました。

 暫定速報では、米国を「極めて重要な同盟国」と位置付けつつも、トランプ大統領への不信(70%が悪い印象)や関税政策への反発から、今後の日米関係が「悪化する」とみる回答が約45%に達しました。韓国については歴史問題を背景に否定的印象が過半を占める一方、K-POPやドラマなど大衆文化が一定のイメージ改善に寄与し、日韓関係を「重要」とする回答も過半数を占めました。台湾有事を「現実的」とみる人は42%にのぼり、対応をめぐって「後方支援」「非関与」「戦闘支援」が拮抗するなど世論の分断が浮き彫りとなりました。さらに、米国の「核の傘」への信頼は33%にとどまり、49%は不十分と回答。他方、日本の独自核武装には63%が反対しており、核抑止に対する不安と核武装への拒否感が同時に表れる結果となりました。詳細は別紙をご覧ください。三カ国の比較データは、8月28日14時にEAIのホームページ(韓国語)と、8月29日にKEIのホームページ(英語)で公開いたします。日本語のデータについては、後日当財団ホームページ(https://apinitiative.org/)で公開予定です。また、最終的な分析結果については、2025年10月に公開予定です。

回答期間

2025年8月19日~21日 (インターネット調査)

回答件数

4,122件(日本1,037件、米国1,500件、韓国1,585件) 

調査概要

設問は以下の5分野で構成。過去調査との比較や国際的な分析にも対応

1.二国間関係:米国・韓国に対する印象、関係の重要性評価、各国政治リーダーへの認識

2.経済・通商:日米・日韓の経済関係、自由貿易体制、外国人受け入れに対する意識

3.安全保障:在日米軍、防衛費負担、台湾海峡・北朝鮮に関する認識

4.文化・歴史:米韓大衆文化への関心、歴史問題、戦後80年談話の評価

5.三カ国間協力:日米韓の安全保障協力、情報共有、共同訓練、台湾有事への対応方針

<別紙>「第1回日米韓国民相互認識調査」暫定速報(日本側調査)

APIは、EAI、KEIと共同で「第1回 日米韓国民相互認識調査」を実施しました。本速報は、日本国内で実施した1,037名対象の調査結果をとりまとめたものです。調査は、日米関係・日韓関係に対する国民意識、台湾有事や北朝鮮の脅威をめぐる安全保障観、経済・通商に関する評価、外国人受け入れ、さらには核武装の是非など、幅広いテーマについて日本国民の率直な見方を明らかにしています。以下に主な結果を報告します。

なお、調査結果の数値データについては以下よりご覧ください。

1.米国に対する印象と日米関係

  • 米国に「良い印象」を持つ人は40.5%で、「悪い印象」34.5%と拮抗しました。好印象の理由は「日本の安全保障上の重要なパートナーだから」(31.0%)、「国際社会でリーダーシップを発揮しているから」(16.0%)などが挙げられ、悪印象の理由では「米国大統領への悪い印象」(41.2%)、「自国中心主義の強さ」(28.9%)が際立ちました。

  • 現職のトランプ大統領に関しては、「良い印象」が14.7%にとどまり、「悪い印象」が70.1%に達しました。また、第2次トランプ政権による関税導入(自動車、鉄鋼、アルミニウムなど)については、賛成7.5%、反対76.5%と圧倒的多数が否定的でした。

  • 日米関係そのものについては、「良い関係」とする回答が42.4%、「悪い関係」とする回答が34.9%でした。一方で、日本にとっての日米関係の重要性は85.9%が「重要」と回答し、否定的回答はわずか6.1%にとどまりました。ただし今後の展望では「関係は悪化する」が44.7%で「良くなる」の23.6%を大きく上回り、将来への不安感が強いことが浮き彫りとなりました。

