連結子会社におけるスターガルト病治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」に関するLaboratoires KÔLとの提携可能性検討(商業化協業を含む)に向けた意向表明書(LOI)を締結
窪田製薬ホールディングス株式会社(本社:東京都港区、以下「当社」)の連結子会社であるKubota Vision Inc. (所在地:アメリカ合衆国・ワシントン州シアトル、Director of the Board, Chairman, President, and CEO;窪田 良)は本日、スターガルト病治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」に関する潜在的な提携の可能性(商業化協業を含む)について協議・検討するため、Laboratoires KÔL(本社:フランス・クレルモン=フェラン、Founder and CEO; Sophie Momège)との間で、以下のとおり、意向表明書(Letter of Intent、以下「LOI」)を締結しましたことをお知らせいたします。

記
1.目的
スターガルト病治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」に関する協業の可能性の評価
2.協議範囲
・販売権及び独占権に関するライセンス契約
・知的財産権及び機密情報の取り扱い
3.今後の見通し
LOI自体については原則として法的拘束力はなく、その締結自体が当社の当期連結業績に与える影響は軽微であると見込まれます。今後の具体的な契約交渉や事業展開の結果によっては、将来的に当社の経営成績または財政状態に影響を及ぼす可能性があります。その場合には、速やかに開示いたします。
両社は現在、当該LOIに基づき、スターガルト病治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」の販売権および独占権に関するライセンス契約について協議中であり、2025年12月上旬を目途に具体的な契約内容に関する協議を進めております。Kubota Vision Inc.は、「エミクススタト塩酸塩」の原材料仕入、医薬品有効成分(API)の製造、医薬品製剤(タブレット型錠剤)の製造、並びに審査業務についてLaboratoires KÔLと連携して実施します。一方、Laboratoires KÔLは「エミクススタト塩酸塩」の製造以外のすべての業務を担当し、審査に関しては当社グループと連携する予定です。
4.Laboratoires KÔLの概要(2025年11月現在)

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(1)名称 |
Laboratoires KÔL |
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(2)所在地 |
22 allée Alan Turing, 63000 Clermont-Ferrand, France |
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(3)代表者の役職・氏名 |
Founder and CEO, Sophie Momège, PharmD |
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(4)事業内容 |
角膜移植拒絶、角膜血管新生、角膜幹細胞欠損などの角膜関連疾患を中心とした眼科領域における医薬品の研究開発・製造・販売を行う。特に、希少角膜疾患を対象とする治療薬の開発を強みとしており、独自のアンチセンスオリゴヌクレオチド技術「Olisens®」を基盤に、前臨床から臨床試験段階に至るまでの開発を推進している。 |
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(5)設立年月日 |
2020年2月 |
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(6)当該企業との関係 |
資本関係:該当事項はありません。 |
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人的関係:該当事項はありません。 |
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取引関係:該当事項はありません。 |
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関連当事者への該当状況:該当事項はありません。 |
5.Kubota Vision Inc.の概要(2025年11月現在)

