【医師アンケート調査】「ストレスチェック制度はメンタルヘルスの一次予防に効果があるか?」について、医師の6割以上が「効果はない」と回答
労働者が50人以上の事業所において、医師・保健師等によるストレスチェックを労働者に対して実施することが義務付けられた制度。労働者から申し出があった場合は、医師による面接指導も行われる。目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」と位置づけられている(「一次予防」は健康増進や疾病予防、「二次予防」は疾病の早期発見・早期治療のことを指す)。改正労働安全衛生法に基づいて2015年12月に施工され、2016年11月30日までにすべての労働者に対して1回目の検査を実施する必要がある。
■サマリー
- 「ストレスチェック制度はメンタルヘルス不調の一次予防に効果があるか?」の質問に対し、4,031人の医師が回答した。結果、最多回答は「どちらかと言えば効果はない」(45.3%)であった。「まったく効果はない」(16.8%)と合わせて、6割以上の医師が「効果はない」と回答した。「ストレスチェック後の職場改善の対策が無い限り、一次予防にはならない」「本当にうつ状態で悩んでいる人よりも職場に不満のある人が引っかかる恐れがあり、本来の趣旨とずれる」といった声が挙がった。
- 一方、「どちらかと言えば効果がある」と回答した医師も35.6%存在し、2番目に多かった。「かなり効果がある」と回答した医師はわずか2.3%だった。効果がある理由には、「メンタルヘルスの重要性の啓蒙になる」「やらないよりは、やることで救われる労働者もいる」「ストレスの多い職場のチェックになる」というコメントが見られた。
■回答コメント(ランキング順、一部を抜粋)
「どちらかと言えば効果はない」 1,828件
・企業の専属産業医を行っています。実際そのストレスチェック後の面談も行いましたが、面談時点では改善していたりと有効であることは少なく、また、職場へ不満がある人がハイリスクになる印象があり、ややメンタル不調と主旨がずれていると思います(40代、産業医、男性)
・やってみるとわかるのですが完全に自己申告制なので、「私は会社のせいで病気になった!休ませろ!」タイプの人が引っかかって、本当に抑鬱状態の人がすり抜ける恐れが大いにあり・・・。(30代、一般内科、女性)
・高ストレス判定の中でも、面談を申し込んだほうがよさそうな人が申し込んでこない。(40代、産業医、女性)
・一次予防と言いながら、実際は二次予防にしかならないのでは?早期発見的な。(30代、精神科、男性)
・職場ストレスは人間関係と組織のシステムが原因のほとんどだと思いますので、ストレスチェックと面談を行っただけではメンタルヘルス予防につながらないと思います。(40代、総合診療、男性)
・この制度は、従業員のストレス蓄積を事前に知り対策をすることよりも、職場の管理者のマネジメント能力を評価するという側面の方が強く出そうだ。(50代、一般内科、男性)
・この制度は基本的に対象者の資質と企業の体質をチェックするためのものであり、一次予防に大きな影響を及ぼすとは考え難い。(60代、精神科、男性)
「どちらかと言えば効果がある」 1,435件
・現役産業医です。これはストレスチェック自体の効果ではなく、ストレスチェックを行うことでの本人自身や管理者に対する啓蒙を促す効果はあるかと思います。(40代、心療内科、男性)
・ストレスフルな従業員を見つけることはもちろんだが、ストレスの多い職場を探すのにも役立っている。(40代、産業医、男性)
・制度は始まったが、働いている方の認知度はほぼゼロ(来院者20人以上に聞いた所、誰も知りませんでした)に近いようです。働く人への啓蒙も必要だと考えます。(60代、心療内科、男性)
・まったく実施してこなかった事業所や従業員に意識を少しでももってもらうということではいくらか意味があるかと。(40代、健診・予防医学、男性)
・全く効果が無いわけでは無いでしょう。これによって救われる労働者も少なからずいるはずです。(50代、整形外科・スポーツ医学、男性)
・制度の理念は良し、しかし大事なのは問題ありと判定された後の対策が準備されているかどうかにかかっている。(60代、産婦人科、男性)
「まったく効果はない」 676件
・一次予防というなら、職場の人と仕事のマネジメントの問題であって、健康の問題ではない。(60代、呼吸器内科、男性)
・医師主導でやる分には効果はありません。しっかりと人事部幹部にその意味を叩き込んで、責任を持たせ、社長にその意味を分かってもらうようにすれば一次予防の効果は出るでしょう。(50代、総合診療、男性)
・そもそも実施主体が事業者なのか産業医なのか不明で困っています。産業医にとっては追加報酬をもらう機会にもなっています。ストレスが高いから部署異動とか無理な話で、形骸化が予想されます。ただ、質問紙法を経年比較できるメリットはあります。ストレス高い人はいつも高いので、単年ではわかりません。(30代、麻酔科、男性)
・私の経験上、紙面でどれだけストレスの点数が高くても、それをもとに組織が職場環境を改善することはありません。(30代、一般外科、男性)
・チェックしたという事実だけが、事務方にとっては重要で、チェック後に何らかの対策がとられた形跡をみたことがないから。(40代、循環器外科、男性)
「かなり効果がある」 92件
・まずは、セルフチェックで客観的にメンタルヘルスについて把握できますし、それをもとに早めに産業医に相談もできます。そして、うつなど発症以前に対応もできるのではないかと思います。なにより、こういったことが周知されていくことが、メンタルヘルスの啓発普及になると思います。(50代、精神科、男性)
・私自身、ストレスチェックの問診票を記載しました。事実を記載すれば、スクリーニングにはなります。(50代、神経内科、男性)
・事業所により千差万別です。法規を満たすことが目的となっている水準では、ほぼ無効でしょう。事後措置をきちんと行えば、大きな有用性を発揮します。(40代、精神科、男性)
・テストの正確性は別としてストレスの重要性を認識させるには有効でしょう。(70代、一般内科、男性)
■調査概要
調査期間:2016/8/3 ~ 2016/8/9
有効回答:4,031人(回答者はすべて、医師専用コミュニティサイトMedPeerに会員登録をする医師)
調査方法:MedPeer内の「ポスティング調査」コーナーにおいて、事務局から以下の質問を投げかけました。
昨年12月から改正労働安全衛生法に基づいて「ストレスチェック制度」が始まりました。医師や保健師などによるストレスチェックを労働者に対して行うことが事業者の義務となりました(労働者50人未満では努力義務)。労働者から申し出があった場合は、医師による面接指導も行われます。 この制度の目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」であると位置づけられています。 そこで伺います。この制度はメンタルヘルス不調の「一次予防」に効果があると思われますか。下記選択肢からお考えに近いものをお選びください。 1. かなり効果がある 2. どちらかと言えば効果がある 3. どちらかと言えば効果はない 4. まったく効果はない |
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