書籍『新装版「ニセ医学」に騙されないために』発売記念! 内科医・名取宏先生 インタビュー

2018年11月29日、株式会社内外出版社(東京・上野/代表取締役社長:清田名人)は、『新装版「ニセ医学」に騙されないために~科学的根拠をもとに解説』を発売します。著者は、ネット上でいち早くニセ医学批判を始めた内科医・名取宏氏。「抗がん剤は毒にしかならない」「ワクチンは危険」「酵素を補うべき」など、危険な反医療論や代替医療、おかしな健康法について、査読を通った確かな文献をもとに、わかりやすく説明した一冊です。この書籍の発売を記念して、名取宏氏のインタビューを行いました。
 

 


科学的根拠をもとに解説
新装版 ニセ医学に騙されないために
内科医・名取宏 著
定価(本体1380円+税)/四六版/208ページ
紙版 https://amzn.to/2zlSpEk
Kindle版 https://www.amazon.co.jp/dp/B07KR6R7WR/












――まず、「ニセ医学」の定義を教えてください。
「ニセ医学」というのは、医学のふりをしているけど、科学的根拠(エビデンス)のないものです。簡単に言えば、インチキ医学ですね。大雑把にくくると、ニセ医学は「ニセ科学」に含まれます。ニセ科学というのは、科学のような見かけをしているけど、科学的根拠のないものです。たとえば、血液型と性格には強い関係があるとする『血液型性格診断』などがあります。

 
――2014年に『「ニセ医学」に騙されないために』の初版が出てから、どんな変化がありましたか?
「ニセ医学」という概念自体は、ずっと昔からありました。1952年にアメリカで出版されたマーティン・ガードナーの著書(日本語版『奇妙な論理Ⅰ』の原著)で、ニセ科学のひとつとして書かれているほどですが、私の本が出てから医師向けの雑誌でニセ医学の特集が組まれたりしたことは、とても嬉しい変化でした。それから、以前はインターネット上でニセ医学を批判したり、わかりやすい医療情報を伝えたりする医師は少なかったのですが、今ではたくさんの医師が情報発信をしています。私の本とは関係ないでしょうが、多くの方に正しい情報を伝えるためにとてもいいことだと喜んでいます。
 


――「ニセ医学」がよくないのは、どうしてでしょうか?
端的に言うと、①心身に有害な場合があるから、②標準医療を遠ざけるから、③値段が高いから、です。①についていうと、ニセ医学もさまざまで、無害そうなものもありますが、中には潜在的にリスクがあるものや明らかに有害なものもあります。②の標準医療から遠ざけることについては、適切な治療を受けられず病気が悪化するかもしれませんし、場合によっては命にもかかわります。③の値段が高いは、いわずもがなですね。ニセ医学につぎ込んで生活が破たんするという事態になったら大問題ですし、そうでなくても別のことに使えるはずの大切なお金を失うことになってしまいます。


――ニセ医学に騙されてしまう方がいるのは、なぜだと思いますか?
ひとつは、やっぱり病気や不調の中には、治らないものもあるからだと思います。たいていの病気は治せるようになりました。昔に比べたら平均寿命もずっと伸びました。しかし、それでもどうしても治せない病気はあるわけで、ニセ医学に惹かれることもあるでしょう。

それ以外に、実際に病気になって動揺しているときには選択を誤ってしまうこともあるでしょうし、一部ではありますが患者さんに不信感を持たれるような医師がいるからというのもあるでしょう。

また、大変申し訳ないことですが、保険診療では一人一人の患者さんに十分に時間をかけられないこともあります。一方で、ニセ医学は大金をとるのと引き換えに時間をかけてくれたりします。治療の見通しについても、普通の医師は治らないときには「治りません」と正確に説明しなければならないのに対し、ニセ医学では根拠なく「治ります」と都合のよいことを言えますのでやさしく感じてしまうというのも理由の一つだと思います。


