三菱総合研究所、UPDATERとの再エネ電力の付加価値に関する共同研究結果を発表
再エネ電力を利用する約9割の需要家が環境価値以外の付加価値を重視
1. 経緯
MRIは、2022年7月、需要家の電力選択が再エネ電力の持つCO2削減価値に加えてその他の付加価値によっても行われ、その付加価値に対して適切な対価が支払われることで、再生可能エネルギーのさらなる普及拡大につながるのではないかという仮説を提示し、UPDATERと共同で実証研究を開始しました。
(三菱総合研究所、UPDATERと再エネ電力調達に関する実証研究を開始(ニュースリリース、2022.7.4))
https://www.mri.co.jp/news/press/20220704.html
このたび、再エネ電力に対する需要家のニーズの多様化や、支払意思の有無について調査、分析した結果ならびに提言をとりまとめました。
2. 実証研究結果の概要
今回の実証研究のうち、UPDATERが提供する再エネ電力メニューの契約者(家庭および企業)に対して行ったアンケート調査の結果、CO2フリーである(再生可能エネルギー由来の電力であり、発電時にCO2を排出していない)という環境価値以外の何らかの付加価値を重視する需要家は家庭で95%、企業で89%と非常に高い結果となっています。重視する付加価値の種類は、太陽光、風力、バイオマスなどといった再エネ電源の種類や、電源立地地域への貢献の取り組みなどが多くの需要家で挙げられています。また、重視する付加価値に対して、家庭では60%以上、企業でも50%以上の需要家が支払意思を有していました。
これらの結果から、再エネ電力に対するニーズは環境価値以外にも多様化していること、またその付加価値に対して支払意思を有する需要家も多く存在することが示されました。
カーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの普及が急務である中、発電事業者側にとっても需要家側にとっても、再エネ電力の有する価値をこれまで以上に拡大させていくことの重要性が明らかになりました。
図 需要家の再エネ電力に対するニーズ
n数 : 家庭910サンプル、企業71サンプル
出所:アンケート調査結果に基づき三菱総合研究所作成
3. 今後に向けて
現在、再エネ電力を取引する市場は、多様化する需要家のニーズに対応する付加価値を金銭的な価値として実際に取引できる仕組みになっていません。このことは、需要家にとってはお金を払ってでも欲しい再エネを調達できない、発電側にとってはさらなる付加価値の訴求により期待される利益を得られないということであり、両者にとって機会損失となっている可能性があります。
この課題解決のためには、本実証研究で明らかになった需要家ニーズをより見える化するための調査を定期的に実施し、どのような属性の需要家がどのようなニーズを持っているかについて情報を集約・アップデートしていくことが必要です。また、発電側の情報として発電量や立地などの概要だけでなく、特に付加価値に関する内容を含む情報をとりまとめて発信することで、各電源が持つ魅力を訴求する場を作ることも必要です。
さらに、需要家と発電側をマッチングさせ再エネ電力の付加価値の顕在化と金銭価値を伴う取引が可能な仕組みを構築できれば、カーボンニュートラル実現のための再生可能エネルギーの普及拡大に向けて、新たな再エネ電源の開発も加速が期待できます。
図 機会損失の解消による再生可能エネルギーのさらなる普及拡大
レポート全文
再生可能エネルギーのさらなる付加価値の顕在化に向けて [818.7KB]
https://www.mri.co.jp/news/press/hd2tof000000a45p-att/nr20231005.pdf
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