「働き方改革による就業と意識の変化に関する定量調査」を発表 働き方改革で残業減少—睡眠時間とバーンアウトが改善
一方、“仕事の過密化”などが進み、副作用として“職場の低体温化(没入・挑戦の低下)”が進行。メンバー層の62.3%が「仕事に意義を感じない」
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩田 亮)は、「働き方改革による就業と意識の変化に関する定量調査」を実施しました。
本調査では、働き方改革が本格化した2018〜2019年頃を起点に、正社員の残業時間の変化や、その要因、働く個人・職場への影響について分析しました。調査の結果、メンバー層・上司層ともに残業時間やバーンアウト(燃え尽き症候群)が減少するなど、長時間労働是正による一定の成果が確認されました。
一方で、「職場の『低体温』化(仕事への没入・挑戦機会の低下)」や「部下の『成長錯覚』化(成長実感と実際の育成状況の乖離)」といった働き方改革による副作用も見られました。本調査では、こうした働き方改革の「成果」と「副作用」を整理したうえで、社会全体で次なる改革をいかにして模索していくべきか、その方向性について分析・考察しています。
働き方改革の「成果」と「副作用」

<働き方改革>
本調査における「働き方改革」は、主に残業削減に関する取り組みを指す。国が推進する働き方改革においては、柔軟な働き方の促進や同一労働同一賃金なども包含されるが、本レポートでは国や企業が行う残業削減施策に関する成果や副作用を整理している点に留意されたい。
<本調査と比較分析する先行調査>
▪パーソル総合研究所・中原淳 「第二回 長時間労働に関する実態調査」(2018年3月)
▪パーソル総合研究所 「中間管理職の就業負担に関する定量調査」(2019年3月)
■主なトピックス

【働き方改革によって、残業は減ったのか】
1. メンバー層・上司層ともに月間残業時間が減少:メンバー層は2018年比で6.7時間減少、上司層は9.0時間減少した。
2. 残業時間減少による業績悪化を示唆する影響は確認されず:企業業績や組織パフォーマンスの各指標に、2018年比での減少傾向は見られなかった。
3. 「もっと働きたい」層は7.1%にとどまる:労働時間を増やしたい人よりも、現状維持や労働時間を減らしたい人の割合が圧倒的に高いことが確認できた。
【働き方改革がもたらした成果】
4. バーンアウトはメンバー層・上司層ともに改善、睡眠時間や人生満足度(ウェルビーイング)も上昇:長時間労働是正による、働く個人へのポジティブな影響が確認された。
【働き方改革がもたらした副作用】
5. 働き方改革の進展の一方で、職場に生じた“しわ寄せ”も確認:企業の働き方改革について、労働時間の適正化が進む一方で、「時間管理の厳格化」「仕事の過密化(短時間で成果を出さないといけなくなった)」、「業務の無機質化(業務をこなすだけになった)」、「関係の希薄化(職場の一体感が失われた)」といった変化を感じる意識が確認された。
6. 「職場の低体温化(社員が仕事へ没入・挑戦する機会の低下など)」が進行:仕事へ没入・挑戦する機会が、メンバー層・上司層ともに減少。働き方改革の歪みが強い組織ほど、社員の没入・挑戦機会を妨げている傾向も確認された。
7. 上司が抱える課題は、「働き方改革対応」「部下育成・メンタルケア」へシフト:2019年には「自身の業務量増加」や「学習時間不足」が中心だった一方、2026年には「働き方改革への対応増加」や「部下の育成不足」「部下のメンタル問題対応増加」といったマネジメント上の課題が中心となった。
8. 「部下の成長錯覚化(部下が感じる成長と、上司が求める成長の乖離)」も進行:メンバー層の成長実感は2018年比で増加。メンバー層は上司からマイクロマネジメントを受けるほど成長を実感する一方、上司は部下の育成不足を実感しており、メンバー・上司間で「成長・育成認識の捻じれ」が生じている可能性が示唆された。
【職場の“熱さ”をどう取り戻すか】
9. メンバー層の62.3%が「仕事に意義を感じない」と回答:「仕事の無意味さ」は、仕事への没入・挑戦を阻害する傾向が確認された。
10. 働き方改革の副作用を乗り越えるには:無意味な仕事を減らすことを前提とし、「(目の前の)仕事への没入」「(新たな)仕事への挑戦」を促すアプローチが重要。そのための方策を多変量解析の結果を基に整理した。
■主なトピックス(詳細)

