日本メドトロニック 本邦初のステロイド溶出型生体吸収性副鼻腔用ステント「PROPEL™ 」鼻腔内ステントを販売
―副鼻腔手術後管理の質を高め、患者さんの症状改善に貢献―
日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区)は、副鼻腔炎手術後に使用するステロイド溶出型生体吸収性副鼻腔用ステント「PROPEL™ (プロペル)」(以下、PROPEL)の保険適用を取得し、2025年 9月 25日付けで発売を開始したことをお知らせします。

副鼻腔炎は、蓄膿症としてもなじみ深い疾患であり、日本国内では約200万人が罹患していると推定され、国内での罹患者の年齢が中央値(※1)で45歳と、働き盛りの世代での罹患率も高いのが特徴です。副鼻腔内の炎症により、鼻閉、鼻漏、咳嗽(がいそう:咳き込むこと)などの呼吸器症状を呈し、頭痛、頬部痛、嗅覚障害などをもたらし、患者さんのQOLに大きな影響を与えています。
これらの症状が3か月以上継続した場合、慢性副鼻腔炎と診断されます。一般的な処置や薬物療法で改善が認められない場合は、副鼻腔を開放し炎症を起こした粘膜を取り除くために、内視鏡下鼻副鼻腔手術(以下、ESS)が実施されます。ESSは患者さんの症状を大幅に改善することができ、国内において体に負担の少ない標準的な治療法として確立しています。一方で、術後の管理が難しいことでも知られ、術後の経過中には、再び粘膜の腫れや炎症がみられ症状が再燃(※2)することがあります(※3)。その場合、追加の外科的な処置や、炎症を抑えるために副作用のリスクも高い経口ステロイド投与が必要となる場合もあり、長年の間、慢性副鼻腔炎の治療における課題とされてきました。また、慢性副鼻腔炎は他の疾患と比較しても外来受診や入院の頻度、薬剤処方や合併疾患に対する治療コストが高いことが示されており、日本の医療経済に与える影響も大きく、術後の再燃リスクを低減することが重要と考えられています(※4)。
PROPELは、本邦初のステロイド溶出型生体吸収性副鼻腔ステントであり、ESS後に副鼻腔(篩骨洞、前頭洞)に留置されます。PROPELは副鼻腔内に留置されたのち、副鼻腔の開存性を維持しながら、ステロイド成分(モメタゾンフランカルボン酸エステル)を約30日間にわたり局所に徐々に放出し続けることで術後の再燃リスクを低減することが期待されます。

PROPELの臨床試験(※5)(※6)では、術後30日間に必要な治療介入(外科的追加治療や経口ステロイド薬の使用)が、これまでの一般的な術後管理と比較して有意に35%~47%削減することが確認されました。また、米国で行われた実際の臨床における長期観察研究(※7)では、本製品を使用した群は、一般的なこれまでの術後管理と比較して、術後2年間にわたって耳鼻咽喉科の受診を22%、外科的な追加治療を22%、再手術の必要性を27%減少することが確認され、本製品を使用することによる術後の急性期管理が中長期的に有効であることが示されています。
東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学講座 教授 鴻信義 先生は、「慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下手術は1980年頃から医療支援機器の発展により普及し、現在では低侵襲で負担の少ない手術として確立されています。一方で、術後の管理においては国内で利用できる薬剤や医療材料の制約の中で一般化されたものはなく、術後の再狭窄や再炎症などのリスクをいかに低減していくかが課題とされていました。PROPELは臨床試験にて示されたエビデンスにより、術後の副鼻腔内に留置することで術後の再燃リスクを大幅に低減する可能性があり、日本の慢性副鼻腔炎の術後管理の在り方を変えることを大いに期待しています。」と述べています。
メドトロニックのニューロサイエンスのポートフォリオの一つであるENT事業部 ビジネスダイレクターの丸山 雅史は、次のように述べています。「メドトロニックは、これまでに日本の耳鼻咽喉科領域において先生方と共に様々な革新的な製品を提供してまいりました。PROPELもその一つであり、本品を日本の患者さんにお届けすることで、国内の慢性副鼻腔炎に対する術後管理に新しい選択肢を提供し、患者さんのQOL向上に貢献できることを大変うれしく思います。」
PROPELは2024年11月に国内で薬事承認を取得し、2025年9月から特定保険医療材料として保険収載されています。

