【調査報告】中高生のジェンダー意識調査2024年版を発表
「隠れたカリキュラム」が日常生活に影響
公益社団法人ガールスカウト日本連盟(会⻑:間奈々恵、以下「ガールスカウト⽇本連盟」)は、2024年に実施した『中学生・高校生のジェンダーに関する意識調査2024』報告書を公開しました。本調査では、学校や家庭など日常生活に潜む「隠れたカリキュラム」が、中高生の意識や行動に影響を与えていることがわかりました。
調査結果サマリー
■性別が理由で何かを制限されたり、やらされた(期待された)りしていると感じているのは、男女ともに、中学生よりも高校生の方が多い。女子は「しなくてよい」と言われたことが多く、男子は「やらされた」ことが多い。
■自分の体調(体の変化)について話す相手として、中高生ともに母親が最も多く、女子中学生・女子高校生は約80%、男子中学生・男子高校生は約55%と過半数を超えている。一方で誰とも話さない・話すことができない生徒もいる。
■日常生活の中で性的嫌がらせを受けたり、見たりしたことがある女子中学生は約11%、女子高校生約22%、男子中学生約10%、男子高校生約25%であり、中学生より高校生のほうが2倍以上多い。
■自分の容姿に満足していないのは、女子中学生55%、女子高校生58%、男子中学生42%、男子高校生47%となり、男子より女子のほうが自分の容姿に否定的である。
■女子中学生の44%、女子高校生の42%、男子中学生の57%、男子高校生の40%が、自己肯定感が高いと感じており、男子高校生が一番低かった。
■男女ともに3割程度の生徒は「学校の先生は女子と男子に平等に接していない」と感じており、進路指導や役割に対しても1割程度の生徒は「平等に接していない」と感じている。
■2人に1人以上の生徒はインターネットは安全・やや安全であると考えており、最も影響を受けているメディアはYouTube、Instagram、TikTockが多い。
調査概要
調査対象: 全国の中学生・高校生年代
調査期間:2024年9月27日~11月24日
調査方法: インターネット回答 全52問
回答数:1348人(中学生751人、高校生597人)

調査のねらい
ガールスカウト日本連盟は、2019年より継続して「ジェンダーに関する意識調査」を実施しています。主に女子高校生や大学生年代の女子を対象にしていましたが、2023年には対象を女子中学生にも広げました。2024年度はさらに対象を男子に広げ、中学生・高校生年代の女子と男子の声を集めました。本報告書は、この年代の声を把握し、日常生活で無意識に感じるジェンダーバイアスの存在について日本の現状を知るとともに、中学生・高校生たちの声を広く社会に伝えることをねらいとして作成しました。
今回の調査では、「隠れたカリキュラム*」にスポットを当てて分析を進めました。中学生・高校生が感じていることの中には、家庭・学校などの日常生活に隠れたカリキュラムがあり、その影響を受けているのではないかと検証しました。多くの時間を過ごしている家庭や学校などで受ける何気ない言葉かけや態度が、中学生・高校生の可能性を阻むほどの影響を与えていることが分かりました。
*隠れたカリキュラムとは
学校には「公式のカリキュラム」として教育する側が明示的に教える内容以外に、学校生活、学校制度、教師の言葉や態度などを通して、子どもたちが学び取っていく規範や価値観、信念などの「隠れたカリキュラム」が存在する。持ち物の色指定、性別の科目や活動、ステレオタイプに基づく声かけの違いなどを通して、子どもたちはいろいろなことを学び合い、影響を受けている。
主な調査結果
■性別が理由で何かを制限されたり、やらされた(期待された)りしていると感じているのは、男女ともに、中学生よりも高校生の方が多い。女子は「しなくてよい」と言われたことが多く、男子は「やらされた」ことが多い。


性別にかかわらず、「女の子だから」「男の子だから」という理由で何かを制限されたり、やらされた(期待された)りしていると感じている中学生高校生は一定数おり、中学生よりも高校生の方がその数は女子も男子も増えています。制限されたり、期待されたりしている相手は母親が目立っており、父や祖父母からという回答もありました。このことから、家庭という子どもたちの成長にとって欠かすことのできない環境が影響を与えていることがわかります。
■自分の体調(体の変化)について話す相手として、中高生ともに母親が最も多く、女子中学生・女子高校生は約80%、男子中学生・男子高校生は約55%と過半数を超えている。一方で誰とも話さない・話すことができない生徒もいる。