【働き方改革によって、残業は減ったのか】
1. メンバー層・上司層ともに月間残業時間が減少:メンバー層は2018年比で6.7時間減少、上司層は9.0時間減少した。

2. 残業時間減少による業績悪化を示唆する影響は確認されず:企業業績や組織パフォーマンスの変化を確認した。どの指標も2018年と比べた減少傾向は見られず、本調査からは、残業時間減少による業績悪化を示唆する影響は確認されなかった。

3. 「もっと働きたい」層は7.1%にとどまる:労働時間の増減に対する意向を聴取したところ、「(今よりも)労働時間を増やしたい」層は7.1%に留まる。「現状維持」層(52.7%)や「(今よりも)労働時間を減らしたい」層(40.1%)の方が圧倒的に多いことが分かる。

【働き方改革がもたらした成果】
4. バーンアウトはメンバー層・上司層ともに改善、睡眠時間や人生満足度(ウェルビーイング)も上昇
① バーンアウト(燃え尽き症候群)の変化を見たところ、メンバー層・上司層ともに2018年よりも減少傾向であることが確認された。

② 平日の睡眠時間の変化を確認したところ、メンバー層・上司層ともに2018年よりも睡眠時間が増えている傾向が確認された。1カ月換算で、メンバー層では5.3時間、上司層では4.3時間睡眠時間が増えている計算となる。

③ 人生満足度(ウェルビーイング)の変化を見たところ、メンバー層・上司層ともに2018年よりも上昇傾向であることが確認された。

【働き方改革がもたらした副作用】
5. 働き方改革の進展の一方で、職場に生じた“しわ寄せ”も確認:企業の働き方改革について、労働時間の適正化が進む一方で、「時間管理の厳格化」「仕事の過密化(短時間で成果を出さないといけなくなった)」、「業務の無機質化(業務をこなすだけになった)」、「関係の希薄化(職場の一体感が失われた)」といった変化を感じる意識が確認された。

6. 「職場の低体温化」が進行:仕事に「没入」する機会や「挑戦」する機会の変化を見たところ、メンバー層・上司層ともに2018年よりも減少傾向であることが確認された。

① 上記(5.)で見た「働き方改革の歪み」が強い組織ほど、社員の「没入」や「挑戦」機会を妨げている傾向が確認された。また、「働き方改革の歪み」が強い組織ほど、上司がマイクロマネジメントを行いやすくなる可能性も示された。なお、2019年と比べて上司がマイクロマネジメントを行う割合は増加傾向。

② 学びに対する意識の変化を見たところ、メンバー層・上司層ともに、AI関連の学び意欲を除く全項目で2018年比での減少傾向が確認されている。

7. 上司が抱える課題は、「働き方改革対応」「部下育成・メンタルケア」へシフト:2019年には「自身の業務量増加」や「学習時間不足」が中心だった一方、2026年には「働き方改革への対応増加」や「部下の育成不足」「部下のメンタル問題対応増加」といったマネジメント上の課題が中心となった。

8. 「部下の成長錯覚化」も進行:学びへの意識が低下する一方、メンバー層の成長実感は増加。メンバー層はマイクロマネジメントを受けるほど成長を実感する一方、上司は部下の育成不足を実感しており、メンバー・上司間で「成長・育成認識の捻じれ」が生じている可能性が示唆された。
① メンバー層(成長志向あり層)の成長実感は、2018年と比較して増加傾向にある。なお、メンバー層が感じる「成長」の背景には、仕事への「没入」や「挑戦」を起点とするもの【自律的成長】と、上司からのマイクロマネジメントを介して生じるもの【補助輪付き成長】の、主に2パターンが存在することが確認された。