【内視鏡下副鼻腔手術とは】
内視鏡下副鼻腔手術は、慢性副鼻腔炎に対して行われ、内視鏡下にて、マイクロデブリッダーと呼ばれる組織吸引ブレードなどを用いて行われる体に負担の少ない手術です。狭窄又は閉塞した副鼻腔から鼻腔への排出路を開大することで鼻腔への交通を確保して排膿させ、副鼻腔の病的粘膜を切除することにより、粘膜の再生・治癒を目的とした手術です。最近ではナビゲーション支援機器も普及しており、より安全な手術が行えるようになってきています。国内では毎年50,000件を超える手術が行われており(※8)、疾患の認知や手術法の改良により今後も増加が見込まれています。
(※1)中央値:データを並べた際の中央に位置する値
(※2)再燃:一度収まった炎症や症状が再び現れること
(※3)Tokunaga, et Al. Novel scoring system and algorithm for classifying chronic rhinosinusitis: the JESREC Study. European Journal of Allergy and Clinical Immunology. 2015; 70: 995-1003
(※4)Yoshikawa, et al. Real-world burden and treatment of chronic rhinosinusitis in Japan: A retrospective claims database analysis. Laryngoscope Investigative Otolaryngology. 2023; 8: 346-356
(※5)Joseph K. Han, et al. Effect of steroid-releasing sinus implants on postoperative medical and surgical interventions: an efficacy meta-analysis. Interventional Forum of Allergy & Rhinology. 2012; 2(4): 271-279
(※6)Ameet Singh, et al. Bioabsorbable steroid-releasing implants in the frontal sinus ostia: a pooled analysis. Interventional Forum of Allergy & Rhinology. 2019; 9(2): 131-139
(※7)Veena Hoffman, et al. Reduction in Healthcare resource use through 24 months following sinus surgery with steroid-eluting implants in chronic rhinosinusitis patients with and without nasal polyps: a real-world study. Current Medical Research and Option. 2023; 39(12): 1613-1619
(※8)令和5年(第10回)NDBオープンデータより内視鏡下鼻・副鼻腔手術算定件数より算出
【メドトロニックについて】
大胆な思考。より大胆な行動。私たちはメドトロニックです。Medtronic plc(本社:アイルランド、ゴールウェイ)は、ヘルスケアテクノロジーをグローバルにリードし、人類が直面している多くの困難な健康課題に積極的に取り組み、ソリューションを探し、見つけ出します。150ヵ国以上にまたがる情熱を持った9万5千人以上の従業員からなるグローバルなチームを団結させているのは、「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」という私たちのミッションです。私たちは70以上の健康課題を治療する、心臓ペースメーカ、手術支援ロボット、インスリンポンプ、外科用手術機器、患者モニタリングシステムなどの多様なテクノロジーと治療法を提供しています。私たちは、多様な知識、飽くなき好奇心、そしてそれを必要とするすべての人を助けたいという思いを原動力に、革新的なテクノロジーで、1秒に2人の人々の生活を、毎時間、毎日、変え続けていきます。メドトロニックは、インサイト(洞察)に基づいた治療法の提供、人を第一に考えたエクスペリエンス、そして世の中により良いアウトカム(結果)をもたらすことに注力していきます。私たちは何ごとにもエンジニアのマインドを持って、想像を超えるものを創り出します。
Webサイト www.medtronic.com
【日本メドトロニック株式会社 (Medtronic Japan Co., Ltd.)について】
日本メドトロニックは1975年の設立以来50年にわたり、生体工学技術を応用し、慢性疾患をお持ちの方々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす医療機器を通して人類の福祉に貢献することを目指しています。メドトロニックが提供する先端医療技術は、心臓疾患をはじめ、パーキンソン病、糖尿病、脊椎疾患、脳疾患、慢性的な痛みなどを広くカバーしています。Webサイト www.medtronic.co.jp
なお、将来の業績見通しに関わるすべての記述は、メドトロニックが米国証券取引委員会に提出する定期報告書に記載されているようなリスクや不確定要素の影響を受ける場合があります。実際の業績は予想と異なる可能性があります。
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