2.韓国に対する印象と日韓関係

  • 韓国に「良い印象」を持つ人は24.8%にとどまり、「悪い印象」は51.0%で過半数を占めました。好印象の理由は「韓国文化(映画、音楽、スポーツ)への魅力」(33.5%)、「旅行先としての魅力」(19.1%)などであり、悪印象の理由は「歴史認識をめぐる対立(慰安婦・徴用工問題)」(28.4%)、「反日デモや発言の報道」(27.0%)、「竹島領土問題」(12.1%)が上位でした。

  • 現在の日韓関係を「良好」と答えたのは31.8%「悪い」と答えたのは40.7%。しかし、日本にとっての日韓関係の重要性については54.1%が「重要」と回答し、「重要ではない」は30.2%でした。重要と考える理由としては「安全保障上の協力が必要」(39.8%)、「地理的・文化的なつながり」(33.7%)が挙げられ、逆に「重要ではない」とする理由には「歴史問題が停滞しており関係強化は困難」(26.8%)、「価値観の違い」(20.4%)などが並びました。

  • 今後3〜5年の関係見通しは「変わらない」が44.9%で最多、「良くなる」26.2%、「悪くなる」28.8%と世論が分かれました。今後日韓関係で優先すべき目標としては「相互の信頼回復・構築」(23.3%)が最多で、「北朝鮮の核問題対応」(16.6%)、「歴史問題の解決」(13.1%)が続きました。また、竹島問題は76.3%が「日韓関係にとって重要」と答え、依然として重い課題であることが確認されました。

3.台湾有事に関する認識

  • 台湾有事の発生可能性については、42.1%が「ある」と回答し、「ない」18.7%を大きく上回りました。さらに77.1%が「日本の安全保障・経済にとって重要」と答え、国益上の重大リスクとして強く認識されています。

  • 最も深刻な影響としては「南西諸島(沖縄・尖閣)への安全保障リスク」(28.3%)が最多で、「海上輸送路の混乱による経済的損失」(18.3%)、「台湾からの半導体供給停止」(13.4%)が続きました。

  • 米国の対応については「同盟国と連携して軍事介入すべき」(41.4%)が最多で、日本については「後方支援や人道支援にとどめるべき」(27.5%)と「軍事的関与を避けるべき」(26.0%)が拮抗し、「自衛隊が前線で戦闘参加すべき」は10.3%にとどまりました。日米韓が共同でとるべき初期対応としては「外交的対応」(36.5%)、「経済制裁」(24.0%)が多く、「軍事介入」を支持するのは12.3%にとどまりました。

4.北朝鮮・核抑止をめぐる認識

  • 北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対して、42.5%が「日韓間での情報共有は必要」と回答し、「戦略対話や政策協議が必要」(17.8%)、「将来は同盟構築も検討すべき」(12.3%)という積極的意見もありました。一方で「日韓が安全保障で協力することには反対」も8.7%存在しました。

  • 日本が独自に核兵器を保有する是非については、「賛成」23.7%(強く賛成8.2%、どちらかといえば賛成15.5%)に対し、「反対」が63.0%(強く反対43.6%、どちらかといえば反対19.4%)と圧倒的多数が否定的でした。韓国の核保有についても「賛成」15.5%にとどまり、「反対」が65.0%(強く反対40.9%)に達しました。日本の核武装への反対論は過半数ですが、一定の支持の広がりも注目されます。

5.日米韓の安全保障協力

  • 日米韓3か国の安全保障協力強化については「賛成」が51.7%、「反対」が27.7%でした。賛成理由では「中国の軍事台頭の抑制」(56.5%)、「北朝鮮の核・ミサイル対応」(53.2%)が多く、米国主導の安保体制維持への支持が示されました。反対理由には「緊張激化」(43.9%)、「中国との関係悪化」(31.7%)、「歴史問題による不信」(29.3%)が挙げられました。

  • 在日米軍駐留については「平和維持に貢献している」と考える人が49.5%いる一方、「貢献していない」と答える人も33.5%に上り、評価が分かれました。駐留経費負担については56.7%が「負担しすぎ」と答え、「適切」19.8%、「もっと負担すべき」3.7%を大きく上回りました。

