皮膚内部に浸透した成分を生体に近い状態で立体的に可視化する世界初の技術を開発
日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、名古屋大学大学院 生命農学研究科 森林化学研究室(名古屋市千種区不老町、准教授:青木弾)、あいち産業科学技術総合センター(愛知県)と共同で、皮膚に塗布した成分の皮膚内部への浸透状態を立体的に可視化する新たなイメージング技術を開発しました。この技術は、凍結させた皮膚を極低温下で質量分析し、成分の皮膚への浸透を立体的に観察できる世界初の技術で、これまでの方法よりも生体に近い状態かつリアルな浸透成分の分布の観察が可能になります。
皮膚に塗布した成分は、皮膚内部に浸透して目的の部位に届き、その効果を発揮します。この成分の浸透経路や浸透速度を評価することは、効果を最大限に引き出すために重要です。しかし、これまでは、皮膚への浸透状態を直接観察することは技術的に難しく、乾燥や洗浄などの前処理を行う必要があり、その間に皮膚の構造や本来の浸透状態から変化してしまうという課題がありました。そのため、より生体に近い状態で前処理を行わずに可視化する技術の開発が求められていました。
メナードは、名古屋大学大学院 生命農学研究科 森林化学研究室およびあいち産業科学技術総合センターと共同で、この課題を解決できる世界初の3次元凍結質量イメージング技術を開発しました。この技術は、成分を浸透させた皮膚を凍結させ、そのまま測定を行うことができるため、皮膚構造を維持したまま、浸透した成分の皮膚内部での分布を立体的に可視化することが可能です。また今回、この技術を用いて、皮膚に塗布したビタミンCの浸透状態を立体的に可視化することに成功しました。このイメージング技術は、特異的なイオンがあればどのような成分でも測定でき、性質や分子量などの違いにより浸透性の異なる成分が皮膚内部をどのような経路で浸透していくかを評価できます。メナードは今後この技術を、化粧品や医薬部外品の浸透評価に応用し、より機能的で安全な商品の開発に活かしていきます。
本研究は「知の拠点あいち重点研究プロジェクトⅣ期」(プロジェクトCore Industry)における成果です。
<参考資料>
1.知の拠点あいち重点研究プロジェクト
「知の拠点あいち重点研究プロジェクト」とは、大学等の研究シーズを活用したオープンイノベーションにより、県内主要産業が有する課題を解決し、新技術の開発・実用化や新たなサービスの提供を目指す産学行政連携の研究開発プロジェクトです。Ⅳ期にあたる今回のプロジェクトは、3つのプロジェクト(「プロジェクトCore Industry」・「プロジェクトDX」・「プロジェクトSDGs」)が定められ、本研究はプロジェクトCore Industryにおける次世代材料・分析評価として採択されています。
研究テーマ:『塗膜/外用剤の次世代分子デザインに向けた3次元可視化法の確立』
2.皮膚に浸透した成分の3次元凍結質量イメージング
今回開発した技術には、GCIB(ガスクラスターイオンビーム)*1とTOF-SIMS(飛行時間型2次イオン質量分析法)*2を組み合わせた、凍結試料を導入する独自の試験装置を使用します。化粧品や外用医薬品を塗布した皮膚をすぐに凍結し、凍結状態のまま表面をGCIBで削りながら、TOF-SIMSで表面を測定します。これを繰り返すことで、3次元の質量イメージング像を取得します。
従来、皮膚組織における浸透成分の解析は乾燥させるなどの前処理が必要で、皮膚の構造や成分の分布が変化してしまうことがありました。今回開発した技術では、凍結させた皮膚を-140℃の極低温下で測定することで、皮膚の状態を維持したままの測定が可能になりました。その結果、より生体に近い状態で皮膚に浸透した成分の分布を立体的に観察できるようになりました。極低温下にてGCIBとTOF-SIMSを用いて皮膚内部の成分を立体的に可視化する技術は、世界初の技術です。
*1 GCIB(ガスクラスターイオンビーム)
数千個程度のアルゴンなどの原子で形成されるガスクラスターイオンビームを固体表面に衝突させ、表面を削る装置です。1原子あたりのエネルギーが低いため、有機物などのソフトマテリアルでも表面を化学反応で壊すことなく、少しずつ均一に削ることができます。この技術を利用することで、皮膚表面を変質・分解することなく、数nmオーダーで深さ方向における正確な組成分析が可能になりました。
*2 TOF-SIMS(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry、飛行時間型2次イオン質量分析法)
固体表面に低エネルギーの一次イオン(イオンビーム)を照射し、放出された二次イオンを質量分析器で測定し、得られたスペクトルより試料表面の構造解析を行う方法です。この方法は、固体表面の分子や原子の分布を観察し、分布状況を可視化することができ、多種多様なイオンを同時に、かつ高感度に測定できる手法です。また、放射性同位体や蛍光で標識を付加する必要がなく、使用する物質に制限はありません。
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像