熱交換可能な酸化物熱電モジュールの開発【産技助成Vol.68】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
天然ガスの熱エネルギーを50℃以下の給湯にしか活用していないガス機器に
熱電発電モジュールを搭載して発電し、電力供給不要の自立型機器を構築。
廃棄物炉、工業炉、自動車等の廃熱回収の道を開く、高効率な熱電発電技術を開発。
天然ガスの熱エネルギーを50℃以下の給湯にしか活用していないガス機器に
熱電発電モジュールを搭載して発電し、電力供給不要の自立型機器を構築。
廃棄物炉、工業炉、自動車等の廃熱回収の道を開く、高効率な熱電発電技術を開発。
【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、独立行政法人産業技術総合研究所の主任研究員、舟橋 良次氏は、熱交換可能な酸化物熱電モジュールの開発をしました。
これまで、熱電発電モジュールに用いられていたドーナツ型またはアーチ型素子は、熱交換性が悪く、電力の低下が課題でした。これを解決するためにこれまでに開発した平板型モジュール技術を用いた、熱交換性と耐久性に優れる六角形のパイプ型モジュールを作製し、高温側に、窒化アルミニウムを材料とするフィンを取り付け、効率よく熱回収できるようにしました。30回以上のガス燃焼実験によっても発電性能は劣化せず、耐久性にも優れています。
給湯器の給湯機能に加え、同時に発電および過熱蒸気の発生を付加でき、単なる湯沸かし器がトリジェネレーションシステムへと多機能化されます。電力不要であり、有害な排気ガスも発生しません。また、天然ガスの燃焼によって得られる高温エネルギーを徹底的に3段階で利用するので高い省エネルギー効果が期待できます。
1.研究成果概要
火力発電、廃棄物炉等では、莫大な廃熱の約3分の2は利用されずに捨てられています。こうした廃熱を直接電気に変換できる熱電発電は、エネルギーの有効利用と環境負荷の低減という観点から大きな期待が寄せられています。しかし、従来の熱電発電用に開発されてきた材料の多くは毒性元素や稀少元素を含むことと、耐久性、耐酸化性に乏しく、実用化が困難でした。
これらの問題の解決可能な材料として、酸化物熱電材料が注目されています。本研究では現在、世界最高の変換効率をもつコバルト系酸化物熱電材料を用いて、実用可能な発電モジュールを開発しました。さらにシステムの低コスト化、高耐久性による高い投資回収とエネルギー回収性を実現すると共に、従来の熱機関に新しい価値創造(付加価値)も目指して研究を行い、当初の目的をほぼ達成しています。
このモジュールを給湯器へ導入することで、熱電発電による電気が得られるほか、過熱蒸気が得られ、スチームオーブン等にも利用できる「トリジェネレーションシステム」が得られます。また、点火時等に必要だった電力が不要となるため、自立型機器が実現できます。
2.競合技術への強み
1)高い熱交換効率:従来捨てられていた未利用の廃熱を利用して発電と過熱蒸気(200℃)発生に利用するので、システム全体の熱利用効率が高くなっています。同時に排気ガスに含まれる一酸化炭素量の低減にも役立ちます。
2)高い耐久性:酸化物熱電材料を使用するので、800℃の高温での繰り返し使用に耐えます。
3)低コスト:熱電素子を改良し、新たなパイプ型モジュールを使用しているので、素子加工にかかるコストを低減できます。
3.今後の展望
基本的な素子材料の選択、モジュールの設計と製造はクリアしており、実用化の目前まで到達していると思っています。今後はベンチャー創業による実用化、事業化を目指します。そのためには、原料粉末から熱電発電システムまでの製造技術の構築が重要です。本研究での製造技術を核として、廃棄物炉、ガス機器メーカ等と連携し、推進しているところです。また、工業炉や自動車へと需要範囲を広げていきたいと考えています。
4.参考
成果プレスダイジェスト:産業技術総合研究所主任研究員 舟橋 良次氏
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として、独立行政法人産業技術総合研究所の主任研究員、舟橋 良次氏は、熱交換可能な酸化物熱電モジュールの開発をしました。
これまで、熱電発電モジュールに用いられていたドーナツ型またはアーチ型素子は、熱交換性が悪く、電力の低下が課題でした。これを解決するためにこれまでに開発した平板型モジュール技術を用いた、熱交換性と耐久性に優れる六角形のパイプ型モジュールを作製し、高温側に、窒化アルミニウムを材料とするフィンを取り付け、効率よく熱回収できるようにしました。30回以上のガス燃焼実験によっても発電性能は劣化せず、耐久性にも優れています。
給湯器の給湯機能に加え、同時に発電および過熱蒸気の発生を付加でき、単なる湯沸かし器がトリジェネレーションシステムへと多機能化されます。電力不要であり、有害な排気ガスも発生しません。また、天然ガスの燃焼によって得られる高温エネルギーを徹底的に3段階で利用するので高い省エネルギー効果が期待できます。
1.研究成果概要
火力発電、廃棄物炉等では、莫大な廃熱の約3分の2は利用されずに捨てられています。こうした廃熱を直接電気に変換できる熱電発電は、エネルギーの有効利用と環境負荷の低減という観点から大きな期待が寄せられています。しかし、従来の熱電発電用に開発されてきた材料の多くは毒性元素や稀少元素を含むことと、耐久性、耐酸化性に乏しく、実用化が困難でした。
これらの問題の解決可能な材料として、酸化物熱電材料が注目されています。本研究では現在、世界最高の変換効率をもつコバルト系酸化物熱電材料を用いて、実用可能な発電モジュールを開発しました。さらにシステムの低コスト化、高耐久性による高い投資回収とエネルギー回収性を実現すると共に、従来の熱機関に新しい価値創造(付加価値)も目指して研究を行い、当初の目的をほぼ達成しています。
このモジュールを給湯器へ導入することで、熱電発電による電気が得られるほか、過熱蒸気が得られ、スチームオーブン等にも利用できる「トリジェネレーションシステム」が得られます。また、点火時等に必要だった電力が不要となるため、自立型機器が実現できます。
2.競合技術への強み
1)高い熱交換効率:従来捨てられていた未利用の廃熱を利用して発電と過熱蒸気(200℃)発生に利用するので、システム全体の熱利用効率が高くなっています。同時に排気ガスに含まれる一酸化炭素量の低減にも役立ちます。
2)高い耐久性:酸化物熱電材料を使用するので、800℃の高温での繰り返し使用に耐えます。
3)低コスト:熱電素子を改良し、新たなパイプ型モジュールを使用しているので、素子加工にかかるコストを低減できます。
3.今後の展望
基本的な素子材料の選択、モジュールの設計と製造はクリアしており、実用化の目前まで到達していると思っています。今後はベンチャー創業による実用化、事業化を目指します。そのためには、原料粉末から熱電発電システムまでの製造技術の構築が重要です。本研究での製造技術を核として、廃棄物炉、ガス機器メーカ等と連携し、推進しているところです。また、工業炉や自動車へと需要範囲を広げていきたいと考えています。
4.参考
成果プレスダイジェスト:産業技術総合研究所主任研究員 舟橋 良次氏
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