多発性骨髄腫関連遺伝子DIS3の造血における機能を解明
・DIS3は造血幹細胞や造血前駆細胞のDNA損傷を防ぐことで造血を支持していることが分かりました。
・今後、DIS3機能不全が多発性骨髄腫を促進する仕組みの解明に繋がることが期待されます。
【概要説明】
熊本大学生命資源研究・支援センターの大口裕人准教授らの研究グループは、3大血液がんのひとつ多発性骨髄腫において高頻度に変異が認められる遺伝子DIS3の造血細胞における機能を解析し、DIS3が造血を支持する仕組みを解明しました。DIS3は造血細胞でDNA損傷を抑制することで細胞死を防いでおり、正常な造血に必須の遺伝子であることを発見しました。今後、DIS3機能不全を介した骨髄腫進展機序の解明の糸口になることが期待されます。
本研究成果は、米国血液学会誌「Blood Neoplasia」に令和6年2月15日(木)にFirst Edition版で公開されました。
本研究は、同大学発生医学研究所細胞医学分野の衞藤貫助教、中尾光善教授、生命資源研究・支援センター分子血管制御分野の南敬教授、疾患モデル分野の荒木喜美教授、国際先端医学研究機構白血病転写制御分野の久保田翔助教(研究当時)及び指田吾郎教授ら複数の研究グループとの共同研究です。
また、本研究は、科学研究費補助金(20K08734、JP 16H06276 (AdAMS))、公益財団法人新日本先進医療研究財団研究助成、特定非営利活動法人日本白血病研究基金研究助成、公益財団法人SGH財団がん研究助成の支援を受けて行われまし
【展開】
本研究により、造血細胞におけるDIS3の機能の一端が解明されました。DIS3機能不全は造血細胞のゲノムを不安定にすることが分かりました。発がんにはゲノム不安定性が関係しているため、DIS3機能不全が誘導するゲノム不安定性が多発性骨髄腫進展に関与していることが推測されます。本研究の知見を糸口に、今後多発性骨髄腫進展の仕組みが明らかにされていくことが期待されます。
【用語解説】
※1 多発性骨髄腫:白血病、悪性リンパ腫と並ぶ血液がんの一つ。B細胞の最終分化段階である形質細胞(抗体を作る細胞)の性質を持つ腫瘍。
※2 変異:遺伝子上のDNA塩基配列が異なる配列に置き換わること。
※3 造血:血液細胞(白血球、赤血球、血小板)を作る働き。血液細胞は造血幹細胞を起源とし、そこから造血前駆細胞が作られ、最終的に白血球、赤血球、血小板が作られる。
【論文情報】
論文名:Multiple myeloma-associated DIS3 gene is essential for hematopoiesis but loss of DIS3 is insufficient for myelomagenesis
著者:Hiroto Ohguchi*, Yasuyo Ohguchi, Sho Kubota, Kan Etoh, Ai Hamashima, Shingo Usuki, Takako Yokomizo-Nakano, Jie Bai, Takeshi Masuda, Yawara Kawano, Takeshi Harada, Mitsuyoshi Nakao, Takashi Minami, Teru Hideshima, Kimi Araki, Goro Sashida
*Corresponding author
掲載誌:Blood Neoplasia
doi:10.1016/j.bneo.2024.100005
URL:https://ashpublications.org/bloodneoplasia/article/doi/10.1016/j.bneo.2024.100005/514983/Multiple-myeloma-associated-DIS3-gene-is-essential?searchresult=1
▼プレスリリース全文はこちら
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei-sentankenkyu/20240227
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