母に話すと回答したのは、女子中学生・女子高校生は約80%、男子中学生・男子高校生は約55%でした。男子中学生・男子高校生は父に話すと答えた生徒も多く、家庭の中に話をする相手がいること、話を聞いてもらえる環境があることは中学生・高校生にとって大切なことです。同時に大人も性に関する正しい情報を子どもたちに伝えられるよう、情報を収集することが必要です。一方で男子中学生は3人に1人、男子高校生は5人に1人が誰とも話さないと回答しているのは気になる点です。
■日常生活の中で性的嫌がらせを受けたり、見たりしたことがある女子中学生は約11%、女子高校生約22%、男子中学生約10%、男子高校生約25%であり、中学生より高校生のほうが2倍以上多い。

性的嫌がらせを受けたり、見たりしたことがある中学生・高校生は、中学生が約10%程度だったのに対し、高校生は20%以上という、決して少なくないという結果になりました。性的嫌がらせを受けたり見たりした場所としては、「家」「パートナー」「学校」「学校以外の習い事」「公共の場所」「メディア」があげられており、身近な場所で「嫌がらせをしている」という意識がなくそのような行為をしてしまっているのであるならば、問題は深刻です。
■自分の容姿に満足していないのは、女子中学生55%、女子高校生58%、男子中学生42%、男子高校生47%となり、男子より女子のほうが自分の容姿に否定的である。

「容姿に満足していない」と回答した割合は、男子中学生・男子高校生(44%)よ りも女子中学生・女子高校生(56%)の方が12%高く、半数を超えています。他の質問「あなたは自己肯定感が高いと思いますか」の結果を踏まえ、容姿と自己肯定感の関係を調べたところ、相関関係があることがわかりました。
■女子中学生の44%、女子高校生の42%、男子中学生の57%、男子高校生の40%が、自己肯定感が高いと感じており、男子高校生が一番低かった。

「自己肯定感が高い」と回答した割合が過半数を超えたのは男子中学生のみで、女子中学生、女子高校生、男子高校生はいずれも「いいえ」と回答した割合が高くなっています。一番低くなったのは男子高校生という結果でした。
■男女ともに3割程度の生徒は「学校の先生は女子と男子に平等に接していない」と感じており、進路指導や役割に対しても1割程度の生徒は「平等に接していない」と感じている。

平等に接していないと思う理由は、男女ともに「男子に厳しく、女子に優しい先生がいる」といった回答が最も多く、他にも「一部の生徒をひいきしている」「男子ばかり・女子ばかり質問にあてられる、指導をされる」「家政科は女子に勧められる」「学校で男女の進路を分けて紹介する」といったものでした。
また「男性の先生は女子に優しく男子に厳しい、女性の先生は男子にだけ優しい」のような“異性に対しては配慮を見せるものの、同性に対しては厳しい”といった回答も男女ともに複数ありました。
■2人に1人以上の生徒はインターネットは安全・やや安全であると考えており、最も影響を受けているメディアはYouTube、Instagram、TicTokが多い。

2023年度調査での同じ質問では、「安全である」という回答の割合が女子中学生は35%、女子高校生は29%となっており、女子を比較すると今年は大幅に増えていることが分かりました。

中学生・高校生が最も影響を受けていると感じるメディアは「YouTube」という結果となり、中でも男子中学生は約2人に1人が選択していたことが分かりました。一方で、女子高校生のみ影響を受けていると感じているメディアの順位が変わり、「Instagram」が最も多くなりました。
調査報告書のダウンロード・ご購入
『中学生・高校生のジェンダーに関する意識調査2024』は公式ホームページからダウンロードしてご覧いただけます。また報告書を購入することもできます。
価格:1,100円(税込)
調査報告書を見る
ガールスカウト日本連盟の取り組み
■ガールスカウト日本連盟のリサーチ
ガールスカウト日本連盟がこれまでに実施してきたジェンダー関連の調査報告をご覧いただけます。
■ガールスカウトのジェンダー教育プログラム
内閣府とともに作成した中高校生年代向けのオンラインプログラム「me and them」ほか、ガールスカウト日本連盟のジェンダー教育プログラムを掲載しています。
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少女と女性が自分自身と他の人々の幸福と平和のために、自ら考え、行動できる人材を育成することを目的に活動しています。日本では2012年から少女と女性へのジェンダー差別について考える教育プログラムを展開しています。
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