京都大学とダイセルの包括連携協定締結

-循環型・低炭素社会実現に向けた研究を加速-

株式会社ダイセル

国立大学法人京都大学(総長:湊長博、以下、京都大学)と株式会社ダイセル(代表取締役社長:小河義美、以下、ダイセル)は、木材や農水産廃棄物などのバイオマスを高機能な材料や化学品に変換し、その価値を森林の再生や、農水産廃棄物の高付加価値利用に還元することにより、森、川、海、農山漁村、都市を再生し、自然と共生する低炭素社会の実現、新産業創出などに寄与することを目的とした、包括連携協定を締結しました。
さらに本包括連携協定のもと、バイオマスの新しい変換プロセス「新バイオマスプロダクトツリー」実現に向けた研究開発と持続的循環利用を共通テーマとした基礎的研究と研究成果の社会への還元を目指し、京都大学の大学院農学研究科、大学院人間・環境学研究科、化学研究所、エネルギー理工学研究所および生存圏研究所とダイセルのリサーチセンター間において、包括的研究連携協定を締結しました。

また、国内外の多様な分野から優秀な人材が集い、学術分野、産業界、地域を繋ぐハブとして機能する産学連携共同研究の拠点「バイオマスプロダクトツリー産学共同研究部門」を京都大学宇治キャンパス内に、京都大学生存圏研究所、化学研究所、エネルギー理工学研究所とダイセルの共同ラボとして設置します。


■新バイオマスプロダクトツリー
ダイセルの主力製品である酢酸セルロースは、木材由来のパルプを原料とするバイオマス製品です。しかし、木材などの天然高分子は元来溶けにくく、その製造プロセスはエネルギー多消費型といえます。ダイセルではこの課題に対して、京都大学との共同研究によって、常温常圧で木材を溶かす技術の確立を目指しています。この技術により、セルロースに加え、木材に含まれるヘミセルロース、リグニンなども活用した高機能製品の開発も可能となります。

■その先に目指す、バイオマスバリューチェーン構想
共同研究中の新技術では、木材に限らず、農林水産業の廃棄物からも有益な成分の抽出が可能です。有価で処分される素材を二次産業の原料として活用することで、一次産業の経済性を向上させ、一次産業と二次産業に循環を生む新しい「産業生態系」の構築が可能になります。

 

この経済循環によって、林業を復活させ森を再生するとともに、山・川・海を含む自然の生態系の回復にも寄与する、という考えが、ダイセルの提唱する「バイオマスバリューチェーン構想」です。

産学官の垣根を越えて志を共にする皆様と一緒に、実現に向けて取り組んでまいります。



■京都大学教員の研究概要
●渡辺 隆司 教授(京都大学研究連携基盤長、生存圏研究所教授、オープンイノベーション機構教授、産学共同研究部門長・教授兼任)
【バイオマスの超穏和溶解による高度利用】
木材や農産廃棄物を室温から風呂温度程度の超穏和な条件で、有機酸などに可溶化し、紙とプラスチックの性質を合わせもつウッドペーパーや、その他のバイオマス成形体を創成するとともに、バイオマスが溶解した液体からセルロースやリグニンを常温で分離・利用する方法などの開発研究を行います。

●中村 正治 教授(化学研究所教授・産学共同研究部門教授兼任)
【木質バイオマス分子変換反応による機能性化合物の創出】
化学産業で森川里海・地域循環共生社会を繋ぎ、生長させるための化学反応を研究します。新たな分子触媒を開発し、低エネルギー消費、低環境負荷で、里山地域に実装できる木質バイオマス分子変換反応を開発し、シン(新,森)材料を創出します。

●片平 正人 教授 (エネルギー理工学研究所教授・産学共同研究部門教授兼任)
【バイオマスの微細構造のNMR法による決定と酵素を用いた利活用法の開発】
植物バイオマス及びその変換物の分子構造・超分子構造を、NMR法を用いて原子レベルの分解能で決定し、利活用のための分子基盤を確立します。また、セルロース・ヘミセルロース・リグニンを、酵素を用いて穏和な条件下で分解・変換することで、環境負荷が低い利活用法を開発します。

●西村裕志(生存圏研究所助教・産学共同研究部門助教兼任)
【植物バイオマスの正確な診断と高度利用】
脱炭素、カーボンニュートラル化の中核を担う植物バイオマスのポテンシャルを十分に引き出すために、その分子構造の精密分析、解析を行います。また、リグノセルロース高分子変換法によって得られる高分子リグニンをプラスチック複合材料などの化成品に展開する高度利用を目指します。

●上高原 浩(大学院農学研究科教授)
【バイオマスの直接誘導体化による成分分離と各成分の特徴を生かした利用法開拓】
植物バイオマス資源を直接化学処理し、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを全て高分子のまま取り出し、体温付近で可逆的に熱応答するヒドロゲル、疎水的な化合物を取り込むことが出来るナノサイズの粒子、安全性の高い界面活性剤など、バイオマスの新しい利用法を開拓します。

●吉岡 まり子(大学院農学研究科准教授)
【木材のプラスチック化と高付加価値材料への応用】
木材を成分分離せず、総体としてプラスチック材料に変換できることが所属の研究室で見出されました。木材にプラスチック性、即ち、熱可塑性を付与すると、おが屑などの利用の幅が格段に広がります。本研究では、化学修飾、グラフト共重合、他素材との複合化などを通して木材の高付加価値材料化を図ります。

●藤田 健一(大学院人間・環境学研究科教授)
【新規錯体触媒によるバイオマス資源からの水素と有用有機化合物の生産】セルロースをはじめとするバイオマス資源を用い、脱水素化に高活性を示す新規錯体触媒の作用による水素製造反応の開発を行います。さらに、脱水素化後に生じる含炭素成分を有用有機化合物へと変換する触媒系構築にも取り組みます。

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ビジネスカテゴリ
化学
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会社概要

URL
https://www.daicel.com/
業種
製造業
本社所在地
大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪タワーB
電話番号
06-7639-7171
代表者名
小河義美
上場
東証プライム
資本金
362億7544万円
設立
1919年09月