保育士は女性よりも男性の方が高ストレス者の割合が高い…?
~働きがいを感じている保育士、身体的な負担が大きなストレス要因に~
弊社公式ブログ「AltPaperストレスチェックマガジン」(https://www.altpaper.net/b/)では、その他業種・職種の分析結果やセルフケア方法をご紹介しておりますので、そちらもご参照ください。
保育士の総合健康リスクは、男女共に全国平均を大きく下回っており、その他職種と比較しても低めの数値となっています。しかし、男性の保育士については、高ストレス者の割合が約15%と、とても高い数値が算出されました。
保育所は、従業員数が50人未満の場合が多く、その場合、ストレスチェックの実施は努力義務となっています。厚生労働省の調査※によれば、保育所の約31%がメンタルヘルスチェック(ストレスチェック等の検査)を実施する予定がないと回答しています。
つまり、本分析の対象となった保育所はストレスチェックを実施しており、メンタルヘルスに対する意識が比較的高い事業場であると思われます。そのため、高ストレス者の割合・総合健康リスクが比較的低い数値になったのだと推測されます。
以下、「保育士ストレス平均値 調査結果詳細」をご参照ください。
<注釈>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.データの取り扱いについて
・各事業者様にご提供いただいたデータにつきましては、業種・規模・地域をお伺いして分類することとし、個々の事業者様・受検者様を識別できないようにして取り扱っております。
・各受検者様の回答につきましては、性別・職種と57項目・80項目の回答データのみ使用することとし、個人を識別できないようにして取り扱っております。
2.「高ストレス者」とは
厚生労働省が公表したマニュアル(2015)に基づいており、以下(i)及び(ii)に該当する者を指します。(i)及び(ii)に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度とします。
(i)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
(ii)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」及び「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下
3.「健康リスク」とは
基準値として設定された全国平均値100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」とは、 男女別に求められた量-コントロール判定図と職場の支援判定図から構成されます。この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。
◆仕事のストレス判定図
1.量-コントロール判定図…仕事の量的負担とそれに対するコントロールの度合い(裁量権)による健康リスク
2.職場の支援判定図…上司の支援と同僚の支援の状況・バランスによる健康リスク
<参考文献>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
厚生労働省.(2017).補助型調査研究 平成28年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 保育人材確保に関する調査 調査報告書.
http://www.jikei.ac.jp/univ/pdf/report_2016.pdf
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株式会社情報基盤開発は東京大学発のベンチャー企業です。学内で研究・開発された画像処理技術及びデータベース技術を用いて紙への書き込みをデータ化し、オフィスの生産性を向上することをミッションにしています。アンケート自動集計システム「AltPaper」によって紙アンケートのデータ入力業務を効率化する事業に取り組んでいます。
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【保育士ストレス平均値 調査結果詳細】
- 調査方法
さらに、教育,学習支援業、医療業、保健衛生、社会保険・社会福祉・介護事業、サービス業(他に分類されないもの)、公務(他に分類されるものを除く)(計29事業者様)の中から、職種が「保育士」に該当する男性40名、女性569名のデータを使用して、男女別に分析を行いました。
- 調査結果
職業性ストレス簡易調査票における各尺度の平均値が全国データからどれほど乖離しているかを計るために、全国平均値を0とし、1から-1の間に全国データの7割が入るように、正規化数値※4を算出しました。
<注釈>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4. { (各尺度の値) – (全国平均) }/(全国データの標準偏差)×100を正規化数値と仮定しています。
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まず、総合健康リスクの算出に使用される4つの尺度(グラフ赤枠)に着目すると、男性については、4つ全ての尺度において全国平均並みもしくは全国平均をやや上回る数値が出ています。女性については、「心理的な仕事の負担(量)」の数値は全国平均をやや下回っていますが、その他3つの尺度は、男性と同様に全国平均並みもしくは全国平均をやや上回る数値が出ています。
この結果、男女共に、保育士の総合健康リスクが全国平均を下回る低めの数値となったのだと考えられます。
また、4つの尺度以外については、男女共に「心理的な仕事の負担(質)」「自覚的な身体的負担度」(グラフ黄枠)の数値が全国平均を大きく下回っており、ストレス要因となりやすいことが読み取れます。
保育士は、0歳・1歳などの乳児から6歳までの幼児といった幅広い年齢の子供を預かるケースが多く、子供の年齢によって仕事内容が異なるため、一人で様々な種類の業務に取り組む必要があります。また、子供たちの安全を守るため、その業務には常に緊張感が伴い、仕事の質的な負担につながっていると推測されます。
さらに、子供たちに合わせた業務形態であるため、保育士のペースで仕事を進めることが難しいと思われます。頻繁に泣く子供たちの対応に追われたりなど、充分な休憩を取れていないケースも多く、大きな身体的負担がかかっていると思われます。
一方で、上記6つの尺度(赤枠・黄枠)以外では、ほとんどの尺度で全国平均を上回る数値が出ています。特に、「職場環境によるストレス」「自覚的な仕事の適性度」「働きがい」「活気」の数値は男女共に全国平均を大きく上回っており、積極的に仕事に取り組んでいることが読み取れます。
また、その他についても、男性・女性の数値が似通っている尺度が多くあります。しかし、 [仕事のストレス要因]に含まれる尺度(※赤枠・黄枠の尺度を除く)では、女性よりも男性の方が低い数値が出ています。これらが影響し、女性よりも男性の高ストレス者の割合が高くなったのだと推測されます。
※上記分析において、比較の基準としている「全国(厚労省データ)」は、“厚生労働省科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業「職業性ストレス簡易調査票及び労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストの職種に応じた活用法に関する研究」平成19年度総括・分担報告書 表4 職業性ストレス簡易調査票下位尺度の職種別平均値及び標準集団との比較”が出典です。
- セルフケア方法
職場環境づくりの一環として、保育士の休憩時間を確保することが大切です。保育士の業務は子供たちのリズムに合わせる必要があるため、充分な休憩がとれていないケースが多いと思われます。また、施設によっては、保育士用の隔離されたスペースがなく、休憩時間もリラックスすることができないといった声も聞かれます。
スタッフ同士でコミュニケーションを取り合い、一人ひとりが精神的にも身体的にも休息できる時間と場所を確保することが大切です。施設内に休憩スペースを確保できない場合には、休憩時間内の外出を許可することもリフレッシュにつながると考えられます。
また、保育士自身も、自分の仕事の特性を理解することが大切です。仕事に従事する上で、「自分の仕事は、質的にも身体的にも負担がかかりやすいものだ」という認識の有無は、その人のストレス度合いに影響を及ぼします。
大切なお子さんを預かる保育士には責任感が強く頑張り屋さんの方が多いので、自分が高ストレス状態にあることに気づけない人も多いと思われます。ストレスチェックの受検結果などから自身のストレス状況やストレス要因を理解してセルフケアに努めたり、職場環境や業務内容に目を向けて、改善できるものはないか見直してみましょう。
保育士の心身の健康は、保育の質の向上につながります。子供たちが親元を離れて最初に経験する環境をより良いものにするためにも、保育士のメンタルヘルスを重要視し、サポート体制の構築やセルフケアの呼びかけに取り組みましょう。ストレス要素の削減に取り組むことで、仕事にやりがいを感じている「保育士」の離職を防ぐことにつながると考えられます。
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