――ニセ医学の側がよく使う手口ってありますか?
昔は書籍を出版したり講演会を行ったりなどして広める手口が多かったのですが、今ではインターネット広告やSNSを使う手口が多いと思います。意外とツイッターには医師がたくさんいて、すぐに反論するので広まりにくいようです。しかし、フェイスブックやインスタグラムでは、ニセ医学が広まりやすいように思います。手口としては、以下のようなものが多いでしょう。

〇何か大変な病気が治ったという体験談を見せる
本当によくある手です。標準的な治療も併用されておりそちらが効いたと思われるケースやもともとの診断が疑わしいケースなどがあります。悪質なものでは、撮影条件が異なるCT画像を提示して「がんが消えた」と称するものがありました。

〇学会発表をしているとアピールする
学会発表は一般の方が思っているよりもずっと簡単にできます。学会発表だけではスタートラインにも立てていません。学術誌に論文が掲載されてからがスタートで、それから専門家の間で検証され受け入れられたものが標準医療となっていきます。ニセ医学を売る側は、「発表した」という事実を宣伝のためにアピールします。

〇これをやらなければ大変なことになると脅す
不安を与えてニセ医学に引きこむのもよくある手口です。健康になりたいと願う気持ち、子どもを健やかに育てたいという気持ちなどに付け込んできます。

〇立派な医師が推薦していると伝える
偉い先生に講演を頼むこともありますね。すると、講演好きな医師なら「いいよ、いいよ」と安易に引き受けて、リップサービスでいいものだと言ってしまうこともあるでしょう。
 


――「根拠はないけど効果はあった」と主張するひとたちもいます
その多くは自然治癒です。風邪やインフルエンザ、乳腺炎…、だいたいの病気やトラブルは自然に治ります。何かしたあとに治ったら、やったことが効いたと誤認してしまうのです。今でこそ風邪に抗菌薬(抗生物質)は効かないし、副作用や薬剤耐性の問題から風邪に抗菌薬を処方してはいけない、ということは常識になりつつありますが、昔は風邪に抗菌薬を処方する医師がたくさんいました。おそらく二次感染の予防や風邪ではない細菌感染も否定できないから、という意味もあったと思いますが、なにしろ風邪はほぼ100%治ります。そうするとまた抗菌薬を使いたくなる。以前は、医師ですら昔は自然治癒を薬の効果だと誤認していたのです。


――よく「今の科学ではわからないけど、あとで根拠が出てくるかもしれない」という主張がありますが
その通りなのですが、そうはいっても今の科学でわかる範囲で最善を尽くすしかありません。効果効能がないのに、効果効能があるかのように伝えるのは問題です。こういうことを言われたら、「科学的根拠が出てきたときに教えてね」で終了です。大体、可能性の話をするなら、効果があるどころかむしろ有害だったという科学的根拠が出てくるかもしれません。
 

 

 

――ニセ医学から身を守るにはどうしたらいいでしょうか?
いちばん大切なのは、うまい話には気を付けることです。「副作用もなくがんが完治する」なんて話はありません。どこかに魔法のような治療法があったらいいのですが、そんなものがあったら、医療費の増大に悩む各国の政府は、すぐさま取り入れるでしょう。

それから迷ったら、厚生労働省や大きな学会(おかしな学会もあるので要注意)のサイトをみたり、多くの専門家の中で同意されている意見や治療法かどうかを調べてみたりすることも大切です。もちろん、かかりつけ医に相談するのもいいですね。
 

――いったんニセ医学にはまると戻りにくくなると聞きますが……
自分の投資(時間やお金)を無駄だったと認めたくないという心理が働くから、なかなか戻りにくいでしょう。本の中にも書きましたが、たとえば大切な家族ががんになったときに気が動転して根拠のない「がんを治す食事療法」を強いてしまい、そのまま亡くしてしまった人がいるとします。すると、その食事療法が無意味だったと認めることは、自分のせいで大切な人が好きなものを食べられなかったと認めることとイコールなわけです。どう考えても、こういう間違いを認めることは非常に困難でしょう。本当はその人が悪いのではなく、根拠のない「がんを治す食事療法」を提唱したり勧めたりした人間が悪いことは間違いありません。それでも戻りにくくなってしまうと思います。
 