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(1)名称 |
Kubota Vision Inc. |
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(2)所在地 |
107 Spring Street, Seattle, WA 98104, USA |
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(3)代表者の役職・氏名 |
Ryo Kubota, MD, PhD Director of the Board, Chairman, President, and CEO |
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(4)事業内容 |
眼科に特化した医薬品・医療機器の開発 |
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(5)設立年月日 |
2002年4月 |
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(6)資本金 |
212,606千米ドル |
本件について、当社の代表取締役会長、社長兼最高経営責任者の窪田良(眼科医、医学博士)は次のようにコメントしています。
「このたび、Laboratoires KÔL社とスターガルト病(STGD1)を対象としたエミクススタト塩酸塩の開発および商業化に向けた協業の可能性を検討するため、基本合意書(LOI)を締結できたことを大変嬉しく思います。KÔL社は眼科領域における深い専門知識と、欧州での強固なプレゼンスを有しており、希少網膜疾患という未充足の医療ニーズに応えるという、私たちの共通の使命をさらに前進させる理想的なパートナーです。
この協業を通じて、視力を守り回復させる可能性をもつ革新的な治療法への世界的なアクセス拡大を加速させたいと考えています。当社グループの臨床開発力と視覚サイクルモジュレーション技術(VCM技術)、そしてKÔL社の角膜および網膜疾患治療における経験を組み合わせることで、患者さんや眼科医療の発展に貢献してまいります。」
また、Laboratoires KÔL社の創業者 兼 CEO ソフィー・モメージュ(薬学博士)は、次のようにコメントしています。
「現在、有効な治療法が存在しないスターガルト病に対し、Kubota Vision社と協業し、エミクススタト塩酸塩の開発および商業化の可能性を探る機会をいただけたことを光栄に思います。Kubota Vision社の確かな臨床開発力と当社の専門知識を組み合わせることで、世界中の患者さんに初めてとなる有効な治療法を届け、子どもたちの視力低下を防ぐ一助となることを目指します。」
以上
スターガルト病について
スターガルト病は、目の網膜に障害をきたす稀少遺伝性疾患で若年者に発症し、緩やかに視力が低下していきます。スターガルト黄斑ジストロフィー又は若年性黄斑変性とも言われます。スターガルト病の主な要因とされるABCA4遺伝子異常により、徐々に光受容体が損傷し視力が低下します。スターガルト病患者には、視野の欠損、色覚異常、歪み、ぼやけ、中心部が見えにくいといった様々な症状が見られます。典型的なスターガルト病は、小児期から青年期にかけて発症しますが、中には成人期まで視力低下を自覚しない患者もいます。
眼球の奥にある網膜には、脳に映像を認識させるために光を電気信号に変える働きをする「視覚サイクル」と呼ばれる仕組みがあります。この視覚サイクルでは、まず光が網膜の光受容細胞(視細胞)にあるレチナール(ビタミンAの一種)とオプシンと呼ばれるタンパクが結合した光受容タンパク(視物質)により吸収され、その視物質の構造変化が起きます。この構造変化が視細胞内のシグナル伝達系を活性化して膜電位を変化させ、生じたシグナルが脳へと伝わる、という仕組みです。
この視覚サイクル中、光受容時に生じる構造が変化した視物質からビタミンA構造由来の有害代謝産物が生成されます。この有害物質が、後述の理由で網膜色素上皮(RPE)細胞内に蓄積されると、RPE細胞の機能喪失及びアポトーシス(細胞死)が起こり、ひいては視細胞の喪失による視力低下あるいは失明にいたります。この有害物質のRPE細胞内の蓄積がスターガルト病の直接的病因です。
正常の網膜には、こうした有害代謝産物の前駆物質を視細胞内から外に運搬する膜輸送タンパクがあるため、RPE細胞は守られています。スターガルト病は遺伝性の網膜疾患で、この視覚サイクルにおける視物質の膜輸送タンパクABCRをコードするABCA4遺伝子の変異があり、その変異が本疾患の根本原因と考えられています。現時点では治療法はありません。
エミクススタト塩酸塩について
エミクススタト塩酸塩は、当社グループ独自の視覚サイクルモジュレーション技術(VCM技術)により視覚サイクル中の重要な酵素であるRPE65を選択的に阻害することで視覚サイクルによって生じる老廃物を減らす効果があり、スターガルト病の抑制が期待されています。
視覚サイクルモジュレーション技術(VCM技術)とは、視覚サイクル(眼球の後部にある網膜内にて光子が電気信号へと変換する仕組み)によって網膜に蓄積する有害副産物を減少させ、また酸化ストレスにより網膜の障害を低減し、光ダメージから網膜を保護する効果が期待される治療技術です。
網膜色素上皮(RPE)細胞はその成長に伴い、光受容体の先端を(一定の速度で)侵食し続け、同時に視覚サイクルの有害副産物が蓄積されていきます。エミクススタト塩酸塩が視覚系に適用されると(桿体細胞のみを標的とし、錐体細胞には作用しない)視覚サイクルにおける重要酵素の生成が抑制されます。エミクススタト塩酸塩が酵素の生成を抑制することにより、桿体細胞の活動も抑制されると同時にRPE細胞での有害副産物の蓄積も緩徐になります。視覚サイクルを遅らせる(モジュレートする)ことにより蓄積される有害副産物が減少し、病状の進行が遅くなります。
医薬品有効成分(API: Active Pharmaceutical Ingredient)
医薬品の主成分として有効な薬理作用を示す化学物質または生物由来成分を指し、最終製剤(スターガルト病治療候補薬「エミクススタト塩酸塩」の場合は経口錠剤)に配合される前の原薬段階の物質です。
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