② マイクロマネジメントと成長実感の関係性を見たところ、メンバー側はマイクロマネジメントを受けるほど「自身の成長」を実感する傾向にある。その一方で、上司側はマイクロマネジメントを行うほど「部下の育成不足」を強く実感していることが確認された。

③ 企業が求める人材成長とは:「自律的成長」層と「補助輪付き成長(マイクロマネジメントを介した成長)」層の意識を比較した。どちらも出世意向は同程度であるが、学びに対する意識は「自律的成長」層が圧倒的に高い。

④ 人事評価の傾向を比較すると、「自律的成長」層が高評価を得やすいのに対し、「補助輪付き成長」層は平均的な評価にとどまるという違いが確認された。

また、人事評価は2018年よりも中心化傾向が進んでいることも確認されている。

【職場の“熱さ”をどう取り戻すか】
9. メンバー層の62.3%が「仕事に意義を感じない」と回答
① 仕事への意識として、本調査では「仕事の無意味さ(ブルシット・ジョブ※感)」を測定し、分析に用いた。多変量解析の結果、仕事の無意味さが、仕事への没入・挑戦をどちらも阻害する傾向が確認された。
※グレーバー, D.(2020)『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』(酒井隆史ほか訳)岩波書店

② 仕事の無意味さに関する意識は、メンバー層・上司層ともに半数を超え、無意味な業務を感じる社員の多さがうかがえる。その背景には、働き方改革に伴う業務の無機質化や関係の希薄化が影響している可能性が示唆される。

10. 働き方改革の副作用を乗り越えるには:無意味な仕事を減らすことを前提とし、「(目の前の)仕事への没入」「(新たな)仕事への挑戦」を促すアプローチが重要。そのための方策を多変量解析の結果を基に整理した。

■調査結果からの提言

長時間労働是正の面において、働き方改革は着実な前進を遂げてきた。残業時間の短縮や睡眠時間の増加が見られるほか、バーンアウト傾向の改善、さらには人生満足度の向上も確認されている。こうした進展を、本調査の結果は明確に示している。
一方で、見過ごせない副作用も表面化している。厳格な労働時間管理と短期間での業績達成を求める圧力が強まった結果、「目の前の業務の効率的遂行」に社員の意識が向きやすくなっているのだ。そのため、試行錯誤を通じて質を高める余地や、周囲との協力の機会は縮小し、仕事への没入感や新たな挑戦の場も減少しつつある。本レポートで示す「職場の『低体温』化」とは、こうした業務の無機質化や関係の希薄化の帰結と言えるだろう。

表面上に大きな混乱がなくとも、仕事に対する熱量や挑戦行動は少しずつ薄れ、組織の競争力を支える土台が静かに揺らぐ「地盤沈下」として捉えられる。
さらに懸念すべきは、上司とメンバーの間に生じる「育成・成長の捻じれ」だ。限られた時間の中で成果を出すことを求められる上司は、マイクロマネジメントに傾きやすく、「部下育成が十分でない」という認識を持つ。他方、メンバー側には、「指示業務の完遂」をもって成長と捉える意識が広がりつつある。今後、企業はこうした育成問題にも対応していかなければならない。
労働力不足が深刻化する昨今において、「労働時間の削減」が「職場の活力低下」につながる構造は解消しなければならない。限られた時間の中で職場の「熱さ」をいかにして生み出すか――この問いに正面から向き合い、仕事の進め方や組織運営、育成の在り方を再設計していくことこそが、日本の働き方改革における次の段階と言える。
●本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。
●調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。
URL: https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/workstyle-reforms/
●構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
■調査概要

■比較する先行調査の概要


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■【PERSOL(パーソル)】< https://www.persol-group.co.jp/ >について
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人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。
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