――ニセ医学にはまってしまった人に対して、私たちはどんなことができるでしょう?
「その治療はニセ医学だ。やめたほうがいい」などと議論をしてもあまりうまくいきません。友人や家族、知人がニセ医学にはまっていれば、議論をするのではなく、自分の気持ちを素直に伝える、たとえば「その治療もいいかもしれないけれども、病院で普通の治療を受けてほしい。あなたの体が心配だ」などと話してみるのはどうでしょうか。

医師も同じく、患者さんがニセ医学にいってしまいそうなときに全否定はしません。治療の妨げにならない程度のものなら「それもいいと思うけど、私の治療も受けてください」と引き留める、完全に体に悪いものなら丁寧に説明するしかありません。それでも引き留めることが難しければ「気持ちが変わったらいつでも戻ってきてくださいね お待ちしています」と伝えることが大事だと思います。


――なるほど、やさしく声をかけていただくと戻りやすいかもしれませんね。
笑われたり叱られたりすることが予想される場所に寄りつきたい人はいないでしょう。たとえば、お子さんのワクチン接種を拒否する親御さんに「子どもを死なす気か」などと言ってしまうのも不適切です。「不安な気持ちになるのも、もっともですね」とやさしく声をかけてほしいと思います。実際、SNSなどで不安になるような不適切な情報が飛びかっていますし、子どもを大切に思うからこそ不安になるのだという視点を持つことは大切です。

ただ、多くの臨床医の労働環境は過酷で、常にたくさんの患者さんが待っていらっしゃるので急がなくてはならず、長時間ゆっくり丁寧に説明することは大変難しいとも思います。


――そこをニセ医学側は利用しているという感じもします
子育て中の方を狙うニセ医学などは特にそうかもしれません。たまに上から目線で「そんなことだからお子さんがよくならないんですよ」などと患者さんを叱る、おかしな医師もいますし。そういう医師のところで治療を続けるより、「がんばったね。今はつらいけど、これからよくなるよ」と言ってくれる仲間の勧める治療を選ぶのは当然と言えるでしょう。たとえ効果がなく、しかも「仲間」から離れるときは罵倒されたりするとしても、最初はわかりませんから。子育ての不安をどうにかしてほしいという気持ち、自分の努力を認めてほしいという気持ちもまた、ニセ医学に近づく理由になるのではないかと思います。


――最後に、どんな方に本を読んでいただきたいですか?
どんな方というよりも、何より元気なときに、できるだけたくさんの方に読んでいただきたいです。病気になってからでは、無責任に都合のいいことだけを伝えるニセ医学に比べて厳しく感じられるかもしれませんから。

それから、メディア関係者や政治家のみなさんにも読んでいただきたいと思っています。拡散力の強い方が医学的に間違った情報を広めてしまうと、そのせいで亡くなる方が出てしまうことさえあります。長期的に考えれば、広めたほうも信頼されなくなるというデメリットがありますから、ぜひご一読いただければ幸いです。『「ニセ医学」に騙されないために』では、様々なニセ医学を取り上げています。一通り読んでいただけると、科学的根拠(エビデンス)とは何か、それから主なニセ医学のパターンをつかんでいただけるでしょう。すると、実際にニセ医学をすすめられたときに「おかしいのではないか」と気づいていただけると思います。気づいたら、ぜひ身近な信頼できる医師にも聞いてみてください。


 

 

著者プロフィール:名取宏(なとり ひろむ)
内科医。医学部を卒業後、大学病院勤務、大学院などを経て、現在は市中病院に勤務。
ツイッターやブログなどでも医療に関する情報を発信している。
ブログ:NATROMのブログ http://natrom.hatenablog.com/
ツイッター:名取宏(なとろむ)@NATROM

 


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新装版 ニセ医学に騙されないために
内科医・名取宏 著
定価(本体1380円+税)/四六版/208ページ
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Kindle版 https://www.amazon.co.jp/dp/B07KR6R7WR/




 
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