  • さらに日本の防衛費については、「大幅に増やすべき」7.3%、「ある程度増やすべき」26.4%で、合わせて33.7%が増額を支持しました。「現状維持」は32.9%で拮抗し、「減らすべき」は16.9%に達しました。国民は抑止力強化の必要性を意識しつつ、防衛費の増額には賛否が分かれ、財政的負担への慎重姿勢も強く表れていることが分かります。

6.経済関係と外国人受け入れ

  • 経済的に日本にとって重要とされた国・地域は、米国(66.4%)、中国(37.3%)、EU(37.1%)、ASEAN(37.0%)、インド(35.9%)が上位でした。米国が日本や韓国に求める「対中制限」に関しては、賛成26.5%、反対50.3%で、慎重姿勢が目立ちました。

  • 訪日外国人旅行客の増加については、賛成が29.4%、反対が50.7%と、反対が過半数を占める結果となりました。賛成理由としては、「観光消費による地域経済の活性化」(74.3%)や「異文化交流の促進による多様性の拡大」(34.9%)が挙げられ、経済効果と文化的な刺激への期待が示されました。他方、反対理由では「混雑・騒音・ゴミなど生活環境の悪化」(75.7%)、「観光客と地域文化の摩擦」(72.4%)、「治安への懸念」(58.2%)が並び、観光立国政策に伴う社会的コストが強く意識されています。

  • 一方、日本に在留する外国人の増加については、賛成20.6%、反対57.8%と、さらに慎重な姿勢が鮮明になりました。賛成理由には「人手不足を補う労働力の確保」(68.2%)、「日本社会に多様性を広げる」(45.3%)、「地方人口減少の歯止め」(32.7%)などがあり、労働市場や人口構造に対する実利的な期待が見られます。他方で反対理由としては「治安悪化の懸念」(74.5%)、「文化・慣習との摩擦」(73.5%)、「医療・教育・福祉など社会インフラへの負荷」(45.4%)が多く、社会統合や公共サービスへの影響をめぐる不安が前面に出ています。

  • この結果は、日本社会において「外国人受け入れを経済的・人口的に必要とする現実」と、「治安・文化・インフラ負担への不安」がせめぎ合っていることを示しています。観光や労働力確保といった積極的な受益を期待する声と、社会統合コストへの懸念が拮抗しており、受け入れ制度の設計や社会的合意形成のあり方が今後の政治的焦点となることが浮き彫りになりました。

総括

 今回の調査は、日本国内の世論が日米韓関係や安全保障、社会政策について複雑な意識を持っていることを明らかになりました。

 まず、日米同盟を「不可欠」とする認識は広く共有される一方、米国大統領への不信感や駐留経費、防衛費の負担感など、依存に伴う不安も強く表れています。韓国については、文化交流に好意的な評価がある一方で、歴史問題や領土問題を背景に不信感も根強く、国民意識の二面性が見られました。

 台湾有事に関しては、多くが「発生の可能性がある」と認識し、日本の国益にとって「非常に重要」と考えていますが、日本の関与のあり方については「後方支援まで」と「軍事関与を避けるべき」が拮抗し、世論が分かれています。核武装については日本・韓国いずれも強い拒否感が示され、核の傘の持続性と国民の安心感の乖離が課題となっています。

 さらに、防衛費の増額については賛否が拮抗し、国民は抑止力強化の必要性を認めながらも負担への懸念を抱えています。また、外国人旅行客や在留外国人の受け入れについては、経済や人手不足対策への期待と、治安や社会インフラへの不安がせめぎ合っており、丁寧な制度設計と合意形成の必要性が浮き彫りになりました。

 総じて、日本の安全保障や外交政策は、単なる抑止力の強化だけでなく、国民理解と社会的合意をいかに確立するかが今後の大きな課題であることを示しています。

文責:神保謙・長川美里・湯井雅志

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