WWF「企業の温暖化対策ランキング」 第11弾『素材産業②・エネルギー』編

温室効果ガスの大規模排出業種は長期目標の設定などで脱炭素に舵をきるべき

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトにおける報告の第11弾として、8月29日、「電気・ガス業」、「石油・石炭製品」、「鉄鋼」、「非鉄金属」、「金属製品」、「鉱業」の6業種に属する計42社を『素材産業②・エネルギー』として、その調査結果を発表しました。
-----------------------------------------------------------------------------
1. 「電気・ガス業」、「石油・石炭製品」、「鉄鋼」、「非鉄金属」、「金属製品」、「鉱業」の6業種に属する計42社の温暖化対策の取り組みを21の指標で評価・比較。特に、「電気・ガス業」、「鉄鋼」は、温室効果ガスの大規模排出業種。
2. 「石油・石炭製品」、「非鉄金属」は高スコア。「電気・ガス業」、「金属製品」も比較的高スコア。「鉄鋼」、「鉱業」は低調。
3. 電炉最大手の東京製鐵は業界内で頭ひとつ抜けた存在。九州電力も「情報開示」で業界内において差をつけた。
-----------------------------------------------------------------------------
★それぞれ順位、総合得点(100 点満点)、目標・実績(50 点満点)、情報開示(50 点満点)
<電気・ガス>
 第1位    69.1 東京ガス 21.9 47.2
 第2位    61.2 九州電力 15.4 45.8
<石油・石炭製品>
 第1位    68.3 コスモエネルギーHD 21.1 47.2
<鉄鋼>
 第1位    83.3 東京製鐵 37.5 45.8
<非鉄金属>
 第1位    79.5 フジクラ 32.3 47.2
<金属製品>
 第1位    68.7 LIXILグループ 24.2 44.4
 第2位    67.2 東洋製罐グループHD 33.9 33.3
-----------------------------*偏差値60以上の企業
*四捨五入の関係で、足し合わせた際に小数点以下に誤差が生じる場合がある
※HD:ホールディングス
※国際石油開発帝石は「鉱業」で偏差値60以上であったものの、38.8点と低スコアのため、左の表には取り上げていない。-----------------------------


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
6業種の中では、「石油・石炭製品」および「非鉄金属」の2業種が、『目標・実績』の「温室効果ガス削減量の単位」や『情報開示』の「ライフサイクル(LC)全体での排出量の把握・開示」などの得点が高いことから、それぞれ59.5点、56.9点と平均点を伸ばしました。
しかし、自社のGHG削減目標を持たないなど『目標・実績』の得点が低い「鉄鋼」および「鉱業」は、それぞれ39.0点、30.9点と低調な結果となりました。
また、「電気・ガス業」、「金属製品」は、『情報開示』では比較的高スコアを出しています。全6業種すべてにあてはまるのは、「長期的なビジョン」や「再生可能エネルギーの導入目標」を掲げる企業が少なかったことです。

各業種内で偏差値60以上を記録した、高スコアの上位企業は計7社。特に、東京製鐵、東洋製罐グループHD、フジクラはパリ協定に沿った長期ビジョンを掲げていました。
東京製鐵は、高炉法にくらべてCO2排出量の少ない電炉法を用いることで知られており、2050年に自らの排出を50%程度削減し、LC全体では80%削減するという長期での総量目標を掲げていることから、総スコアでも80点台に乗りました。

九州電力は、『情報開示』の「LC全体での排出量の把握・開示」など2指標(重要7指標中)で満点を獲得し、「再エネ目標」が業種平均と比較して高い結果となりました。再エネ事業で意欲的な数値目標(2030年に400万kW)を掲げる同社は、2018年5月3日には一日を通した再エネ比率が39.5%に達し、日本政府が2030年に目指す再エネの電力比率「22~24%」を大きく上回る実績をすでに上げています。自社にとってマテリアリティが高い「CO2の削減」というESG課題に対し、サプライチェーンを通じて社会的責任を全うしようという姿勢が現れています。

なお、上の表に掲載される上位企業には入っていないものの、再生可能エネルギーの自社での活用について、定量的な目標を掲げている企業は、今回は古河電気工業1社のみでした。

今回の業種には、「電気・ガス業」、「鉄鋼」など、産業部門の中でも排出量が最大規模であり、日本の脱炭素化の成否の鍵を握るセクターが含まれています。しかし、一部を除いて、低位に沈む企業がいくつもありました。世界的潮流となりつつある1.5度目標のもと、2050年にCO2排出実質ゼロに向けて、政府が目標を引き上げ、政策的支援の厚みを増すなどして、各企業の底上げを図ることが急務となっています。

添付資料:『企業の温暖化対策ランキング』~実効性を重視した取り組み評価~ Vol.11『素材産業②・エネルギー』編 https://www.wwf.or.jp/activities/data/climate01.pdf

すべての画像


会社概要

WWFジャパン

19フォロワー

RSS
URL
https://www.wwf.or.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル3階
電話番号
03-3769-1714
代表者名
末吉竹二郎
上場
-
資本金
-
設立
1971年09月